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第2章 味方ができれば頑張れる
5.夜のレッスン
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気がつけば外は暗くなっていた。
「そろそろおいとまを……」
「なに言ってんだ、メシ奢ってやるって言っただろ」
というわりに、滝島さんはエプロンを着けた。
「あのー?」
「俺が作ってやるから待ってろ」
「はぁ……」
待ってろと言われたのでおとなしく待つ。
でも時間がもったいないので、滝島さんから押しつけ……借りた本を広げた。
「できたぞー」
「えっ、あっ、はいっ!」
声をかけられ、慌てて本を閉じる。
そんなに時間がたった感覚がない。
それほど集中して読んでいたのかな。
ダイニングのテーブルの上にのせられていたのは、ハンバーグを中心にワカメのスープとサラダ、それにきんぴらゴボウだった。
「ダイエット中なのにハンバーグはありですか?」
「半分豆腐でカロリーオフ、それに……あとは食ってみ?」
なにか企んでいるようで、滝島さんはニヤニヤ愉しそうに笑っていてちょっと気持ち悪い。
「じゃあ……。
いただきます」
お箸を取り、ハンバーグを一口。
半分豆腐というわりにそれほど淡泊な感じはしないし……それに。
コリコリとなにか入っている。
「これ、なにが入ってるんですか?」
「刻んだレンコン。
それで咀嚼回数が増えるから、満腹中枢が刺激されて腹一杯になる」
「へぇー。
美味しいです」
確かに、普通のハンバーグよりはたくさん噛まないといけない。
もしかしてきんぴらゴボウも同じ効果なのかな。
「てか、滝島さんって料理できるんですね。
しかも上手」
「褒めたってなにも出ないぞ」
くいっ、と滝島さんが眼鏡を上げる。
もしかしてこれって、照れている……?
「飯はうちはもち麦ご飯だ。
繊維質が増えていい。
一回分ずつ炊くのは面倒だから、たくさん炊いて小分けにして冷凍しておけ」
「了解です!」
おにぎりはご飯でカロリーが……とか気にしていたけど、もち麦ご飯にしたら少しは気にしなくていいかな。
「ごちそうさまです」
「ん、お粗末様でした」
食後にまた、滝島さんはコーヒーを淹れてくれた。
「筋トレは続けろよ。
レポートも無理しない範囲で」
「はい、了解です」
先輩のいうことは真面目に聞く。
私のために言ってくれているんだし。
「それで、だ。
……夜のレッスンはどうする?」
レンズの向こうから妙に真面目な顔で滝島さんが私を見つめてくる。
「夜のレッスン、……ですか?」
でも、意味がわからなくて首が横に傾いた。
「夜のレッスンっていったら、決まってるだろうが」
私の頬に触れる滝島さんを、ぽけっと見てみた。
傾きながら彼の顔が近づいてくる。
眼鏡をかけたままキスはできるんだろうか、なんて妙に冷静なあたまで考えていた。
「……この先」
唇が離れ、開いたままだった目で彼を見上げる。
「無理にとは言わない。
でもあの日、お前は彼から、お前とやっても興奮しないと言われたと、泣いていたから」
「……!」
酔い潰れた私は、滝島さんにそんなことまで話していたんだ。
誰にも聞かせたくない、私の恥を。
「あの日のお前は俺にとって、魅力的だったよ。
覚えてないだろうけど。
そっちも自信がほしいっていうなら、俺がつけてやる。
……どうする?」
じっと私の頬に触れたまま、滝島さんが私を見下ろしている。
レンズの奥の瞳にからかいなどは一切なかった。
震える手で彼のシャツを掴む。
顔は見られなくて、その胸に額をつけた。
「……して」
かろうじて、自分の耳に声が届く。
どきん、どきん、と響く大きな鼓動は私のもの?
