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恋人時代
①幸せな時間(1)
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白川と復縁して数ヶ月。一緒に本屋巡りをしたり、映画館や動物園に行ったりして仲を深めている。
ある日、『俺があげた腕時計と名刺入れ、もう使ってくれないの?』とちょっと寂しそうに言われた。腕時計と名刺入れを新しくしたことに気がついていたらしく、復縁した後もそれを使い続けていることに少し不満を覚えていたようだ。『別れちゃってしまったの』そう言ったら、どこにしまったのか聞いてきた白川は、それを取り出して『はい。もう使えない状況にならないようにするから』と言って渡してくれた。『ちなみに意味込めてあげたんだよ』と言われ、頭にハテナマークを浮かべていたら、少し笑って教えてくれた。
『腕時計をプレゼントするのは、同じ時を過ごしましょうっていう意味があるんだよ。俺にとってお前はずっと好きな人だからさ。お前に変な奴が近づかないようにしたんだよ。素敵な腕時計ですね、って言われたらお前なら、貰い物って言うだろうって思ってたし。あんまり女性同士で腕時計あげたりしないから、大抵の男は男から貰ったって分かるんだよ。まあ名刺入れは就職決まったって聞いたから、仕事頑張れって意味込めたけど』
って、ちょっと待って。腕時計は本当にあの意味でよかったのか。そう思ったら嬉しいやら恥ずかしやらで顔が赤くなってしまった。
『ちなみに、ネクタイをプレゼントする意味って知ってるか?』
知らなかったのでネットで調べてみたら。
あなたに首ったけ
『え、し、知らない!』
『うん、まあそうだろうなって思ったよ』
『じゃあ、他の人にあげるなって言ったのは』
『そーいうこと。他の奴らがそれで勘違いしたら困るからな』
そう言ってぎゅっと抱きついてきた。
『あの時。もうお前への気持ちを捨てないといけないと思った。だからお前にもらったネクタイ着けてたんだよ。これでお前を思い出すのは最後にすると決めて』
そう言えば。神宮寺さんとの婚約会見の時、私があげたのを着けていた気がする。それもあってさらに泣いてしまったことを思い出した私は、白川に抱きついた。
『思い出したら悲しくなった』
『ごめん』
そして流れた涙を、キスで拭ってくれた。
白川と仲を深めながら、家族同士の仲も深めていた。兄と舞さんも交際しているため、白川家と橋水家の8人で何回かご飯を食べた。緊張したけれど、とても楽しかったし親同士も仲良くなったらしく、お父さんは白川のお父さんと一緒にたまに釣りをしているというし、母親同士はたまに一緒にカフェに行ってお茶をしているという。
そうして家族同士の絆も深まった頃、『同棲しよう』と白川が提案してくれたので、私たちは親の許可をすんなり頂いて一緒に住むことになった。白川との同棲はすごく良かった。一緒にご飯を作ったり、掃除をしたり。毎日一緒に寝たりしている。忙しいけれど、会社でも家でも白川のそばにいられて私はとても嬉しかった。まあ、恋人だからといって仕事で甘やかされることはないから、会社で厳しいことを言われても家では甘やかしてくれるから、とても良い。
そして、そろそろ名前で呼びたいなと思った私は、勇気を出して白川に声をかけた。
「ねえ、」
「ん? どうした?」
「あのさ、その、名前呼んでいい?」
「……」
え、固まってしまった。もしかして。
「あ、ダメだった?」
そう言ったら白川は慌てて頭を振った。
「ダメじゃない。いつか呼び合いたいって思ってたけど、お前から言ってくれるとは思わなくて」
「ふふ。そーへー」
「なあに、美紗」
そういう彼の顔はすごい蕩けていて。ああ、好きだなと思って、キスをした。
「っちょ」
「だめ?」
「だめ、じゃない。嬉しいけど、」
「けど?」
「初めてキスした時は真っ赤になっていたのに、数ヶ月でこーんな積極的になるなんて」
「私だってキスしたい時あるもーん」
そう言ったら、宗平は「ふーん」と言って、キスの雨を降らせてきた。
「ん、ちょ、ま」
「待ちませーん」
止めようと思って口を開けたら、舌が入ってきて。もっと深いキスになって。嬉しいけど息が苦しくなって。宗平の胸を叩いたら解放してくれた。
「ちょっと、いっぱいしすぎ」
「しょうがないでしょ。キスしたいって美紗が言ったんだから」
