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第一章 学園編
014.准研究員になりました!
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デネブ先生の侍女から手紙を受け取った。
急で申し訳ないが、月の日(前世で言う月曜日)の放課後、先生の執務室に来て欲しいと書いてあった。
つまり、明日だ。
「エマ、明日先生からお呼び出しを受けているから、帰りが少し遅くなるわ」
ぎょっとした顔のエマに「何かなさったのですか? お嬢様」と言われてしまった。
「いいえ、何もした覚えがないから、私も戸惑っているの」
言ってるそばから、もしかしてこの前、図書室で会った時のことかな? と思い出していた。
「大丈夫だと思うから、心配しないで」
もしかして、私の荒唐無稽な話から、何か話が広がったりしたのだろうか?
そう思うとちょっとわくわくした。
放課後、デネブ先生の執務室に向かうと、侍女が迎えてくれた。
先生の執務室は、棚が天井まで伸びていて、所狭しと色んなものが置かれていた。
これ全部、変成術関連なのだろうか?
色々見てみたいけど、許可なく見てはいけない。
「デネブ様は奥でお待ちです」
先生たちの執務室は二部屋が続いた間取りになっており、入ってすぐの部屋を使って奥は物置にする人、デネブ先生のように手前の部屋に素材系を置いて奥の部屋を執務室にする先生と、さまざまだ。
失礼します、と断ってから奥の部屋に入ると、先生は机に向かって何やら書き物をしていた。
「どうぞそちらにおかけになって」
机に向かい合うようにして、カウチとサイドテーブルが置かれていた。向かい合うと言っても、若干距離はあるけど。
私がカウチに腰掛けると、侍女は部屋から出て行った。
待つことになるかな、と思っていると、先生はすぐに書き物を終え、顔を上げた。
「お呼びたてして申し訳ございません、ミチル様。ですが、他の生徒たちがいる場所ではお話し出来ない内容でしたから、お越しいただきましたの」
「……それは、先日の図書室での話に関連しますか?」
デネブ先生はにっこり微笑んだ。うむ、やっぱりそのようだ。
「ミチル様のお話を伺ってから、私、知り合いの婦人の何人かに連絡を取りましたの。……魔力を持たない方たちに」
侍女がお茶を持って戻って来ると、先生の前と、私の横にあるサイドテーブルにお茶を置いて部屋を出て行った。
「それで、調べさせていただいたのです、ミチル様がおっしゃるあたりに測定器を近づけて」
思わずごくり、と唾をのみ込んでしまった。
ど、どうなんだろう……どきどきしてきた。
「……ミチル様、正解でした」
「……っ!」
先生は紅茶をひと口飲むと、説明を始めた。
「今回、確認させていただいた婦人は五人。全員貴族出身で、お子様は揃って魔導値が高い方たちばかりです。全員、おへその下あたりに器をお持ちだったのです」
おお……! あんな適当な思いつきが当たっていたなんて!!
「今年の測定で対象外とされた方たちも、改めて測定し直せば、魔道について学ぶことが可能になるかも知れませんから、急ぎ魔道研究院に報告をさせていただきました。急を要しましたから、勝手ではありましたが、ミチル様のお名前も私の一存で報告しております」
なんと!!
あんな思いつきだったのにそんな大それたことに?!
「魔道研究院からの返事は、すぐさま確認を行うということでした。我が国も調査し、その結果を中央、皇都にある研究院本部に報告することになりました。ミチル様、これを」
そう言って私の方になにやら紙のような物を差し出した。私は立ち上がってそれを受け取る。
羊皮紙だ。
羊皮紙には、私が正式に魔道学研究院の准研究員として認定されたというようなことが書かれていた。
「せ、先生、これは……!?」
「異例なことではありますが、研究院は、ミチル様の発想は魔道学の発展に寄与するものであると認定致しました。今後も通常通り講義は受講していただきますが、魔道学の研究にもご参加いただきたいのです」
研究員として認定された羊皮紙がここにあるということは、もう決定しているということで、私に拒否権はないということだ。
つまり、言い方は悪いけど、使えそうだからからツバ付けとけ! ってことだろうか。
まぁ、魔道具作りとか、早くやりたかったりするし、これは願ったり叶ったりだろう!
