Promise Ring

8．神に誓うリング

愛おしむように髪を撫でる手で目が覚めた。
瞼を開けると、そっと口付けしてくる。

「おはよう」

まぶしそうに目を細めて私を見る成紀に、そんな顔もするんだな、って驚いた。

「腹、減ってるだろ？
飯、食いに行こう」

「……はい。
おはようゴザイマス」

シャワー浴びてこい、そう云ってまた、紙袋を渡された。
中に入っていた下着はやっぱりセクシーな奴でくらくらしたが、服は普通の、私好みのシンプルな奴。

……あとで知ったことだけど。
清楚な服の下に、扇情的な下着ってギャップが、ものすごく燃えるらしい。

　

近くのカフェでブランチ。
そのまま連れて行かれたのは……教会。

「……だから。
こういうのは」

「わかってる。
でも、ここがいいと思うから」

あたまを抱えつつ手を引かれて教会に入ると、中には誰もいなかった。

「よかった、貸し切りだ。
……これ」

そっと差し出されたリングケース。
開けると二本、指環が入ってて。

「……いい加減にしないと、本気で怒りますよ」

「あ、いや、マリッジリングじゃないぞ！」

大慌てで否定されても、目が泳いでいるからいまいち信用できない。

「……じゃあ、なんですか？」

「プロミスリング？
絶対に浮気なんかしない、って約束と、夕海と絶対結婚するって約束」

「……そう、ですか」

すぐに結婚を迫られなかったことにはほっとしたものの。

……そんな、約束。

「いや、か？」

首を横に振ると、右手を取られた。
薬指にケースから出した指環をはめてくる。

「俺はいま、神様の前で誓う。
絶対に夕海を大切にして、夕海と結婚する、って」

もう一つの指環を私に渡すと、右手を差し出してくる。
黙って私がその薬指に指環をはめると、嬉しそうに笑った。

「これで俺は夕海のものだ。
……だから心配しなくていい」

抱き寄せられて、誓いのキスだって唇が重なる。
そんなことが嬉しいと思っていながら。
どこかで、……きっとすぐにこんな指環、外してしまう日が来るんだろうな。
そんなことを考えて、胸がずきりと痛んだ。