まあ、そうだけど。でも、宗平とこうやって一緒にいられるのが幸せだから。私は宗平に抱きついた。
ある日、『俺があげた腕時計と名刺入れ、もう使ってくれないの?』とちょっと寂しそうに言われた。腕時計と名刺入れを新しくしたことに気がついていたらしく、復縁した後もそれを使い続けていることに少し不満を覚えていたようだ。『別れちゃってしまったの』そう言ったら、どこにしまったのか聞いてきた白川は、それを取り出して『はい。もう使えない状況にならないようにするから』と言って渡してくれた。『ちなみに意味込めてあげたんだよ』と言われ、頭にハテナマークを浮かべていたら、少し笑って教えてくれた。
『腕時計をプレゼントするのは、同じ時を過ごしましょうっていう意味があるんだよ。俺にとってお前はずっと好きな人だからさ。お前に変な奴が近づかないようにしたんだよ。素敵な腕時計ですね、って言われたらお前なら、貰い物って言うだろうって思ってたし。あんまり女性同士で腕時計あげたりしないから、大抵の男は男から貰ったって分かるんだよ。まあ名刺入れは就職決まったって聞いたから、仕事頑張れって意味込めたけど』
って、ちょっと待って。腕時計は本当にあの意味でよかったのか。そう思ったら嬉しいやら恥ずかしやらで顔が赤くなってしまった。
『ちなみに、ネクタイをプレゼントする意味って知ってるか?』
知らなかったのでネットで調べてみたら。
あなたに首ったけ
『え、し、知らない!』
『うん、まあそうだろうなって思ったよ』
『じゃあ、他の人にあげるなって言ったのは』
『そーいうこと。他の奴らがそれで勘違いしたら困るからな』
そう言ってぎゅっと抱きついてきた。
『あの時。もうお前への気持ちを捨てないといけないと思った。だからお前にもらったネクタイ着けてたんだよ。これでお前を思い出すのは最後にすると決めて』
そう言えば。神宮寺さんとの婚約会見の時、私があげたのを着けていた気がする。それもあってさらに泣いてしまったことを思い出した私は、白川に抱きついた。
『思い出したら悲しくなった』
『ごめん』
そして流れた涙を、キスで拭ってくれた。
白川と仲を深めながら、家族同士の仲も深めていた。兄と舞さんも交際しているため、白川家と橋水家の8人で何回かご飯を食べた。緊張したけれど、とても楽しかったし親同士も仲良くなったらしく、お父さんは白川のお父さんと一緒にたまに釣りをしているというし、母親同士はたまに一緒にカフェに行ってお茶をしているという。
そうして家族同士の絆も深まった頃、『同棲しよう』と白川が提案してくれたので、私たちは親の許可をすんなり頂いて一緒に住むことになった。白川との同棲はすごく良かった。一緒にご飯を作ったり、掃除をしたり。毎日一緒に寝たりしている。忙しいけれど、会社でも家でも白川のそばにいられて私はとても嬉しかった。まあ、恋人だからといって仕事で甘やかされることはないから、会社で厳しいことを言われても家では甘やかしてくれるから、とても良い。
そして、そろそろ名前で呼びたいなと思った私は、勇気を出して白川に声をかけた。
「ねえ、」
「ん? どうした?」
「あのさ、その、名前呼んでいい?」
「……」
え、固まってしまった。もしかして。
「あ、ダメだった?」
そう言ったら白川は慌てて頭を振った。
「ダメじゃない。いつか呼び合いたいって思ってたけど、お前から言ってくれるとは思わなくて」
「ふふ。そーへー」
「なあに、美紗」
そういう彼の顔はすごい蕩けていて。ああ、好きだなと思って、キスをした。
「っちょ」
「だめ?」
「だめ、じゃない。嬉しいけど、」
「けど?」
「初めてキスした時は真っ赤になっていたのに、数ヶ月でこーんな積極的になるなんて」
「私だってキスしたい時あるもーん」
そう言ったら、宗平は「ふーん」と言って、キスの雨を降らせてきた。
「ん、ちょ、ま」
「待ちませーん」
止めようと思って口を開けたら、舌が入ってきて。もっと深いキスになって。嬉しいけど息が苦しくなって。宗平の胸を叩いたら解放してくれた。
「ちょっと、いっぱいしすぎ」
「しょうがないでしょ。キスしたいって美紗が言ったんだから」
まあ、そうだけど。でも、宗平とこうやって一緒にいられるのが幸せだから。私は宗平に抱きついた。
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