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第一章 新しい生活の始まり
009-4
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デボラさんのお店でラズロさんは大量に買い物をした。
大きな魚を何匹もと、貝を抱えきれない程。
「ラズロさん、こんなに沢山買って食べられるんですか?」
「貝なんて中身はそんなに大きくないんだから、食べ始めたらあっという間だぞ?」
そうなんだ!
こんなに立派な殻に包まれてるのに、実は大きくないのか。なんかちょっと残念。
殻、フルール食べるかな? この前串焼きの串は食べてたけど、さすがにこの殻は硬すぎて食べられないかな?
お城に戻った僕達は、食堂ではなく、中庭にやって来た。どうして中庭なんだろう?
「今まで食堂でしか調理出来なかったけど、アシュリーの魔法があれば庭でも出来るんだって気付いてな」
中庭で調理した方が良いくらいに、煙が出るって事?
手慣れた様子でラズロさんは網と、網をのせるための台?をレンガで用意していく。
初めて見る形に、なんだかワクワクしてきた。
タライの中に買ってきたばかりの魚や貝を入れる。お店では水の中に入れたりしていた。
同じように水の中に入れた方が良いのかな?
「ラズロさん、タライの中に水を入れても良いですか?」
「おーっ、入れちゃってくれー。出来たら氷の方が嬉しいんだが、アシュリー、氷出せるか?」
氷。
水ならよく出すけど、氷は出した事が無い。
「それなら僕がやるよ」
声のする方を見るとノエルさんだった。
タライの前に立ったノエルさんが、魔法で氷を作り出す。一瞬で大きな氷の塊が出来る。
凄い! 魔力を凝縮させないと氷は出来ないのに、瞬間的に氷が出来た!
……でも、ちょっと大き過ぎる?
「でかすぎるな。半分に割ってくれ」
ノエルさんは炎魔法で凍りを溶かそうとしたんだと思う。でも炎が強すぎて、近くにあった木の枝に燃え移りそうになった。
「!」
枝に火が触れるかどうかの所で細かい霧が木を包んで、枝は燃えずに済んだ。
トキア様だった。
どうやらさっきの霧はトキア様が起こして下さったみたいだった。
そうかと思えばタライの中にちょうど良い大きさの氷が出来る。
「練習だな」
「……はい」
トキア様の言葉にがっくりと項垂れるノエルさん。
「魔力量の制御が苦手なノエルにはちょうど良い」
トキア様がいれば火災になる事も周辺が凍る事もなさそうだと、ラズロさんと僕は安心した。
ノエルさんは僕と違って魔力が多いから、そのまま使うと威力が凄いんだと思う。トキア様だって魔力が多いだろうに、威力をいとも簡単に調整してる。
分かってる事だけど、トキア様もノエルさんも、本当に凄い。
魔法師団の人たちは凄い人たちなんだなぁ。
「アシュリー、網の下に火をおこしてくれ」
ラズロさんはノエルさんの方を向くと、「料理にはアシュリーの火力が加減が良いから手を出すなよ」と言う。
ノエルさんは哀しそうな顔をするものの、さっきので身に染みているのか何も言わなかった。
言われるままに網の下に炎魔法で火を出す。ラズロさんは貝を網の上に並べていく。味付けはしないのかな?
「そのうち口が開くからな。そうしたらそこに酒を注ぐから楽しみに待ってろよー」
「塩は入れないんですか?」
「貝は海から取ってきてるからな、潮はいらねぇんだよ」
海から取って来たから、塩が要らない?
「海と言うのは巨大な湖だ。その海の中に大陸と呼ばれる島が浮いてると思えば良い。湖も色々あるからか、一概には言えんが、大きな差は海水か淡水か」
説明をして下さるのはとても嬉しいんだけど、今度はタンスイとか、カイスイと言う言葉が出て来て僕の頭には?が浮かんだ。
顔に出ていたのか、トキア様は眉間にシワを寄せる。
「説明のつもりが、アシュリーの分からぬ言葉で話してしまったな。
淡水や海水と言うのは、水の質を表現する言葉だ。簡単に言えば淡水は普通の水に近く、海水は塩を含んでいる為に塩辛い」
しょっぱい水?
次から次へと分からない事が出て来る。
「少しずつ教えるから、焦らずとも良いぞ」
そう言ってトキア様は僕の頭を撫でた。
「はい、トキア様」
ラズロさんとノエルさんが驚いた顔をしてる。
何でだろう……?
