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第二章 マレビト

024-3

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 すぐに作り始めるのかと思ったら、麺を作るには違う粉が必要だと言われた。
 気分転換も兼ねて出かけようぜ、と誘ってもらったので、フルールを連れて城を出る。

「アシュリー、元気か?」

「アシュリー、これをお食べ」

「アシュリー、これを持って行きなさい」

 すっかり顔なじみになった人達に声をかけられて、気が付いたら両手がふさがっていた。
 そんな僕を見て、ラズロさんは言った。

「年齢よりも幼く見え、かつ華奢な感じが、何かしてあげなきゃ、食べさせなきゃ、って思わせるんだろうな」

 そういうものなのかな……。
 僕の手から荷物を取り上げると、持ってきたかごの中にひょいひょい、としまってくれた。

「思わぬ収穫だったが、我らは麺に必要な粉を買いに行かねばならんのだ、アシュリーくん」

「はい、ラズロさん」

「その為にも今日は食糧ギルドに行かねばならん」

 ラズロさんの中で役?みたいなものが決まってるみたいで、よく分からない口調が続く。

「はい、ラズロさん」

「麺作りを成功させる為にも、まずはあの味を正確に覚えなくてはならん。分かるな?」

 食べたいんだね。

「はい、ラズロさん。分かったのでそろそろ行きましょう」

 食糧ギルドに向かって歩き出す。隣を歩くラズロさんから不満がこぼれる。

「アシュリーさん、ちょっと冷たくねぇ?」

「そうですか? 僕は早く麺を作りたいんです」

 なんとなくモヤモヤしてるこの気持ちを早く発散したい。



 食糧ギルドの中は前回と同じように賑わっていた。
 麺を取り扱うお店もあった。
 露店では見た事がないのは、器とかが必要だからかな?

「作れば実感わくだろうが、麺は食器類が必要なだけじゃなく、水が必要になるんだよ。だからギルド内でしかやれないのさ」

 水が必要なんだ。確かにそれは露店だと難しいかも。

 前と同じ店から麺を買い、座って食べる。
 湯気が良い匂いがする。
 フォークで麺を食べるのは二回目だから、つるつる滑ってしまうけど、フォークに絡ませながら口にする。
 つるりとした舌触りと、するっとした喉ごしは癖になる感じ。

「美味いな」

 頷く。

「美味しいです」

 フルールにもお裾分けして、腹ごしらえを完了させてから、ギルドの奥に入る。

「いらっしゃいませ」

 壁一面に棚が置かれていて、色んな品物が置いてある。
 天井まで届く棚には、びっしりと隙間なく何かしらの品が置かれてて、もの凄い存在感。

「天井まで物が積み重なってっからな、圧迫感があるな」

 なるほど、圧迫感って言うのか。

「麺を作りたい。吸水率の良い粉を頼む」

 ラズロさんがカウンターにいる受付の人に話す内容を、次に来た時に僕も言えるよう、聞き耳をたてる。

 きゅうすいりつ?

「それならば、去年の秋に収穫されたこちらの粉がおすすめです」

 そこから値段や粉の量をラズロさんが交渉していく。
 こういう時のラズロさんの真剣な顔はカッコいいな、って思う。

「じゃあ、それで頼む」

「かしこまりました」

 ギルドを出る。

「夕方には粉がギルドから届く。今は一回分の粉があれば良いだろ」

「はい」

 と、言う事は沢山買ってくれたのかな? 麺はとても美味しいから、城のみんなも喜んでくれるかも知れない。

「あとは具材を買ってから城に帰るぞ」

「はい」

 具材は細くて長いネギと、豚肉の塊。これも大量に注文していたから、後で城に届くんだろうな。
 ギルドで食べたのとは具が違うみたい。どんな麺になるんだろう。楽しみ!
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