上 下
41 / 45
3章

決意

しおりを挟む
 桐生さんとお別れして、私は奏の部屋へ来た。

 山積みの仕事と山根さんのことで疲弊しているから邪魔かな、とも思った。

 だけど奏を一人にしたくない気持ちが勝った。
 奏もそっと手をつないでくれたから、無言でも怖くなかった。

 お風呂に入って、後ろから抱きしめてくれる奏に甘える。
 乳房に大きな手が伸びてきた。

「ふ……、あッ」

 快楽に溺れさせようと蠢く指に溶けていく。キスをしたくて振り返る。奏と意思が通じ合っていたみたいで、すぐに唇が重なり合う。

「ん、ンん……」

 舌を絡ませ合っていたけれど、奏はすでに次の行動に移っていた。胸の先端の突起を弄んでいた手が、するりと私の下腹部へ滑り込む。

「お湯の中でもわかるぐらい濡れてる」

 涼しげな声が意地悪にささやいた。

「イジワル……」

 拗ねたように告げると、ご機嫌を取ろうと耳朶を甘噛みしてくる。
 最後の理性を振り絞って寝室へ移動した。

 初めて奏と結ばれた日、彼はお酒で記憶がないのは嫌だと言っていた。

 その理由の一部に山根さんとのできごとがあるのだろう。
 もちろん、奏の優しさとか、誠実さとかも関係しているけれど。

 そういうのも全部含めて、奏と一緒にいたいと思う。

「好きだよ、奏」
「実梨……」

 どこか呆然としたように私の名を呼ぶ、愛しい人。
 安心してほしくてぎゅっと抱きしめた。

 あの日、奏が私を助けてくれた。今度は私の番。

 救うなんておこがましいけれど、奏の心が少しでも軽くなってほしい。
 山根さんとの過去に囚われているのは悔しい気もした。

「実梨がいてくれて良かった」

 暗闇の中、奏の両目が少し潤んでいるように見えた。

 きつく絡む指。心でも身体でも、私たちはつながっている。そう信じることができる。

 私の全身を愛撫する手と、キスの雨を降らせる唇に嬌声が止まらない。

 息もできないくらい喘いでいるのに、奏は私を貪ることを止めない。

「も……う、無理ィ」
「ごめん。今日は手加減できない」

 ガツガツ食い荒らされるみたいな感覚に、どこか興奮している私もいた。
 奏にこんな一面もあったなんて。

 たまにはこんな風に求められるのも悪くないと感じていた。


 ❁❁❁❁❁❁❁❁


 翌朝、奏はスマホを見るとため息をついた。二次会に参加していたはずの山根さんから奏へ、責めるようなメッセージが何通も来ていたそうだ。

 ここまで来ると、山根さんに対して薄ら寒いものを感じてしまう。
 一体何があって、ここまで奏を恨んでいるのだろう。

「昨日の二次会の様子を原田さんに聞いてみる。それから、どうしても必要なら……山根さんと会って話してみる」

 奏の決意を、私は彼の手を握ってうなずくことで応援した。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

10 sweet wedding

国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

crazy Love 〜元彼上司と復縁しますか?〜

鳴宮鶉子
恋愛
crazy Love 〜元彼上司と復縁しますか?〜

最後の恋って、なに?~Happy wedding?~

氷萌
恋愛
彼との未来を本気で考えていた――― ブライダルプランナーとして日々仕事に追われていた“棗 瑠歌”は、2年という年月を共に過ごしてきた相手“鷹松 凪”から、ある日突然フラれてしまう。 それは同棲の話が出ていた矢先だった。 凪が傍にいて当たり前の生活になっていた結果、結婚の機を完全に逃してしまい更に彼は、同じ職場の年下と付き合った事を知りショックと動揺が大きくなった。 ヤケ酒に1人酔い潰れていたところ、偶然居合わせた上司で支配人“桐葉李月”に介抱されるのだが。 実は彼、厄介な事に大の女嫌いで―― 元彼を忘れたいアラサー女と、女嫌いを克服したい35歳の拗らせ男が織りなす、恋か戦いの物語―――――――

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる

春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。 幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……? 幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。 2024.03.06 イラスト:雪緒さま

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

処理中です...