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2章

相談 2

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 スーツと下着がまとめて買えて、それなりの品物だけど値段はそこまで高くない某量販店で購入することにした。
 スーツは一応試着させてもらう。打ち合わせだけの日ならこれで大丈夫そうだ。

 レジ待ちに並んでいると、係長が横にやって来てすっと私から買い物カゴを奪う。なぜか私用と思われる部屋着まで追加された。

「俺が払う」
「私のものですから、自分で買います」
「俺のワガママだから」

 もう次に順番が回ってくる。後ろに並んでいる人もいるし、押し問答で周囲に迷惑をかけたくない。

「……ありがとうございます」

 ありがたく厚意に甘えることにした。係長の頬がホッとしたように緩む。

 乙女ゲームの最愛キャラ、凛空なら多分、何食わぬ顔で全部高級品で揃えてくれるところ。だけど係長はどこか不器用な感じなのが良い。現実的だ。

 会計を済ませて、食事をするために移動する。
 この近くにあるおいしいピザ屋さんに行ってみたかったので素直に伝えた。

 おいしいお酒と、おいしいピザ。舌鼓を打ちながら、昼間の打ち合わせでのできごとを係長に話した。課長に言われたことも。

「課長の言うとおり、こちらからできることはない。残念だが、式がキャンセルされることも覚悟しておいた方が良い。キャンセル料金でまた苦情があるかもしれないが、何が起こっても実梨のせいではないから。気に病むな。少しでも迷うことがあれば俺に言え」

 私のせいではない。その一言がとても気持ちを楽にしてくれる。

「新郎新婦からの電話やメール攻撃があるかもしれないが、業務時間以外は対応しなくて良いから」

 係長の言葉に深く頷く。契約するときに伝えていることだけど、我が社は時間外の対応はしない。お客様に伝える携帯番号は会社支給のものだ。

「気になるのは理解できるが、一度応えると際限がなくなる」
「係長も経験が……?」
「その経験をする前に、何人も潰れていくのを見ていたから。無理な要求には応えないと決めている」

 やっぱりそんなことはたくさんあるのだと怖くなる。
 この先、上手く処理できるか心配だ。だけど係長の力を借りて試行錯誤するしかない。

「実梨も、仕事の域を超えるほどがんばらなくていいから」

 上司としてではなく、彼氏としての台詞だ。声音や視線で何となくそれを感じ取る。

「辛かったら俺を頼ってほしい……」

 頬を赤く染めて、うつむいて、だんだん弱くなっていく語尾。照れているのが手に取るようにわかる。

「ありがとうございます」

 つられて私も恥ずかしくなる。顔が熱い。
 互いにもじもじする。私は係長の様子を上目遣いに覗き見た。

「冷める前に食べてしまおう」

 係長がまだ赤い顔をしているのはアルコールのせいだけではないと思う。

「そうですね」

 トマトソースがさっきより甘く感じた。
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