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僕の過去、そして(1)
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僕は、浩曰くイケメンらしい。幼稚園生の時に出会った彼も浩の言葉を借りるとイケメンだと思う。僕と浩は幼稚園生の時泥団子を作っている時に仲良くなった。どうすれば丸く作れるか、奇麗な泥団子を作るにはどうすれば良いのか、2人で試行錯誤したことは今でも覚えている。そして僕の父親、津末時義は、TUKI-SUEという会社の社長をしている。社長の息子だという理由で次期社長は僕になることが決まっていた。
顔が奇麗だということと親が社長だということで、小学生になったら色々な女子に声を掛けられるようになった。最初は僕と仲良くしてくれると思い嬉しかったのだが、ある時1人の女子の母親が娘に、『誠一君と仲良くなれそう? 彼は大企業の社長の息子さんだからうまくいけば将来安泰よ、頑張りなさい』、と言っているのを聞いてしまった。そして僕は知った。そうか、僕自身を見てくれる人はいないのか。僕のバックにしか興味がないのか。声を掛けてくれたのは彼女の意思ではなく、親の意思だったのか。そう知ってしまったら僕は彼女たちに応える必要がないと思った。それからは浩としか話さなくなった。他の男子も同じようなことを考えているのかもしれないと思うと怖くなってしまった。そして、父親の教育方針もあり勉強漬けの日々を送っていた僕は、感情が顔に出なくなってしまった。そして、楽しい、嬉しい、悔しい、悲しいといった感情を感じることもなくなっていった。そして小学校に入って1年も経たずに僕のあだ名は、ロボット君になった。浩は怒ってくれたけれど、どうでもいいと思っていた僕は浩を止めた。
それは中学生になっても変わらなかった。いや、親の意思ではなく彼女たちの意思で声を掛けられるようになったため、より執念深くなった。僕がどんなに無表情でも、無視をしていても、めげずに追いかけてくる人たちが多かった。まあ、3年生になって受験が近づくにつれ彼女たちは僕に近づかなくなったけれど。
高校生になってもそれは変わらないと思っていた。女子は顔や金しか見てくれないと思っていたけれど、僕が努力している勉強について興味をもって話しかけてくれた女子がいた。その女子に出会って僕の人生は大きく変わっていくのだった。そして、その女の子に恋をした僕は、ある決意を固めていた。
「父さん、話があります」
「お前から私に話しかけるとは。どうした」
クリスマスデートの後、杏夏と両想いだと確信した誠一は、父親に話かけた。
「婚約破棄をお願いいたします」
「寺東杏夏さんか」
「っ!?」
「秘書の望月から話は聞いている。1年生の6月。剣道の県大会に行ったそうだな。友人を応援に。しかし、望月の話では、優勝した寺東さんをお前が見つめており、とても優しい顔をしていたというではないか。本当は惚れている彼女の応援に行ったのではないか。それから、この前のクリスマス。彼女と一緒にいたらしいな。絶景スポットの観覧車に乗ったりしたそうだな。望月曰く、まるで恋人同士のようだった、と」
「……」
「お前には婚約者がいる。もし婚約破棄をするのであれば、勘当する。また、寺東さんの父親は私の会社で重要な役職に就いている。言いたいことは分かるな?」
「彼女のお父さんを解雇する、ということですか」
「理解が早くて助かるよ。では、仕事があるので失礼するよ」
誠一の父親は誠一の話を聞くことなく部屋を出て行った。同じ部屋には母親もいたが彼女は何も言わずに俯いているだけだった。
顔が奇麗だということと親が社長だということで、小学生になったら色々な女子に声を掛けられるようになった。最初は僕と仲良くしてくれると思い嬉しかったのだが、ある時1人の女子の母親が娘に、『誠一君と仲良くなれそう? 彼は大企業の社長の息子さんだからうまくいけば将来安泰よ、頑張りなさい』、と言っているのを聞いてしまった。そして僕は知った。そうか、僕自身を見てくれる人はいないのか。僕のバックにしか興味がないのか。声を掛けてくれたのは彼女の意思ではなく、親の意思だったのか。そう知ってしまったら僕は彼女たちに応える必要がないと思った。それからは浩としか話さなくなった。他の男子も同じようなことを考えているのかもしれないと思うと怖くなってしまった。そして、父親の教育方針もあり勉強漬けの日々を送っていた僕は、感情が顔に出なくなってしまった。そして、楽しい、嬉しい、悔しい、悲しいといった感情を感じることもなくなっていった。そして小学校に入って1年も経たずに僕のあだ名は、ロボット君になった。浩は怒ってくれたけれど、どうでもいいと思っていた僕は浩を止めた。
それは中学生になっても変わらなかった。いや、親の意思ではなく彼女たちの意思で声を掛けられるようになったため、より執念深くなった。僕がどんなに無表情でも、無視をしていても、めげずに追いかけてくる人たちが多かった。まあ、3年生になって受験が近づくにつれ彼女たちは僕に近づかなくなったけれど。
高校生になってもそれは変わらないと思っていた。女子は顔や金しか見てくれないと思っていたけれど、僕が努力している勉強について興味をもって話しかけてくれた女子がいた。その女子に出会って僕の人生は大きく変わっていくのだった。そして、その女の子に恋をした僕は、ある決意を固めていた。
「父さん、話があります」
「お前から私に話しかけるとは。どうした」
クリスマスデートの後、杏夏と両想いだと確信した誠一は、父親に話かけた。
「婚約破棄をお願いいたします」
「寺東杏夏さんか」
「っ!?」
「秘書の望月から話は聞いている。1年生の6月。剣道の県大会に行ったそうだな。友人を応援に。しかし、望月の話では、優勝した寺東さんをお前が見つめており、とても優しい顔をしていたというではないか。本当は惚れている彼女の応援に行ったのではないか。それから、この前のクリスマス。彼女と一緒にいたらしいな。絶景スポットの観覧車に乗ったりしたそうだな。望月曰く、まるで恋人同士のようだった、と」
「……」
「お前には婚約者がいる。もし婚約破棄をするのであれば、勘当する。また、寺東さんの父親は私の会社で重要な役職に就いている。言いたいことは分かるな?」
「彼女のお父さんを解雇する、ということですか」
「理解が早くて助かるよ。では、仕事があるので失礼するよ」
誠一の父親は誠一の話を聞くことなく部屋を出て行った。同じ部屋には母親もいたが彼女は何も言わずに俯いているだけだった。
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