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第一章 学園編
001.転生初日に悟りを開きました。
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親には上中下の下と評価される容姿、努力の甲斐もない脳みそ、人並みな運動神経。
それを幼い頃より延々言われて育った私が、自己肯定感高く育つ訳はなく、いや、調子に乗ったブスとか超醜いから、その点リアルを教えてくれてた親には感謝しかない。
散々ブスだブスだと言われた時より、キレイに産んであげられなくてごめん、と謝られた時が一番メンタルを抉られたわー……。そんなこと言ってもちょっとぐらいは私にだって可愛いと思われる所あるでしょ、という心の中のささやかな期待は、実の両親に木っ端微塵にされた。
その時、私は花の女子高校生になりたてだった。
思春期まっただ中だ。
青春ですよ。
そして、私は親の言葉を痛感するというか、もうHPゼロなのに、更に追い討ちをかけられる高校生活を送ることになる。
ライフポイントまで減る勢いだ!
顔面偏差値、偏差値、運動神経、コミュニケーション能力、いずれも持たない私には、耐え難い程に苦痛しかない。
たった一ヶ月でカースト下位に落ち着いた。
無論、抜け出せる気はしない!
幸いなのはイジメがないことだった。これは本当にありがたかった。
そんなものがあったら黒歴史所の話では済まない。
大学生活も同じことになることは分かっていた。
当然だろう。
たった3年間で逆転出来るような潜在能力なんてゲーム以外である訳ない。
身の程をよく知った私は、将来独り身でも生きていけるだけの生活力を得なくてはならない。
それを見越しての大学を選ばなくてはいけない!
入学早々から人生の全てをかけた私の努力が始まった。
大学受験は、その為の準備さえ怠らなければ失敗はしにくい、とは聞くけれども、元が元であるからして、やはりそこそこの大学にしか合格は出来なかった。
だが、私は高校生からずっと英会話教室に通わせてもらい続けた結果、大学がそこそこであっても、英語力を買われてそれなりの会社に入ることが出来た。
私による、私の為の7年間の教育の成果である!
7年間もかかったのかというツッコミは私の精神衛生の為にご遠慮ください。
そしてやはりと言うか案の定と言うか、入社してからも私に居場所は基本ない。
若い子、可愛い子、気の利く子。
そう言った子たちが愛されていく。
あぁ、いえいえ、私も色々努力はしておりますのよ。
美容にも、その為の食生活、運動、センスが悪いと思われないように服装も自分に似合うものを身に着けたり、化粧の方法も、気遣いも、やれることはやれるだけやっての、今なのです。
その上での、このどノーマル感。
由緒正しいモブ。モブ オブ モブ。
ベストオブモブ。
モブ選手権があったら堂々のシード権獲得といった、己のモブさには、もはやため息しか出ないが、もう諦めた。
はよ転生して別の生き物に生まれ変わりたい。
これは私の望むリアルではない! と、真実に気が付いてしまった高校生の春。
なかなか私、そこに関しては早熟だと思う。
そんな中、たまたまスマホでやったアプリ、イケメンを落とす為のゲームだ。
通称乙女ゲーム。
そこでは自分の行動にきちんと結果がついてきた。
ちゃんとイケメンが落ちてくる! すげぇ!
なんだこのステキ世界は!!
私は歓喜した。
イケメンは確かにステキだ。
けれども、イケメンよりも、やった結果がともなうこの世界が好きだった。
じゃあなんで乙女ゲームなの。普通のゲームでいいじゃない、と思うかも知れないが、そこはやはり、恋というものに、こんな私でも興味があったのだ。
はよ転生したい、という思いはあるけれども、そこまでにはまだ年数を要する。
だからそれまでは、この乙女ゲームの中で生きることに決めた。
大学一年生の春だった。
以来、私のリアルは現実にはない。
現実社会は、私のリアルを支える(乙女ゲームに貢ぐ)為のロールプレイングでしかなく、嫌味な上司も、嫌がらせしてくる同僚も、恋愛にばかりかまけている後輩も、ロールプレイングでの敵でしかなく、全力で叩くとMPがすぐ枯渇しちゃうし、真の意味で殲滅も犯罪になるので出来ないし、完全犯罪する脳もない!
よって、最低限のHPダメージと最小限のMP消費で周囲の人間関係を捌くことに注力して早十年。
思ったよりも早くに、転生チャンスが訪れた。
そう、恋愛にトチ狂った上司とお馬鹿な後輩の、ドロドロを極めた不倫の修羅場に運悪く巻き込まれ、私は死んだのだ──……。
*****
……と、言う前世の記憶を思い出したのは、クラッカーが盛大に鳴らされた瞬間だった。
何処だ、ここ。と思ったのも一瞬で、現在の私の記憶と、前世の私の記憶がマーブルケーキの生地のように混ざり始めた。
ここは、貴族の子女が通うオフィーリア学園。
そして今日はその入学式。
さっきのクラッカーはお茶目な校長先生による大量のクラッカー、だ。
こうしている間にも記憶が混じっていく。
けれどそれは、決して気持ちの良いものではなく、吐き気を催させるものだった。
何故なら、今、私がいるここは、乙女ゲームの世界だったからだ。
前世の私が手にしていた乙女ゲーム。
【オフィーリアの夢見る王子たち】
通称【リア王】。
そこだけ聞くと高尚なものに聞こえるから不思議だが、内容は典型的な乙女ゲームだったハズ。
王子、頭脳明晰な侯爵家の跡取り、騎士団長の息子、意地悪をしてくる悪役令嬢の弟とか兄、イケメン教師と言った所ではないだろうか?