もしかしたら、一般人は作っちゃいけないとか使っちゃいけないとか、何かあるかも知れないし。
「ありがとうございます。大変光栄に存じます」
私は立ち上がって丁重にお辞儀をした。先生は満足そうに頷く。
「私がミチル様の師となることが決まりました。これから、よろしくお願い致しますね、ミチル様」
「そうなのですね、では、ミチルとお呼び下さいませ」
「これからはそう呼ばせていただくわね」
きゃー、盛り上がって参りました!!
研究内容はさておいて、研究員になったことは何処まで知られていいのかを先生に確認したら、別に隠さなくていいということだったので、ルシアンやモニカには伝えておくことにした。
デネブ先生に呼び出しを食らった、と話したからか、ルシアンは放課後、帰らずに待っていてくれた。モニカと一緒に。
ルシアンは顎に手を当てて、思い出すようにして言った。
「異例ですね。魔道研究院は閉鎖的ではない学会とは伺っておりますが、余程のことがなければ新規の研究員を認定することは少ないと聞いております」
……え、なんかそれ、責任重大なんじゃ……?
とは言え、もう認定されちゃったんだけど!
私とデネブ先生は、魔力を持たない人をもう少し探し、それぞれの器の場所、子供がいるならばその子供の魔道値(十六歳以降であれば)といったものをデータ化して、サンプルとして使えるだけの資料を作り提出するということになったが、ここは子供の私ではちょっと手が出せないことでもあるし、実はないと思っていたのに魔力がありました、ということは、領地の結界や魔石うんぬんで影響もあるということで、この件に関しては王室から働きかけてもらうこととなった。
これからは、行ける範囲で放課後にデネブ先生の執務室に行き、研究のお手伝いをすることになった。
そういった説明をしたところ、ルシアンは、あからさまに不快そうな顔をしている。
これはちょっと珍しい。
「ちょっとデネブ先生の所に談判して来ます」
そう言うと、ルシアンは教室を出て行った。
行ける範囲で、って言われてるんだけど、それでも気に入らないのだろうか。
「ルシアン様からすれば、二年ぶりに再会し、お互いに様を付けずに呼び合える仲になったのに、研究院に横から奪われるようなものですし、お話を伺う限り、ミチル様が決定なさったことでもないようですから、ルシアン様のお気持ちもごもっともですわ」
私自身は、おお! 楽しそう! みたいな感じだけど、仲うんぬんはさておいて、婚約者が既にいるし、将来にも関わってくることを考えれば、今回の研究院の対応はちょっとヨロシクナイんだろうな。
「ところで、ミチル様は研究員としてどういったことを研究なさろうと思ってらっしゃいますの? 差支えのない範囲でお話を聞かせていただけると嬉しいですわ」
先日、アルト侯爵家であったことを軽く話し、変成術で生活を変えられるものを作っていきたいなと思ったこと、それをルシアンが手伝ってくれると言っていたことなどを話した。
魔道具は、作ってみたいものがあるけれど、まずはそれが作成可能なのかも考えなくてはいけない。
モニカはふむふむと頷くと、楽しそうですわね、と言った。
「魔道学の研究員になりたいとは思いませんけれど、ミチル様がなさろうとしていることには興味がありますわ。デネブ先生に言えば私もミチル様の助手として参加出来るのかしら?」
助手! なんか突然偉くなった気分!!
「ですが、フレアージュ侯爵がお許しにならないのでは?」
「うちのお父様、ミチル様のことがお好きですから、反対なさらないと思いますわ。
あ、そうそう、父が今度是非、我が家に遊びにいらして下さいと申しておりましたわ」
モニカ?!
