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第二章 マレビト
034-2
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「僕の余計なひと言で、大変なことになりそうです、ごめんなさい……」
ノエルさんとクリフさんがダンジョンから戻って来て、ご機嫌なパフィは何処かに出かけて行った。
用意しておいた朝食を四人で食べながら、ノエルさんとクリフさんに謝る。
「いや、あそこからあの発想は普通にはならんだろ……」
ラズロさんが僕を慰めてくれる。
「ごめん。最初から話してもらって良い?」
クリフさんも頷いていた。
とりあえず謝らなくちゃ、と思って謝ったけど、パフィとの間にどんなやりとりがあったのかまでは話せてない。
「大方、ダンジョンに入り込んだ奴らに同情して、高い所から命令だけしてる奴らに腹が立ったんだろう。
それで、奴らも同じ目に遭えば目が覚めるんじゃないか、ってアシュリーが言った事に魔女が反応してな」
「珍しいね、アシュリーがはっきりと怒るなんて」
「あんまり、そう言ったことは口にしないようにしてるんですけど、うっかりしてて……」
反省してます……。
「反撃ではなく、最初から撃って出る、と言う事か?」
クリフさんの質問に、ラズロさんが頷く。
「多分な。元々受け身体質じゃないだろ、魔女はよ。
それに可愛がってるアシュリーが危険な目に遭うって事も気に食わなかったんだと思うぜ?」
ノエルさんが眉間に皺を寄せる。
どうしよう、パフィが動いたら絶対大事になる。
きっとノエルさんもトキア様も騎士団長も、大きな話にしないで片付けようとしていたと思うのに。
「良いんじゃないか?」
クリフさんから予想もしなかった反応が返ってきた。ノエルさんとラズロさんがびっくりした顔でクリフさんを見た。僕も思いもしなかった言葉にびっくりしてる。
「むしろパシュパフィッツェ殿が動いてくれた方が禍根を残さないのではないか」
「どう言う事?」
クリフさんの言葉にノエルさんが反応する。
「この国は今、過渡期にある。貴族と平民の関係性は変わりつつあるだろう。ギド殿下もその母親である妃殿下も、青い血を好む傾向にある」
ギド殿下は、第二王子の名前だったよね、確か。
「ギド殿下が王位に就けば、陛下が時間をかけて進めてきたこの国の改革は逆行する。逆行だけでは済まんだろう。そうなればおまえもティールも無事では済まない」
ノエルさんもティール様も平民出身だ。そのことを言ってるんだと思う。青い血は貴族のことを言うんだって。
クリフさんの言葉にノエルさんの眉間の皺は更に深くなっていく。
「隣国を見ていても分かる筈だ。貴族制度も時と場合によっては使いようがあるが、不満を生み出しやすい構造でもある。だがな、急激な変革は良薬にはならない」
ノエルさんは目を閉じて、少しの間何も言わなかった。みんなも何も言わない。
それから少しして目を開けたノエルさんは深いため息を吐いた。
「隣国は共和国とは名乗っているけれど、結局の所従来と似たような身分制度を生み出したものね」
そうだ、とクリフさんは答える。
「いずれ隣国国内の不満は高まる。そんな時にこの国が貴族制度により平民を抑圧していたなら、彼らは平民の開放を掲げて攻めてくるだろうね」
ラズロさんがバリバリと頭を掻き毟る。
「なんだってそんな身勝手な事ばかり考えやがんだよ!」
「王位継承を巡る争いは禍根を残すのが常だ。だからこそ、我らの及びもつかない絶対的な力が働いた方が、この国にとっては好都合だろう」
「でも、それだと、パシュパフィッツェ様が悪者になってしまう」
自分が悪者と呼ばれても、パフィなら気にも止めないだろうけど。でも、それは僕も嫌だな。
パフィが帰って来たら、話をしよう。
ノエルさんとクリフさんがダンジョンから戻って来て、ご機嫌なパフィは何処かに出かけて行った。
用意しておいた朝食を四人で食べながら、ノエルさんとクリフさんに謝る。
「いや、あそこからあの発想は普通にはならんだろ……」
ラズロさんが僕を慰めてくれる。
「ごめん。最初から話してもらって良い?」
クリフさんも頷いていた。
とりあえず謝らなくちゃ、と思って謝ったけど、パフィとの間にどんなやりとりがあったのかまでは話せてない。
「大方、ダンジョンに入り込んだ奴らに同情して、高い所から命令だけしてる奴らに腹が立ったんだろう。
それで、奴らも同じ目に遭えば目が覚めるんじゃないか、ってアシュリーが言った事に魔女が反応してな」
「珍しいね、アシュリーがはっきりと怒るなんて」
「あんまり、そう言ったことは口にしないようにしてるんですけど、うっかりしてて……」
反省してます……。
「反撃ではなく、最初から撃って出る、と言う事か?」
クリフさんの質問に、ラズロさんが頷く。
「多分な。元々受け身体質じゃないだろ、魔女はよ。
それに可愛がってるアシュリーが危険な目に遭うって事も気に食わなかったんだと思うぜ?」
ノエルさんが眉間に皺を寄せる。
どうしよう、パフィが動いたら絶対大事になる。
きっとノエルさんもトキア様も騎士団長も、大きな話にしないで片付けようとしていたと思うのに。
「良いんじゃないか?」
クリフさんから予想もしなかった反応が返ってきた。ノエルさんとラズロさんがびっくりした顔でクリフさんを見た。僕も思いもしなかった言葉にびっくりしてる。
「むしろパシュパフィッツェ殿が動いてくれた方が禍根を残さないのではないか」
「どう言う事?」
クリフさんの言葉にノエルさんが反応する。
「この国は今、過渡期にある。貴族と平民の関係性は変わりつつあるだろう。ギド殿下もその母親である妃殿下も、青い血を好む傾向にある」
ギド殿下は、第二王子の名前だったよね、確か。
「ギド殿下が王位に就けば、陛下が時間をかけて進めてきたこの国の改革は逆行する。逆行だけでは済まんだろう。そうなればおまえもティールも無事では済まない」
ノエルさんもティール様も平民出身だ。そのことを言ってるんだと思う。青い血は貴族のことを言うんだって。
クリフさんの言葉にノエルさんの眉間の皺は更に深くなっていく。
「隣国を見ていても分かる筈だ。貴族制度も時と場合によっては使いようがあるが、不満を生み出しやすい構造でもある。だがな、急激な変革は良薬にはならない」
ノエルさんは目を閉じて、少しの間何も言わなかった。みんなも何も言わない。
それから少しして目を開けたノエルさんは深いため息を吐いた。
「隣国は共和国とは名乗っているけれど、結局の所従来と似たような身分制度を生み出したものね」
そうだ、とクリフさんは答える。
「いずれ隣国国内の不満は高まる。そんな時にこの国が貴族制度により平民を抑圧していたなら、彼らは平民の開放を掲げて攻めてくるだろうね」
ラズロさんがバリバリと頭を掻き毟る。
「なんだってそんな身勝手な事ばかり考えやがんだよ!」
「王位継承を巡る争いは禍根を残すのが常だ。だからこそ、我らの及びもつかない絶対的な力が働いた方が、この国にとっては好都合だろう」
「でも、それだと、パシュパフィッツェ様が悪者になってしまう」
自分が悪者と呼ばれても、パフィなら気にも止めないだろうけど。でも、それは僕も嫌だな。
パフィが帰って来たら、話をしよう。
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