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第二章 マレビト

026-3

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『そう、お願いごと』

 赤い舌がチロチロする。
 分かってるんだけど、なんとなく居心地が悪い。僕はごはんじゃないですよーって言いたくなる。

『まず、ダンジョンメーカーについて少し教えるわね』

「ありがとうございます」

 ほとんどよく分かってないから、素直に嬉しい。

『クロウリーの記憶を継承している前世持ちがいるから、スキルの使用方法なんかは、割愛するわ』

「はい」

『そもそも、ダンジョンがどうやって出来るか、知っている?』

 首を横に振る。

『あれはね、自然に出来るものなの。魔素が作り出すものなのよ』

「まそ?」

 初めて聞く言葉だ。

『魔法を使用するのにエーテルを使用する事は知ってるだろうけど、魔素は純粋な魔力の元となるものよ。魔素が一定値を超えるとダンジョンが出来ていくのよ』

 魔力の元……まそ……魔素、かな。
 エーテルは火、土、水、風といった自然の元素で、精霊の力の元。魔素は魔力の素?

『魔素は力そのもの。溜まれば歪みが出来る』

 その結果が、ダンジョン?

「魔女ってもしかして、魔素を使うんですか?」

 突然、そう思って、素直に聞いてみた。
 大蛇の目が細まったような気がする。

『勘の良い子は好きよ、話が早いわ』

 魔法使いと魔女は違うと言うのは知っていたけど、どう違うのか、僕はよく知らなかった。

『ダンジョンを作って欲しいのよ、アシュリーに。
ダンジョンの魔素を吸収する事で作られる物が、どうしても必要なの』

 魔素が集まると魔力になって、歪みを生んで、それがダンジョンになる。だから、ダンジョンの中は魔力がある訳で、その環境でしか出来ないものが、アマーリアーナ様は必要。その為に僕をパフィの元から離した、ってことなのかな……?

『ダンジョン内の魔力は無限じゃないの。魔力を失ってただの魔物の住処になり果てていくだけよ』

 ふむふむ。

『それとね、ダンジョンを閉じて欲しいの。これもまた、ダンジョンメーカーにしか出来ないことよ』

 閉じる……!
 ダンジョンを消すってこと? そんなの、考えたこともなかった。

「ダンジョンが増えると、どんな問題があるんですか?」

『魔力が溜まって出来たダンジョンはいずれは魔力を失って、ただの魔物の巣窟になるの。まぁ、それは大した事ではないのよ。魔物にだって住む場所は必要だもの。
クロウリーが作ったダンジョンはね、彼が作った魔術符により、魔力が途絶えないようになっている事なの、結果として強い魔物が生み出され続けるって事なのよ』

「……まさか、ここ数年増え続けてる魔物の数や強さはその所為なのか?」

 突然ラズロさんが会話に加わった。
 あ、そうだった、ラズロさんもいたんだった。すっかり忘れてた。

『そうよ、ぼうや』

 大蛇はラズロさんの方を向いて頷いた。
 ただ、とアマーリアーナ様は話を続ける。

『クロウリーはダンジョンから魔物が出ないように封印していた筈なのよ。それを誰かが解いてしまった』

 僕の方に向き直った大蛇は、真っ直ぐに僕を見据えた。

『手伝ってくれるかしら?』

 僕は知ってる。

「魔女の問いには意味がない、ってパフィが言ってました」

 ほほほほほほ、と大蛇が身を捩らせて笑った。

『物分かりの良い者は可愛いわ』

 何で意味がないかって言うと、魔女は意思を曲げない。必ずその通りにするし、そうさせるだけの力を持つから、逆らうだけ無駄だ、って意味で、僕はパフィにそう教えられたし、実体験でもあったりする。
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