私のこと侯爵に話してるの?!
何て?! 何て話してるの?!
「それに、新しいものに挑戦なさい、とよくおっしゃる方ですのよ。貴族はすぐに保守的になるけれども、変わっていかなければ、直に新しいものに取って代わられてしまう、と」
ほほー。
フレアージュ侯爵は随分柔軟な思考の持ち主なんだなぁ。
守るべきものは守り、新しい良きものは取り入れる。
うちの愚鈍な父とはエライ違いです!
これが侯爵家と伯爵家の違いと言われれば、納得もいくかなぁ。
ルシアンが教室に戻って来た。
先生になんて言ってきたんだろう。
「おかえりなさいませ、ルシアン」
「戻りました、ミチル」
「えっと……先生とは何を……?」
「ミチルの研究の手伝いをさせていただくことにしました。先生からはご快諾いただきましたよ」
モニカが、あら、と声を上げると、「私も先生にお話ししてきますわ」と言って教室を出て行った。
「巻き込んでしまって申し訳ありません。お忙しいのに」
「ミチルと過ごす時間より大事なものはありませんから、大丈夫です。
それに、研究員に認定されたと言うことは、生涯のことになります。そういったことについても先生とお話しする必要がありましたから」
私と過ごす時間うんぬんはさておいても、婚約者がいるのだから、あの場でオッケーなんて快諾しちゃったのはまずかったんだなぁ……反省。
「侯爵様にもお知らせになるんですよね?」
「そうですね。基本的に、父は私のすることに異議は申しませんので問題はありませんが、魔道研究院の准研究員になったことは伝えなくてはなりませんね。必要であれば私も准研究員を目指します」
本当にそうしそう……。
「戻りましたわ」
モニカがにこにこしながら戻って来た。これは、OKをもらったのだろうな。
「先生にご快諾いただきましたわっ」
せっかくなので三人で話をしながら帰ることにした。
こういうとき寮っていいね。
「それで、どういう経緯で研究員になったのです?」
ごもっともな質問に、かくかくしかじか、と説明すると、二人は何やら考え込んだ。
「思い込みが邪魔をしたのでしょうね。とは言え、よく思いつかれましたね」
「貴族と平民の子供の魔力の有無について考えていて、その違いは何処にあるのかと漠然と考えていたのですが、特にその時は何も思いついておりませんでした。
魔力測定に関する書物に描かれる器の位置が、本によって異なっているのを不思議に思っていたら、デネブ先生が偶然いらして……という流れなのです」
「でも何故、おへその下だと思われたのです?」
「人にとって重要な器官は、脳、心臓、おなかの下の器官と思っているのですが、大体の方は心臓あたりに器があるということですし、その辺りに器のない方でも子供には引き継がれるということでしたから、もしかして……? と思ったのです。場所が場所だけに、測定もしづらいではありませんか?」
自分で話していてちょっと恥ずかしくなってきた。
モニカもちょっと恥ずかしそう。
それを緩和しようとしてくれたのかどうなのかは分からないけど、ルシアンが話を進めてくれた。
「今回の発見は、領地を守る貴族たちにとっては大変貴重な発見です。いくら魔石を購入すれば何とかなるとは言え、日々のことです。資産の多くない貴族にとっては、大きな意味を持ちます」
私の何気ない思いつきが、たまたまとは言え、誰かの役に立つのだ。
じわじわと、良い事をした、という実感が湧いてきて、嬉しくなってきた。
「誰かの役に立とうなどと、大それた事を考えていた訳ではなかったのですが、そんな風におっしゃっていただけると、恥ずかしいですが、嬉しくなりますね」
これから先、私は魔道に深く関わっていくことが決まったけど、これから先も、私は自分の為にしか魔道のことを考えられないと思う。
でも、それが他の人にとっても有効なものなら、おお、良いことした、程度だと思う。
そういう高尚なのは、どなたかにお任せする!
