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3章
波紋
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朝ごはんを食べながら、ふと疑問に思ったことがあった。
「奏はどうしてこの仕事を選んだの?」
コーヒーを飲んでいた奏は吹き出しはしなかったけれど、むせ返る。
「実梨の呟きで興味を持って、原田さんに話を聞いていたら引きずり込まれてて……。どうしてもこれがしたいってこともなかったから」
「カメラマンは?」
「嘉人さんを見ていて、俺ではとてもプロとしてやっていけないって感じた。実梨を撮っているときが一番楽しかったし」
今度は私が紅茶をむせる番だった。
「同じ会社にまさか実梨が入ってくるとは思っていなかった。だから本当に驚いたけれど、嬉しかった。土日も仕事ばかりで趣味の時間は取れなかったけれど、実梨と一緒に働くからがんばれた」
穏やかな表情でそんなことを言われたら、本当は奏と一緒にだらだら過ごしたいけれど、ちゃんと仕事に行かなくてはいけない。
がんばろうと気合を入れ直す。
支度を終えた私を奏は玄関まで見送ってくれた。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
額にそっとキスをしてくれる。ドキドキしていると、唇が重なった。
「気をつけて」
一緒に暮らしたらこんな毎日なのかな、と想像するとなんだかほわほわする。
奏の家から会社は近いのでとてもありがたい。
気力がみなぎっていたので、シャキシャキ午前中の業務を終えることができた。
奏のことをたくさん知れて、私が伝えるか悩んでいたことは彼はわかっていて受け入れてくれていた。
こんなに何もかも順調で大丈夫だろうか。幸せでありがたいことだけど。
午後に備えて坂本さんと東雲さんと一緒にお昼ごはんを食べにいった。
東雲さんに最近なんだかかわいくなったような気がすると言われたけれど、彼氏ができたとは言わずに愛想笑いでごまかしてしまった。
言っても良かったのだけど、まだ私が部署異動する覚悟ができていない。
このことも奏とちゃんと話さないといけない。
会社に戻ると、原田課長がロビーで女の人と話していた。とても親しげな様子だ。
隣にいる東雲さんがムッとしたのを感じる。これまで色恋には本当に疎かったけれど、さすがに空気が少し読めるようになってきた。
ふと疑問に思った。課長の恋愛対象って、どんな感じなのだろう。
とても顔が良いから女性にモテそうだけど、言葉遣いはオネェ。もしかしたら男女問わず愛せる人なのだろうか。
「今日は奏はいないの?」
奏、と言う言葉に耳がピクリと反応してしまった。ここで登場する奏はやっぱり、私の彼氏の奏だろうか。
「ええ。今日はお休みよ」
間違いなく梅原奏のことだ。この会社に他に奏と言う名前の人はいないはず。
「そっかー。つまんないなぁ」
楽しげな女性の笑顔に、今度は私が気が気でなくなる。課長と奏の共通の知り合いなのだろうか。どんな関係なのだろう。
「元カレがどんな変身を遂げたのか見たかったのに」
「奏はどうしてこの仕事を選んだの?」
コーヒーを飲んでいた奏は吹き出しはしなかったけれど、むせ返る。
「実梨の呟きで興味を持って、原田さんに話を聞いていたら引きずり込まれてて……。どうしてもこれがしたいってこともなかったから」
「カメラマンは?」
「嘉人さんを見ていて、俺ではとてもプロとしてやっていけないって感じた。実梨を撮っているときが一番楽しかったし」
今度は私が紅茶をむせる番だった。
「同じ会社にまさか実梨が入ってくるとは思っていなかった。だから本当に驚いたけれど、嬉しかった。土日も仕事ばかりで趣味の時間は取れなかったけれど、実梨と一緒に働くからがんばれた」
穏やかな表情でそんなことを言われたら、本当は奏と一緒にだらだら過ごしたいけれど、ちゃんと仕事に行かなくてはいけない。
がんばろうと気合を入れ直す。
支度を終えた私を奏は玄関まで見送ってくれた。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
額にそっとキスをしてくれる。ドキドキしていると、唇が重なった。
「気をつけて」
一緒に暮らしたらこんな毎日なのかな、と想像するとなんだかほわほわする。
奏の家から会社は近いのでとてもありがたい。
気力がみなぎっていたので、シャキシャキ午前中の業務を終えることができた。
奏のことをたくさん知れて、私が伝えるか悩んでいたことは彼はわかっていて受け入れてくれていた。
こんなに何もかも順調で大丈夫だろうか。幸せでありがたいことだけど。
午後に備えて坂本さんと東雲さんと一緒にお昼ごはんを食べにいった。
東雲さんに最近なんだかかわいくなったような気がすると言われたけれど、彼氏ができたとは言わずに愛想笑いでごまかしてしまった。
言っても良かったのだけど、まだ私が部署異動する覚悟ができていない。
このことも奏とちゃんと話さないといけない。
会社に戻ると、原田課長がロビーで女の人と話していた。とても親しげな様子だ。
隣にいる東雲さんがムッとしたのを感じる。これまで色恋には本当に疎かったけれど、さすがに空気が少し読めるようになってきた。
ふと疑問に思った。課長の恋愛対象って、どんな感じなのだろう。
とても顔が良いから女性にモテそうだけど、言葉遣いはオネェ。もしかしたら男女問わず愛せる人なのだろうか。
「今日は奏はいないの?」
奏、と言う言葉に耳がピクリと反応してしまった。ここで登場する奏はやっぱり、私の彼氏の奏だろうか。
「ええ。今日はお休みよ」
間違いなく梅原奏のことだ。この会社に他に奏と言う名前の人はいないはず。
「そっかー。つまんないなぁ」
楽しげな女性の笑顔に、今度は私が気が気でなくなる。課長と奏の共通の知り合いなのだろうか。どんな関係なのだろう。
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