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番外編

淳編 たからもの

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「君にみさきを護ってもらいたいんだ」



 そう言われ真堂家に招かれて出会ったのは、まだ小さな君だった。

 瑠美さんの足元に隠れて僕をうかがっていた君と同じ目線の高さになるように少し屈んだ。

「僕は淳。今日からみさきちゃんの護衛……お兄さんになります。よろしくね」

 そう言って手を差し出す。瑠美さんに促されておずおずと僕の手を握った君が愛らしく微笑んだとき、僕の世界がこれまでと違う色彩に溢れたような気がした。



 君を護りたい。



 周に言われて血の契約を交わしたからではなく、心からそう思えた。周や眞澄に護ってもらってばかりの自分ではなくなりたい。

 自分を誇れなくても、せめて君に甘えてもらえる存在になれるように。

 だけどその想いは時間と共に形を変えて。



 君と生きたい。

 みさきと手を繋いで微笑みあえる、ただひとりの男になりたい。



「みさき」

 気持ち良さそうにソファーでうたた寝しているみさきを起こそうとそっと肩に触れる。それだけで心は温かくなる。

「こんなところで眠っていると風邪をひくよ」

 生返事はしたけれど眠くて動きたくないといった感じのみさきがかわいくて、愛おしい。だけど体調を崩させるわけにはいかない。

 昔は軽々と抱き上げられた身体は、今ではお姫様だっこをしなければ持ち上げられない。

「あっ、淳くん⁉︎」
「部屋で眠った方が良いよ」

「自分で歩ける……」

 みさきは真っ赤になってしまっている。

「大丈夫。僕が連れて行くから」

 ミルクの香りがしていた女の子はいつの間にか甘い香りのする女性になっていた。

「階段とか危ないよ」
「じゃあ、階段まで運ぶよ」

 本音は少しでも長くみさきに触れていたいだけだ。そんな下心には気づかれたくないけれど、僕の想いが君に届いてほしいような気もするし、このまま変わらないでいたい気もする。

「淳くん……」

 困った顔も魅力的で、もっといろんなみさきが見たい。
 観念したのか腕の中で大人しくなったみさきは僕を上目遣いに見る。

「淳くん、力持ちだね」
「そうかな?みさき、僕の首に腕をまわして」
「……こう?」

 みさきがぎこちなく僕にしがみつく。

「重くない?」

 一歩踏み出した僕にみさきが問いかけてきた。

「ずっとこうしていたいくらいだよ」

 心の底からそう思っていたので笑顔でそれを伝えると、みさきはまた真っ赤になって黙り込んでしまった。

「みさき?」
「な、なんか熱いね」

 約束の階段まではすぐに運べてしまった。気をつけてみさきを降ろす。

「ちゃんとベッドに入って眠るんだよ」
「あ、うん……。なんか目が覚めちゃった……」

「それなら、紅茶とお菓子の時間にしようか」





 あの日、みさきに出会えたから僕は今こうしてここにいられる。
 君は、僕の生きる意味。

 君は僕の宝物。
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