それとも……。
「……いいんだな」
無言で、こくりと頷く。
次の瞬間、滝島さんから強く抱き締められた。
今日の彼は香水をつけていないはずなのに、なぜかいい匂いがした。
「そろそろおいとまを……」
「なに言ってんだ、メシ奢ってやるって言っただろ」
というわりに、滝島さんはエプロンを着けた。
「あのー?」
「俺が作ってやるから待ってろ」
「はぁ……」
待ってろと言われたのでおとなしく待つ。
でも時間がもったいないので、滝島さんから押しつけ……借りた本を広げた。
「できたぞー」
「えっ、あっ、はいっ!」
声をかけられ、慌てて本を閉じる。
そんなに時間がたった感覚がない。
それほど集中して読んでいたのかな。
ダイニングのテーブルの上にのせられていたのは、ハンバーグを中心にワカメのスープとサラダ、それにきんぴらゴボウだった。
「ダイエット中なのにハンバーグはありですか?」
「半分豆腐でカロリーオフ、それに……あとは食ってみ?」
なにか企んでいるようで、滝島さんはニヤニヤ愉しそうに笑っていてちょっと気持ち悪い。
「じゃあ……。
いただきます」
お箸を取り、ハンバーグを一口。
半分豆腐というわりにそれほど淡泊な感じはしないし……それに。
コリコリとなにか入っている。
「これ、なにが入ってるんですか?」
「刻んだレンコン。
それで咀嚼回数が増えるから、満腹中枢が刺激されて腹一杯になる」
「へぇー。
美味しいです」
確かに、普通のハンバーグよりはたくさん噛まないといけない。
もしかしてきんぴらゴボウも同じ効果なのかな。
「てか、滝島さんって料理できるんですね。
しかも上手」
「褒めたってなにも出ないぞ」
くいっ、と滝島さんが眼鏡を上げる。
もしかしてこれって、照れている……?
「飯はうちはもち麦ご飯だ。
繊維質が増えていい。
一回分ずつ炊くのは面倒だから、たくさん炊いて小分けにして冷凍しておけ」
「了解です!」
おにぎりはご飯でカロリーが……とか気にしていたけど、もち麦ご飯にしたら少しは気にしなくていいかな。
「ごちそうさまです」
「ん、お粗末様でした」
食後にまた、滝島さんはコーヒーを淹れてくれた。
「筋トレは続けろよ。
レポートも無理しない範囲で」
「はい、了解です」
先輩のいうことは真面目に聞く。
私のために言ってくれているんだし。
「それで、だ。
……夜のレッスンはどうする?」
レンズの向こうから妙に真面目な顔で滝島さんが私を見つめてくる。
「夜のレッスン、……ですか?」
でも、意味がわからなくて首が横に傾いた。
「夜のレッスンっていったら、決まってるだろうが」
私の頬に触れる滝島さんを、ぽけっと見てみた。
傾きながら彼の顔が近づいてくる。
眼鏡をかけたままキスはできるんだろうか、なんて妙に冷静なあたまで考えていた。
「……この先」
唇が離れ、開いたままだった目で彼を見上げる。
「無理にとは言わない。
でもあの日、お前は彼から、お前とやっても興奮しないと言われたと、泣いていたから」
「……!」
酔い潰れた私は、滝島さんにそんなことまで話していたんだ。
誰にも聞かせたくない、私の恥を。
「あの日のお前は俺にとって、魅力的だったよ。
覚えてないだろうけど。
そっちも自信がほしいっていうなら、俺がつけてやる。
……どうする?」
じっと私の頬に触れたまま、滝島さんが私を見下ろしている。
レンズの奥の瞳にからかいなどは一切なかった。
震える手で彼のシャツを掴む。
顔は見られなくて、その胸に額をつけた。
「……して」
かろうじて、自分の耳に声が届く。
どきん、どきん、と響く大きな鼓動は私のもの?
それとも……。
「……いいんだな」
無言で、こくりと頷く。
次の瞬間、滝島さんから強く抱き締められた。
今日の彼は香水をつけていないはずなのに、なぜかいい匂いがした。
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