急で申し訳ないが、月の日(前世で言う月曜日)の放課後、先生の執務室に来て欲しいと書いてあった。
つまり、明日だ。
「エマ、明日先生からお呼び出しを受けているから、帰りが少し遅くなるわ」
ぎょっとした顔のエマに「何かなさったのですか? お嬢様」と言われてしまった。
「いいえ、何もした覚えがないから、私も戸惑っているの」
言ってるそばから、もしかしてこの前、図書室で会った時のことかな? と思い出していた。
「大丈夫だと思うから、心配しないで」
もしかして、私の荒唐無稽な話から、何か話が広がったりしたのだろうか?
そう思うとちょっとわくわくした。
放課後、デネブ先生の執務室に向かうと、侍女が迎えてくれた。
先生の執務室は、棚が天井まで伸びていて、所狭しと色んなものが置かれていた。
これ全部、変成術関連なのだろうか?
色々見てみたいけど、許可なく見てはいけない。
「デネブ様は奥でお待ちです」
先生たちの執務室は二部屋が続いた間取りになっており、入ってすぐの部屋を使って奥は物置にする人、デネブ先生のように手前の部屋に素材系を置いて奥の部屋を執務室にする先生と、さまざまだ。
失礼します、と断ってから奥の部屋に入ると、先生は机に向かって何やら書き物をしていた。
「どうぞそちらにおかけになって」
机に向かい合うようにして、カウチとサイドテーブルが置かれていた。向かい合うと言っても、若干距離はあるけど。
私がカウチに腰掛けると、侍女は部屋から出て行った。
待つことになるかな、と思っていると、先生はすぐに書き物を終え、顔を上げた。
「お呼びたてして申し訳ございません、ミチル様。ですが、他の生徒たちがいる場所ではお話し出来ない内容でしたから、お越しいただきましたの」
「……それは、先日の図書室での話に関連しますか?」
デネブ先生はにっこり微笑んだ。うむ、やっぱりそのようだ。
「ミチル様のお話を伺ってから、私、知り合いの婦人の何人かに連絡を取りましたの。……魔力を持たない方たちに」
侍女がお茶を持って戻って来ると、先生の前と、私の横にあるサイドテーブルにお茶を置いて部屋を出て行った。
「それで、調べさせていただいたのです、ミチル様がおっしゃるあたりに測定器を近づけて」
思わずごくり、と唾をのみ込んでしまった。
ど、どうなんだろう……どきどきしてきた。
「……ミチル様、正解でした」
「……っ!」
先生は紅茶をひと口飲むと、説明を始めた。
「今回、確認させていただいた婦人は五人。全員貴族出身で、お子様は揃って魔導値が高い方たちばかりです。全員、おへその下あたりに器をお持ちだったのです」
おお……! あんな適当な思いつきが当たっていたなんて!!
「今年の測定で対象外とされた方たちも、改めて測定し直せば、魔道について学ぶことが可能になるかも知れませんから、急ぎ魔道研究院に報告をさせていただきました。急を要しましたから、勝手ではありましたが、ミチル様のお名前も私の一存で報告しております」
なんと!!
あんな思いつきだったのにそんな大それたことに?!
「魔道研究院からの返事は、すぐさま確認を行うということでした。我が国も調査し、その結果を中央、皇都にある研究院本部に報告することになりました。ミチル様、これを」
そう言って私の方になにやら紙のような物を差し出した。私は立ち上がってそれを受け取る。
羊皮紙だ。
羊皮紙には、私が正式に魔道学研究院の准研究員として認定されたというようなことが書かれていた。
「せ、先生、これは……!?」
「異例なことではありますが、研究院は、ミチル様の発想は魔道学の発展に寄与するものであると認定致しました。今後も通常通り講義は受講していただきますが、魔道学の研究にもご参加いただきたいのです」
研究員として認定された羊皮紙がここにあるということは、もう決定しているということで、私に拒否権はないということだ。
つまり、言い方は悪いけど、使えそうだからからツバ付けとけ! ってことだろうか。
まぁ、魔道具作りとか、早くやりたかったりするし、これは願ったり叶ったりだろう!