いや、実は攻略対象の事、ノーチェックなのだ。
見たらプレイしたくなっちゃうから、始める直前まで見ないと決めていた。ヒロインは良いんだけど、攻略対象は見ない。
ハイスペックイケメンたちは、オフィーリア学園高等部で入学してくるヒロインに夢中になる。
鉄板ではあるが、ヒロインは頭もいいし運動神経もいい美少女だけどうっかり属性あり、何事にも全力投球する美少女である。
そんな子がぐいぐい来ちゃって、イケメンたちはどんどん撃ち落されていくに違いない。
それはもう愚かな程に恋に溺れていく。乙女ゲームとはそういうものだ。
そしてそんな世界での私は、ヒロインをいじめる、王子に憧れる悪役令嬢 ミチル・レイ・アレクサンドリア。伯爵令嬢。
容姿は、まぁ普通に可愛い。前世だったならかなり顔面偏差値高めだろう。
だがしかし、こちらの世界の王子たちイケメンどもは、顔面偏差値が100を超えるであろう猛者たち。
ヒロインもそうだ。
ライバルになる侯爵令嬢だってヒロインに負けないぐらい、いや、好みによってはヒロインより美少女だと表現する人もいるだろうと思う。
今の私はそれなりだと思う。自分的には。
前世に比べれば格段に向上している。うむ。いい調子である。
つまり私は、前世の記憶を取り戻して数十分後には、来世に期待をかけていた。
だって、私はこの乙女ゲームのことを、何も知らないのだ。
前世の私はこの、【オフィーリアの夢見る王子たち】という乙女ゲームを買った。
通販で届いたのを受け取ったはいいが、週末にがっつりやろうと思って、キャラの見た目やあらすじに目を通しただけ。
つまり、私は予備知識ゼロでこの乙女ゲームの世界に転生してしまったのだ!
これでは前世の記憶ありの転生者としてのアドバンテージなんか皆無。何が起こるのか分からないのだから!
しかも何があったとしてもみんなヒロインに夢中になる世界なんて、頑張るに値しない。
はよ転生したい。
それを幼い頃より延々言われて育った私が、自己肯定感高く育つ訳はなく、いや、調子に乗ったブスとか超醜いから、その点リアルを教えてくれてた親には感謝しかない。
散々ブスだブスだと言われた時より、キレイに産んであげられなくてごめん、と謝られた時が一番メンタルを抉られたわー……。そんなこと言ってもちょっとぐらいは私にだって可愛いと思われる所あるでしょ、という心の中のささやかな期待は、実の両親に木っ端微塵にされた。
その時、私は花の女子高校生になりたてだった。
思春期まっただ中だ。
青春ですよ。
そして、私は親の言葉を痛感するというか、もうHPゼロなのに、更に追い討ちをかけられる高校生活を送ることになる。
ライフポイントまで減る勢いだ!
顔面偏差値、偏差値、運動神経、コミュニケーション能力、いずれも持たない私には、耐え難い程に苦痛しかない。
たった一ヶ月でカースト下位に落ち着いた。
無論、抜け出せる気はしない!
幸いなのはイジメがないことだった。これは本当にありがたかった。
そんなものがあったら黒歴史所の話では済まない。
大学生活も同じことになることは分かっていた。
当然だろう。
たった3年間で逆転出来るような潜在能力なんてゲーム以外である訳ない。
身の程をよく知った私は、将来独り身でも生きていけるだけの生活力を得なくてはならない。
それを見越しての大学を選ばなくてはいけない!
入学早々から人生の全てをかけた私の努力が始まった。
大学受験は、その為の準備さえ怠らなければ失敗はしにくい、とは聞くけれども、元が元であるからして、やはりそこそこの大学にしか合格は出来なかった。
だが、私は高校生からずっと英会話教室に通わせてもらい続けた結果、大学がそこそこであっても、英語力を買われてそれなりの会社に入ることが出来た。
私による、私の為の7年間の教育の成果である!
