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第二章 マレビト
024-2
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『記憶を取り戻したのはいつだ?』
「スキルを与えられた時だそうです。歳は僕と変わらないぐらいだと思います」
『三年は最低でも経過している訳か』
そうかー、と言ってごろん、と寝返りをうつ。
相変わらず行儀が悪い。僕がやると注意する癖に、自分は良いんだって。自分はもう、十分過ぎるくらいに大人だからって。
……うん、魔女は自由な人です。
『魔術師のスキル以外は何か保持しておるのか?』
そう言えば聞いた事がない。スキルが元で奴隷にされてしまったナインさんに、他のスキルは、なんて聞けない。
と言うか、気にした事なかったです、ごめんなさい。
「分からないです」
『相変わらず愚図だな、おまえは』
「はい、すみません」
抵抗せず素直に謝る。
『誰からでも良い。次までに聞いておけ』
「分かりました」
マグロは起き上がり、にゃ、と鳴いて毛繕いを始めた。
魔女は抜けたみたいだ。
「いつもあぁなのか?」
ラズロさんが言った。
「そうです」
「アシュリーが大人になるのも分かる気がする。
なんつーか、色々なものが鍛えられそうな気がするわ。
オレがアシュリーと同じ年であんなんされてたら、キレるな、間違いなく」
はは、と笑って返す。
「言葉は厳しいですし、要求も高めですけど、良い人ですよ? 怖いですけど」
「……子供に容赦ねぇな?」
「年は関係ないそうです」
「……なるほどな?」
ネロがやって来てマグロにちょっかいを出す。マグロは二股のしっぽを器用に動かしてネロの相手をしていく。
「次に食事を届ける時にでも確認しとくわ」
食事はラズロさんが持って行ってくれてるので、お願いする事にした。
魔女の言うマレビトはナインさんだったのかな、やっぱり。
それにしても、遠く離れてるのに、魔女は何か感じるものがあったのかな?
マレビトが訪れる、って吉兆占いもしてくれてたみたいだし……。
口は悪いけど、良い人だからな、魔女は。
カッコ良い人を見ると正気を失う時があるのと、酒好きって事を除けば。
分からないけど、なんかちょっともやもやしてきたから、捏ねる料理、作ろう。
「ラズロさん、僕、何か捏ねたいです」
「よく分かんねぇ衝動だな? でもお誂え向きな料理があるから教えてやるよ」
「ありがとうございます」
「冬に食った麺、覚えてるか?」
「覚えてます!」
「教えてやるよ」と言ってラズロさんはにやりと笑った。
あれから何回か麺を食べたけど、美味しくて温まって、自分でも作ってみたいって思ってたから、嬉しい!
「スキルを与えられた時だそうです。歳は僕と変わらないぐらいだと思います」
『三年は最低でも経過している訳か』
そうかー、と言ってごろん、と寝返りをうつ。
相変わらず行儀が悪い。僕がやると注意する癖に、自分は良いんだって。自分はもう、十分過ぎるくらいに大人だからって。
……うん、魔女は自由な人です。
『魔術師のスキル以外は何か保持しておるのか?』
そう言えば聞いた事がない。スキルが元で奴隷にされてしまったナインさんに、他のスキルは、なんて聞けない。
と言うか、気にした事なかったです、ごめんなさい。
「分からないです」
『相変わらず愚図だな、おまえは』
「はい、すみません」
抵抗せず素直に謝る。
『誰からでも良い。次までに聞いておけ』
「分かりました」
マグロは起き上がり、にゃ、と鳴いて毛繕いを始めた。
魔女は抜けたみたいだ。
「いつもあぁなのか?」
ラズロさんが言った。
「そうです」
「アシュリーが大人になるのも分かる気がする。
なんつーか、色々なものが鍛えられそうな気がするわ。
オレがアシュリーと同じ年であんなんされてたら、キレるな、間違いなく」
はは、と笑って返す。
「言葉は厳しいですし、要求も高めですけど、良い人ですよ? 怖いですけど」
「……子供に容赦ねぇな?」
「年は関係ないそうです」
「……なるほどな?」
ネロがやって来てマグロにちょっかいを出す。マグロは二股のしっぽを器用に動かしてネロの相手をしていく。
「次に食事を届ける時にでも確認しとくわ」
食事はラズロさんが持って行ってくれてるので、お願いする事にした。
魔女の言うマレビトはナインさんだったのかな、やっぱり。
それにしても、遠く離れてるのに、魔女は何か感じるものがあったのかな?
マレビトが訪れる、って吉兆占いもしてくれてたみたいだし……。
口は悪いけど、良い人だからな、魔女は。
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「よく分かんねぇ衝動だな? でもお誂え向きな料理があるから教えてやるよ」
「ありがとうございます」
「冬に食った麺、覚えてるか?」
「覚えてます!」
「教えてやるよ」と言ってラズロさんはにやりと笑った。
あれから何回か麺を食べたけど、美味しくて温まって、自分でも作ってみたいって思ってたから、嬉しい!
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