もしかしたら、一般人は作っちゃいけないとか使っちゃいけないとか、何かあるかも知れないし。
「ありがとうございます。大変光栄に存じます」
私は立ち上がって丁重にお辞儀をした。先生は満足そうに頷く。
「私がミチル様の師となることが決まりました。これから、よろしくお願い致しますね、ミチル様」
「そうなのですね、では、ミチルとお呼び下さいませ」
「これからはそう呼ばせていただくわね」
きゃー、盛り上がって参りました!!
研究内容はさておいて、研究員になったことは何処まで知られていいのかを先生に確認したら、別に隠さなくていいということだったので、ルシアンやモニカには伝えておくことにした。
デネブ先生に呼び出しを食らった、と話したからか、ルシアンは放課後、帰らずに待っていてくれた。モニカと一緒に。
ルシアンは顎に手を当てて、思い出すようにして言った。
「異例ですね。魔道研究院は閉鎖的ではない学会とは伺っておりますが、余程のことがなければ新規の研究員を認定することは少ないと聞いております」
……え、なんかそれ、責任重大なんじゃ……?
とは言え、もう認定されちゃったんだけど!
私とデネブ先生は、魔力を持たない人をもう少し探し、それぞれの器の場所、子供がいるならばその子供の魔道値(十六歳以降であれば)といったものをデータ化して、サンプルとして使えるだけの資料を作り提出するということになったが、ここは子供の私ではちょっと手が出せないことでもあるし、実はないと思っていたのに魔力がありました、ということは、領地の結界や魔石うんぬんで影響もあるということで、この件に関しては王室から働きかけてもらうこととなった。
これからは、行ける範囲で放課後にデネブ先生の執務室に行き、研究のお手伝いをすることになった。
そういった説明をしたところ、ルシアンは、あからさまに不快そうな顔をしている。
これはちょっと珍しい。
「ちょっとデネブ先生の所に談判して来ます」
そう言うと、ルシアンは教室を出て行った。
行ける範囲で、って言われてるんだけど、それでも気に入らないのだろうか。
「ルシアン様からすれば、二年ぶりに再会し、お互いに様を付けずに呼び合える仲になったのに、研究院に横から奪われるようなものですし、お話を伺う限り、ミチル様が決定なさったことでもないようですから、ルシアン様のお気持ちもごもっともですわ」
私自身は、おお! 楽しそう! みたいな感じだけど、仲うんぬんはさておいて、婚約者が既にいるし、将来にも関わってくることを考えれば、今回の研究院の対応はちょっとヨロシクナイんだろうな。
「ところで、ミチル様は研究員としてどういったことを研究なさろうと思ってらっしゃいますの? 差支えのない範囲でお話を聞かせていただけると嬉しいですわ」
先日、アルト侯爵家であったことを軽く話し、変成術で生活を変えられるものを作っていきたいなと思ったこと、それをルシアンが手伝ってくれると言っていたことなどを話した。
魔道具は、作ってみたいものがあるけれど、まずはそれが作成可能なのかも考えなくてはいけない。
モニカはふむふむと頷くと、楽しそうですわね、と言った。
「魔道学の研究員になりたいとは思いませんけれど、ミチル様がなさろうとしていることには興味がありますわ。デネブ先生に言えば私もミチル様の助手として参加出来るのかしら?」
助手! なんか突然偉くなった気分!!
「ですが、フレアージュ侯爵がお許しにならないのでは?」
「うちのお父様、ミチル様のことがお好きですから、反対なさらないと思いますわ。
あ、そうそう、父が今度是非、我が家に遊びにいらして下さいと申しておりましたわ」
モニカ?!
