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北の帝国と非有の皇子

非有の皇子×カーバンクル

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『あ!那由多、ちょっとランガルトさんにお話があるのです』

『え?珍しい』

『はい。パパがいた部屋の奥にもう一つ隠し小部屋があるのですが、そこに精霊の子達が何人か積まれています。パパに魔力を奪われるという想定外の事が起きましたが約2名、那由多の身体と同じ状態で潜在能力が高く、また生まれも最近だったので【縁の糸】で魂を留めることに成功しました。2人の親も檻におりますので、その者たちの魂を戻す為に、そのものらと共に屋敷に連れ帰って貰いたいのです』

「えっ?!」

『ちょっと。僕の事を盗人みたいに言うのやめてよね』

『盗人と似た様なものでしょう?』

 いや待って?話が続かない。

「どうした、那由多?」

「お祖父様…ちょっと内緒のお話があるのですが、御耳を貸して頂けませんか?」

 気が付かなかったけれど、ツクヨミが驚くことを言うので思わず声に出てしまった様だ。
 脳内で繰り広げられる不毛な言い争いをBGMに、お祖父様にツクヨミから言われた事をこっそりと伝言した。

 _________________________________________





 お祖父様の侍従に、抱っこされたまま馬車に乗せて貰って屋敷までの帰路についた。

 パパ改め、カーバンクルのかーくんは、俺から魔力を好きなだけ摂取したら満足して、今は後頭部に張り付いている。魔力を充分に摂取した為なのかわからないが、座布団から高級座布団、そしてむっちりしたクッションへの進化を遂げた。大きさ的には、俺の頭の半分も無い程度なので大したことはないのだが、若干後頭部が重い。いつの間にかカーバンクルの額の紅い石も蒼く変わっていた。

『かーくんの額の石ってもしかして…』

 光の国から来た某ヒーローの…いや深くは考えないでおこう。

『お! お! おーーー! あんなところに屋台があるよ? あそこには弦楽器を持ってる人がいるよ⁉︎ 吟遊詩人かな? 大道芸人かな? 人が集まってる!』

『ああ、あれは吟遊詩人の調べですね。各国であった出来事を詩にして唄うのです』

『おー!』

 何でもかーくんはヴェルミクルムに森で捉えられた後、外の様子も見れず、地下のあの部屋まで視界を遮られた檻に入れられての移動だったみたいだ。

 屋敷にいく道すがら、馬車の車窓から見える人々の営みにずっと歓声を上げていた。

『うん。結構満足したし、そろそろお暇するよ』

『は?』

『え?』

『あんまりにいすぎてもたぶん良くないからね。この子カーバンクルの事は頼んだよ。人形っていっても、僕とフィーリングが良いだけで、普通のこの世界の生き物と変わりはないし、大人しい子だから』

『もう来ないと言う事ですか?』

この子カーバンクルと僕は繋がっているからね。気が向いたらまた来るよ』

『別に貴方が来なくても、今のところ世界は正常に廻っておりますので、来なくても大丈夫ですよ』

『あっは!ツクヨミくんったらツンツンなんだから!那由多くんも、にちゃんと名前をつけてテイミングしておいてね。貴重な生き物だから他所の人に取られない様に。僕が入ったらまた檻の中とかごめんだよ』

 ひとしきり馬車で騒いで満足したのか、かーくん…いやパパの意識は元の場所へ帰った様だ。
 俺の頭に張り付いていたカーバンクルはポトリと俺の膝に落ちた。

 侍従は死んだのかと怯えていたけど、

「寝ているみたいです」

 と、言ったら安心した様だ。そのまま俺の膝のカーバンクルは丸まって寝ている。

『いったい何だったんだ…』

 少し街へ土地を見るついでに散策に行っただけだったのに、色々と濃い数時間だった。お祖父様の屋敷までの道が遠いいなと、貴族街へ繋がる美しく整備された緑の林道を見つつため息をついた。



 _________________________________________



 ランガルト視点


 ナユタに耳打ちをされ、示された場所の荷物を退けると確かにそこには隠し扉があった。

「閣下」

「中を調べよう」

「はっ」

 憲兵の1人が鍵を開け扉を開け放つと、山と積まれたぐったりとした子供達がいた。

「これは…精霊の子たちか?」

「何と惨い…‼︎」

 ナユタに言われた通り、入り口から遠く、奥の壁の上にいる生まれて間もない黒い獣人の精霊の子と、白いエルフの精霊の子を見つけた。

 天井は高く、一階付近から投げ込める様な蓋があった。憲兵が数人一階部分も調べると言って部屋から出ていく。

「帳簿を探し出せば何かわかるかもしれない。全ての帳簿を調べるか。また厄介なものを見つけましたな。グラキエグレイペウス公爵閣下の…預かり子ですか?それにしてもどこかで見た顔ですが…」

 連絡をするや否やすぐに駆けつけた旧知の憲兵隊長が、詮索をする様にこちらに話かける。

「いずれわかる事だが、物理的に首を飛ばされたくなければ、詮索はしない事だ。あとこの2名はもしかしたら助かるかもしれないから一時預かるが、問題はないか?」

 この言葉でナユタが皇の者と知れただろう。憲兵隊長の首を物理的に飛ばせる私と懇意の者は限られる。

「怖や、怖や。孤児たちや奴隷…あるいは連れ去られたのか。獣人たちには行くところがありますが、精霊の子は厄介ですからね。助かると言うのならむしろ全ての子を引き取って頂きたいくらいですよ。……助かる方法と言うのも黙秘ですか?」

「……」

「わかりました。上の方には報告は一応しておきますがね」

「後のことは頼む。私も後から登城し報告しに行く」

 馬車を手配させ、この2名の精霊の子の関係者と思わしき者たちとともにナユタが待つ自身の屋敷に戻った。






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◆◇ お知らせ◇◆


いつも読んでくださってありがとうございます!書籍情報が出ました。

アルファポリス様より奨励賞を頂き、改題、改稿の上、11月中旬に書籍

神様お願い!
~神様のトバッチリで異世界に転生したので心穏やかにスローライフを送りたい~

が発売されます!読んでくださっている皆様のおかげです!!本当にありがとうございました!!


発売に伴い、きのこのこ初の書籍化と言うとこで、プレゼント企画をご用意しております。

宜しかったらご参加ください。詳しくは今後書影が出ましたらご報告させていただきたいと思います。

本当に皆様へ感謝がつきません。ありがとうございました!


※  書籍化に伴い那由多の脳内会話を()から『』に変更させて頂いてます!いづれ統一しますが安定性がなく申し訳ありません。
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