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3章

王子様の秘密 7

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 イズミさんが帰ってから、この後どうするのかをみんなで話し合った。

 透さんと私がふたりで出かけるのは眞澄くんが絶対反対。近所だと誠史郎さんが一緒に行けないということで、みんなで少し遠くへ遊びに行こうと言う結論が出た。

 電車で1時間ほどの、海にほど近い有名な場所へ行けばもしそこで知り合いに会っても誠史郎さんとは偶然会ったということで押し通せるはず。
    もしものことがあっても、淳くんが言ってくれたら誰が相手でも信じてくれると思うし。

 それにしても、この男性陣は目立つ。駅のホームでも電車の中でもキラキラしている。

「着いたら昼飯?」
「俺、中華街がええなー」

「中華街って何?」
「中華料理店がたくさんある場所だよ」
「予約できるお店を探しましょう」

 誠史郎さんがスマホを操作してお店探しをしてくれている。
    私は未だにガラケーだから、そろそろスマホに変更したいなと誠史郎さんの手元を見つめてしまう。

 電車を乗り継いで、中華街に1番近い駅で降りた。そして誠史郎さんが予約してくれたお店へ行ってみんなでランチを楽しくいただいた。

 そして腹ごなしの散歩に海沿いの大きな公園へ移動する。潮の香りが風に乗って漂っていた。

「気持ちいいー」

 私は精一杯伸びをする。

 色とりどりのお花がたくさん咲いていて、見ているだけで楽しい。枝垂れ桜やいろいろな種類のバラを見ることができた。

    しばらく散策していると海上バス乗り場の辺りに差しかかった。
    もう少しで出発の時間だったので乗ることにして、みんなで船で移動した。


 次の停船場で降りると、赤レンガ倉庫は目の前だった。海の方を見ると大きなクルーズ船が悠々と進んでいる。

 柵に掴まって海を眺めていると、淳くんが隣にやって来た。
 ミルクティーの色の髪が風になびいて、それを片手で抑えているだけなのにとても絵になる。

「みんなは?」
「裕翔がアイスクリームが食べたいって言うから買いに行ったよ」

 お昼をあれだけ食べてさらにデザートだなんて、すごい食欲だと感心してしまう。

「誠史郎が僕らの分も買ってきてくれるって言ってたから、ここで待っていよう」

 公園も中華街もそうだったけれど、土曜日なのでやっぱりここも混雑している。

「みんなで出かけられて良かったね」

 淳くんはとても穏やかに微笑んだ。私もつられて微笑んでしまう。淳くんは本当に不思議。

「淳くんはどうしていつもそんなに穏やかでいられるの?」

 単純に疑問に感じていたことを思わず聞いてしまった。
すると淳くんは、少し困ったように双眸を細める。

「僕は穏やかじゃないよ。本当の僕を知ったら、みさきはきっと……」

 ミルクティーのような色の瞳に吸い込まれそうな錯覚に陥る。
    淳くんから目が離せなくなっていると、強い海風が吹いた。驚いて目を閉じてしまい、再び開いたら目の前にいたはずの淳くんの姿がない。

「淳くん!?」

 驚いて探しに行こうと一歩踏み出そうとした時、背後から私の両目を冷たくて大きな手が覆った。

「知らないままでいて」

 耳元で淳くんの気品のある声が甘く囁く。
    頭の芯がぼうっとしたような感覚に陥り、無意識に頷いてしまっていた。

「ありがとう」

 淳くんは私をくるりと反転させて向かい合うと優しく微笑んでくれる。
そして彼は私の両方の二の腕の辺りをそっと掴むと、額にキスをした。

 私自身に、現実に起こったことだと脳が理解するまで、少し時間がかかった。
    私が真っ赤になって固まっていると、淳くんが笑顔でよしよしと頭を撫でてくれる。

「みさきー!」

 裕翔くんが両手にアイスクリームの入ったカップを持って走って来た。

「はい、どーぞ」

 満面の笑みの裕翔くんが、私にバニラアイスの入ったカップを渡してくれる。

「ありがとう」

 私がお礼を言うと、ニコッと裕翔くんは笑ったの。そしてスプーンいっぱいにストロベリーのアイスクリームの掬って、大きな口を開けてパクリと食べた。

「おいしー」

 本当においしそうに裕翔くんが食べているので、見ているこっちまで幸せな気持ちになる。

「はい」

 裕翔くんがは私にイチゴ味をひと口味見にくれようと、アイスクリームのたっぷり載ったスプーンを口元に差し出してくれる。

「ありがとう」

 ありがたくいただいて、私のアイスクリームもスプーンに掬って裕翔くんの口の前に持っていく。パクリと裕翔くんがかぶりついてくれた。
    淳くんは穏やかに微笑んで私達の様子を眺めている。

「裕翔クン、抜け駆けはあかんでー」

 眞澄くん、誠史郎さん、透さんがアイスクリームを手に並んで歩いて来る。

 海辺でみんなでワイワイ言いながら分け合って食べたアイスクリームは、いつもより美味しく感じた。

 心配していたようなアクシデントはなく、混み合った帰りの電車に乗って最寄り駅まで戻った。

 まだ日が暮れる前に帰れたのでヒスイくんに会うこともなかった。

「今日は俺、ここに泊まらせてもらおうかなー」

 透さんの言葉で、なぜか家の中に妙な緊張感が走った。
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