7年間もかかったのかというツッコミは私の精神衛生の為にご遠慮ください。
そしてやはりと言うか案の定と言うか、入社してからも私に居場所は基本ない。
若い子、可愛い子、気の利く子。
そう言った子たちが愛されていく。
あぁ、いえいえ、私も色々努力はしておりますのよ。
美容にも、その為の食生活、運動、センスが悪いと思われないように服装も自分に似合うものを身に着けたり、化粧の方法も、気遣いも、やれることはやれるだけやっての、今なのです。
その上での、このどノーマル感。
由緒正しいモブ。モブ オブ モブ。
ベストオブモブ。
モブ選手権があったら堂々のシード権獲得といった、己のモブさには、もはやため息しか出ないが、もう諦めた。
はよ転生して別の生き物に生まれ変わりたい。
これは私の望むリアルではない! と、真実に気が付いてしまった高校生の春。
なかなか私、そこに関しては早熟だと思う。
そんな中、たまたまスマホでやったアプリ、イケメンを落とす為のゲームだ。
通称乙女ゲーム。
そこでは自分の行動にきちんと結果がついてきた。
ちゃんとイケメンが落ちてくる! すげぇ!
なんだこのステキ世界は!!
私は歓喜した。
イケメンは確かにステキだ。
けれども、イケメンよりも、やった結果がともなうこの世界が好きだった。
じゃあなんで乙女ゲームなの。普通のゲームでいいじゃない、と思うかも知れないが、そこはやはり、恋というものに、こんな私でも興味があったのだ。
はよ転生したい、という思いはあるけれども、そこまでにはまだ年数を要する。
だからそれまでは、この乙女ゲームの中で生きることに決めた。
大学一年生の春だった。
以来、私のリアルは現実にはない。
現実社会は、私のリアルを支える(乙女ゲームに貢ぐ)為のロールプレイングでしかなく、嫌味な上司も、嫌がらせしてくる同僚も、恋愛にばかりかまけている後輩も、ロールプレイングでの敵でしかなく、全力で叩くとMPがすぐ枯渇しちゃうし、真の意味で殲滅も犯罪になるので出来ないし、完全犯罪する脳もない!
よって、最低限のHPダメージと最小限のMP消費で周囲の人間関係を捌くことに注力して早十年。
思ったよりも早くに、転生チャンスが訪れた。
そう、恋愛にトチ狂った上司とお馬鹿な後輩の、ドロドロを極めた不倫の修羅場に運悪く巻き込まれ、私は死んだのだ──……。
*****
……と、言う前世の記憶を思い出したのは、クラッカーが盛大に鳴らされた瞬間だった。
何処だ、ここ。と思ったのも一瞬で、現在の私の記憶と、前世の私の記憶がマーブルケーキの生地のように混ざり始めた。
ここは、貴族の子女が通うオフィーリア学園。
そして今日はその入学式。
さっきのクラッカーはお茶目な校長先生による大量のクラッカー、だ。
こうしている間にも記憶が混じっていく。
けれどそれは、決して気持ちの良いものではなく、吐き気を催させるものだった。
何故なら、今、私がいるここは、乙女ゲームの世界だったからだ。
前世の私が手にしていた乙女ゲーム。
【オフィーリアの夢見る王子たち】
通称【リア王】。
そこだけ聞くと高尚なものに聞こえるから不思議だが、内容は典型的な乙女ゲームだったハズ。
王子、頭脳明晰な侯爵家の跡取り、騎士団長の息子、意地悪をしてくる悪役令嬢の弟とか兄、イケメン教師と言った所ではないだろうか?
いや、実は攻略対象の事、ノーチェックなのだ。
見たらプレイしたくなっちゃうから、始める直前まで見ないと決めていた。ヒロインは良いんだけど、攻略対象は見ない。
ハイスペックイケメンたちは、オフィーリア学園高等部で入学してくるヒロインに夢中になる。
鉄板ではあるが、ヒロインは頭もいいし運動神経もいい美少女だけどうっかり属性あり、何事にも全力投球する美少女である。
そんな子がぐいぐい来ちゃって、イケメンたちはどんどん撃ち落されていくに違いない。
それはもう愚かな程に恋に溺れていく。乙女ゲームとはそういうものだ。
そしてそんな世界での私は、ヒロインをいじめる、王子に憧れる悪役令嬢 ミチル・レイ・アレクサンドリア。伯爵令嬢。
容姿は、まぁ普通に可愛い。前世だったならかなり顔面偏差値高めだろう。
だがしかし、こちらの世界の王子たちイケメンどもは、顔面偏差値が100を超えるであろう猛者たち。
ヒロインもそうだ。
ライバルになる侯爵令嬢だってヒロインに負けないぐらい、いや、好みによってはヒロインより美少女だと表現する人もいるだろうと思う。
今の私はそれなりだと思う。自分的には。
前世に比べれば格段に向上している。うむ。いい調子である。
つまり私は、前世の記憶を取り戻して数十分後には、来世に期待をかけていた。
だって、私はこの乙女ゲームのことを、何も知らないのだ。
前世の私はこの、【オフィーリアの夢見る王子たち】という乙女ゲームを買った。
通販で届いたのを受け取ったはいいが、週末にがっつりやろうと思って、キャラの見た目やあらすじに目を通しただけ。
つまり、私は予備知識ゼロでこの乙女ゲームの世界に転生してしまったのだ!
これでは前世の記憶ありの転生者としてのアドバンテージなんか皆無。何が起こるのか分からないのだから!
しかも何があったとしてもみんなヒロインに夢中になる世界なんて、頑張るに値しない。
はよ転生したい。
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