私のこと侯爵に話してるの?!
何て?! 何て話してるの?!
「それに、新しいものに挑戦なさい、とよくおっしゃる方ですのよ。貴族はすぐに保守的になるけれども、変わっていかなければ、直に新しいものに取って代わられてしまう、と」
ほほー。
フレアージュ侯爵は随分柔軟な思考の持ち主なんだなぁ。
守るべきものは守り、新しい良きものは取り入れる。
うちの愚鈍な父とはエライ違いです!
これが侯爵家と伯爵家の違いと言われれば、納得もいくかなぁ。
ルシアンが教室に戻って来た。
先生になんて言ってきたんだろう。
「おかえりなさいませ、ルシアン」
「戻りました、ミチル」
「えっと……先生とは何を……?」
「ミチルの研究の手伝いをさせていただくことにしました。先生からはご快諾いただきましたよ」
モニカが、あら、と声を上げると、「私も先生にお話ししてきますわ」と言って教室を出て行った。
「巻き込んでしまって申し訳ありません。お忙しいのに」
「ミチルと過ごす時間より大事なものはありませんから、大丈夫です。
それに、研究員に認定されたと言うことは、生涯のことになります。そういったことについても先生とお話しする必要がありましたから」
私と過ごす時間うんぬんはさておいても、婚約者がいるのだから、あの場でオッケーなんて快諾しちゃったのはまずかったんだなぁ……反省。
「侯爵様にもお知らせになるんですよね?」
「そうですね。基本的に、父は私のすることに異議は申しませんので問題はありませんが、魔道研究院の准研究員になったことは伝えなくてはなりませんね。必要であれば私も准研究員を目指します」
本当にそうしそう……。
「戻りましたわ」
モニカがにこにこしながら戻って来た。これは、OKをもらったのだろうな。
「先生にご快諾いただきましたわっ」
せっかくなので三人で話をしながら帰ることにした。
こういうとき寮っていいね。
「それで、どういう経緯で研究員になったのです?」
ごもっともな質問に、かくかくしかじか、と説明すると、二人は何やら考え込んだ。
「思い込みが邪魔をしたのでしょうね。とは言え、よく思いつかれましたね」
「貴族と平民の子供の魔力の有無について考えていて、その違いは何処にあるのかと漠然と考えていたのですが、特にその時は何も思いついておりませんでした。
魔力測定に関する書物に描かれる器の位置が、本によって異なっているのを不思議に思っていたら、デネブ先生が偶然いらして……という流れなのです」
「でも何故、おへその下だと思われたのです?」
「人にとって重要な器官は、脳、心臓、おなかの下の器官と思っているのですが、大体の方は心臓あたりに器があるということですし、その辺りに器のない方でも子供には引き継がれるということでしたから、もしかして……? と思ったのです。場所が場所だけに、測定もしづらいではありませんか?」
自分で話していてちょっと恥ずかしくなってきた。
モニカもちょっと恥ずかしそう。
それを緩和しようとしてくれたのかどうなのかは分からないけど、ルシアンが話を進めてくれた。
「今回の発見は、領地を守る貴族たちにとっては大変貴重な発見です。いくら魔石を購入すれば何とかなるとは言え、日々のことです。資産の多くない貴族にとっては、大きな意味を持ちます」
私の何気ない思いつきが、たまたまとは言え、誰かの役に立つのだ。
じわじわと、良い事をした、という実感が湧いてきて、嬉しくなってきた。
「誰かの役に立とうなどと、大それた事を考えていた訳ではなかったのですが、そんな風におっしゃっていただけると、恥ずかしいですが、嬉しくなりますね」
これから先、私は魔道に深く関わっていくことが決まったけど、これから先も、私は自分の為にしか魔道のことを考えられないと思う。
でも、それが他の人にとっても有効なものなら、おお、良いことした、程度だと思う。
そういう高尚なのは、どなたかにお任せする!
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