大きな魚を何匹もと、貝を抱えきれない程。
「ラズロさん、こんなに沢山買って食べられるんですか?」
「貝なんて中身はそんなに大きくないんだから、食べ始めたらあっという間だぞ?」
そうなんだ!
こんなに立派な殻に包まれてるのに、実は大きくないのか。なんかちょっと残念。
殻、フルール食べるかな? この前串焼きの串は食べてたけど、さすがにこの殻は硬すぎて食べられないかな?
お城に戻った僕達は、食堂ではなく、中庭にやって来た。どうして中庭なんだろう?
「今まで食堂でしか調理出来なかったけど、アシュリーの魔法があれば庭でも出来るんだって気付いてな」
中庭で調理した方が良いくらいに、煙が出るって事?
手慣れた様子でラズロさんは網と、網をのせるための台?をレンガで用意していく。
初めて見る形に、なんだかワクワクしてきた。
タライの中に買ってきたばかりの魚や貝を入れる。お店では水の中に入れたりしていた。
同じように水の中に入れた方が良いのかな?
「ラズロさん、タライの中に水を入れても良いですか?」
「おーっ、入れちゃってくれー。出来たら氷の方が嬉しいんだが、アシュリー、氷出せるか?」
氷。
水ならよく出すけど、氷は出した事が無い。
「それなら僕がやるよ」
声のする方を見るとノエルさんだった。
タライの前に立ったノエルさんが、魔法で氷を作り出す。一瞬で大きな氷の塊が出来る。
凄い! 魔力を凝縮させないと氷は出来ないのに、瞬間的に氷が出来た!
……でも、ちょっと大き過ぎる?
「でかすぎるな。半分に割ってくれ」
ノエルさんは炎魔法で凍りを溶かそうとしたんだと思う。でも炎が強すぎて、近くにあった木の枝に燃え移りそうになった。
「!」
枝に火が触れるかどうかの所で細かい霧が木を包んで、枝は燃えずに済んだ。
トキア様だった。
どうやらさっきの霧はトキア様が起こして下さったみたいだった。
そうかと思えばタライの中にちょうど良い大きさの氷が出来る。
「練習だな」
「……はい」
トキア様の言葉にがっくりと項垂れるノエルさん。
「魔力量の制御が苦手なノエルにはちょうど良い」
トキア様がいれば火災になる事も周辺が凍る事もなさそうだと、ラズロさんと僕は安心した。
ノエルさんは僕と違って魔力が多いから、そのまま使うと威力が凄いんだと思う。トキア様だって魔力が多いだろうに、威力をいとも簡単に調整してる。
分かってる事だけど、トキア様もノエルさんも、本当に凄い。
魔法師団の人たちは凄い人たちなんだなぁ。
「アシュリー、網の下に火をおこしてくれ」
ラズロさんはノエルさんの方を向くと、「料理にはアシュリーの火力が加減が良いから手を出すなよ」と言う。
ノエルさんは哀しそうな顔をするものの、さっきので身に染みているのか何も言わなかった。
言われるままに網の下に炎魔法で火を出す。ラズロさんは貝を網の上に並べていく。味付けはしないのかな?
「そのうち口が開くからな。そうしたらそこに酒を注ぐから楽しみに待ってろよー」
「塩は入れないんですか?」
「貝は海から取ってきてるからな、潮はいらねぇんだよ」
海から取って来たから、塩が要らない?
「海と言うのは巨大な湖だ。その海の中に大陸と呼ばれる島が浮いてると思えば良い。湖も色々あるからか、一概には言えんが、大きな差は海水か淡水か」
説明をして下さるのはとても嬉しいんだけど、今度はタンスイとか、カイスイと言う言葉が出て来て僕の頭には?が浮かんだ。
顔に出ていたのか、トキア様は眉間にシワを寄せる。
「説明のつもりが、アシュリーの分からぬ言葉で話してしまったな。
淡水や海水と言うのは、水の質を表現する言葉だ。簡単に言えば淡水は普通の水に近く、海水は塩を含んでいる為に塩辛い」
しょっぱい水?
次から次へと分からない事が出て来る。
「少しずつ教えるから、焦らずとも良いぞ」
そう言ってトキア様は僕の頭を撫でた。
「はい、トキア様」
ラズロさんとノエルさんが驚いた顔をしてる。
何でだろう……?
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