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第弐譚
0007:亡命する前に
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「スピスピー、……怪盗プリンスがなんかプリンを盗もうとしてるー、……スピスピー。(夢の中)」
「……アリー、起きて。起きないと人前でキスするよ。」
「ナラ様おはようございます‼︎」
皆様こんにちは! 宮殿内の裏庭にて何故かナラ様にお姫様抱っこされているアデリア・リッツです! ナラ様の真横には、怪盗プリンスの格好のままのマーズ殿下が不思議なポーズをとられていらっしゃるのですが、……見なかったことに致しましょう。……と、とりあえずナラ様から降りなければ! 私は力を振り絞ってジタバタと手足を動かしました。
「アリー、大人しくしないと本当に口塞ぐよ。(ジト目)」
「ひゃ、ひゃい‼︎(泣)」
「ハッハッハッ、アデリア嬢も目を覚ましたし、リッツ子爵邸へ戻るとするか!(変なポーズをとりながら)」
「……あの、すみません、マーズ殿下、……結局、私達は生きているのですか?」
私がマーズ殿下に尋ねると、目の前のお二人は、キョトンとしたお顔をされて、その後すぐに爆笑なされたのです!
「………あはは、アリー、それに関しては、リッツ子爵邸へ戻ってからね。(ウインク)」
「そうだな。誰かに見られると流石に騙しきれないから、先にここを発つことにするか。ナラフォンス殿、お手を。」
「ええ、お願いします。」
ナラ様はマーズ殿下の手を取りながら私に言いました。
「アリー、転送してもらうから私に強く掴まりなさい。」
「はい、ナラ様!」
「じゃあ行くぞ、……転送!(パアアー)」
マーズ殿下の魔法(?)によって、私達は青い光の中へ吸い込まれていったのでした。
◇ ◇ ◇
バンッ‼︎
リッツ子爵家屋内の小さな広間に、無事到着しました。
「アリー、ケガはない?」
「はい、大丈夫です。ナラ様はお怪我されていませんか?」
「私も大丈夫よ……。(微笑み)」
「ーーナラフォンス殿、アデリア嬢殿、ーーーーご家族達との、最後のお別れだ。」
室内を見回すと、ルシエル公爵ご夫妻様とリッツ子爵家一同が、揃って私達を見ていました。私は地面に降りて、皆様の方を向き、ナラ様と一緒に深く礼をします。
「ご家族の方々には前もって言ってあるが、ナラフォンス殿とアデリア嬢殿、君達は、此度の魔女裁判で死刑となった。…………夢の中でね。」
「ーーーーっ‼︎ 夢の中ですか⁉︎」
「そうよ、アリー。マーズ殿下が投げられた青い煙幕の中に、私達が死刑にかけられた夢が封じ込められていてね、煙に当たった人達はその夢を現実だと錯覚するらしいの。」
「ナラフォンス殿の言う通りだ。……これで、お二人は公式上死刑によって死亡したと処理されるであろう。」
「マーズ殿下、私とアリーを助けてくださって、本当にありがとうございます。(深く礼)」
「マーズ殿下、ありがとうございます!(深く礼)」
「いやいや、私は自分の為にしたことだからね。君達には、大いに期待しているよ。それより二人とも、……もっと礼を言わなければいけない相手がいるのではないかい?」
「ーーナラフォンス。」
「お父様ーー。」
ルシエル公爵様が、ナラ様を呼ばれます。
「ナラフォンス、お前はもう自由だ。これからは男として、自分の心を貫きなさい。」
「はい、お父様。……今まで、育ててくださってありがとうございました。時間がかかったとしても、必ず会いに来ますから、そのときまで長生きしてください。」
「……早く孫の顔を見せに来いよ。(ウインク)」
「ーーーーっ! はい、お父様‼︎」
「ナラフォンス、……実家のことはいいから、身体に気をつけて、アデリアちゃんと仲良く生きていくのよ‼︎」
「お母様っ! お母様もお元気で。今まで私を育ててくださって、本当にありがとうございました!」
ルシエル公爵ご夫妻様とナラ様の感動のお別れを涙ながらに見守っていますと、私の兄弟達がワラワラと私に群がってきました。
「「「お姉様ー、お元気でーー!」」」
「みんな、ありがとう! 必ず会いに来るからね‼︎(涙)」
「アデリア、しっかりやるのよ‼︎(ガッツポーズ)」
「はいっ! お母様‼︎」
「アデリア、ナラフォンス様と仲良くな。(微笑み)」
「お父様っ! ……えへへ、頑張ります‼︎(にこっ)」
「ーー一通り挨拶は終わったみたいだな。」
「はい、マーズ殿下、いつでも大丈夫です。(キリッ)」
「では、二人とも、行こう!」
「「はいっ‼︎」」
私は、ナラ様から差し出された左手を強く握りしめて、これからの出会いに胸を高鳴らせるのでした。
ーーとある国で悪役令嬢と呼ばれた女性とその侍女は、其々の家族へ別れを告げ、新しい世界に一歩踏み出す‼︎ーー
「……アリー、起きて。起きないと人前でキスするよ。」
「ナラ様おはようございます‼︎」
皆様こんにちは! 宮殿内の裏庭にて何故かナラ様にお姫様抱っこされているアデリア・リッツです! ナラ様の真横には、怪盗プリンスの格好のままのマーズ殿下が不思議なポーズをとられていらっしゃるのですが、……見なかったことに致しましょう。……と、とりあえずナラ様から降りなければ! 私は力を振り絞ってジタバタと手足を動かしました。
「アリー、大人しくしないと本当に口塞ぐよ。(ジト目)」
「ひゃ、ひゃい‼︎(泣)」
「ハッハッハッ、アデリア嬢も目を覚ましたし、リッツ子爵邸へ戻るとするか!(変なポーズをとりながら)」
「……あの、すみません、マーズ殿下、……結局、私達は生きているのですか?」
私がマーズ殿下に尋ねると、目の前のお二人は、キョトンとしたお顔をされて、その後すぐに爆笑なされたのです!
「………あはは、アリー、それに関しては、リッツ子爵邸へ戻ってからね。(ウインク)」
「そうだな。誰かに見られると流石に騙しきれないから、先にここを発つことにするか。ナラフォンス殿、お手を。」
「ええ、お願いします。」
ナラ様はマーズ殿下の手を取りながら私に言いました。
「アリー、転送してもらうから私に強く掴まりなさい。」
「はい、ナラ様!」
「じゃあ行くぞ、……転送!(パアアー)」
マーズ殿下の魔法(?)によって、私達は青い光の中へ吸い込まれていったのでした。
◇ ◇ ◇
バンッ‼︎
リッツ子爵家屋内の小さな広間に、無事到着しました。
「アリー、ケガはない?」
「はい、大丈夫です。ナラ様はお怪我されていませんか?」
「私も大丈夫よ……。(微笑み)」
「ーーナラフォンス殿、アデリア嬢殿、ーーーーご家族達との、最後のお別れだ。」
室内を見回すと、ルシエル公爵ご夫妻様とリッツ子爵家一同が、揃って私達を見ていました。私は地面に降りて、皆様の方を向き、ナラ様と一緒に深く礼をします。
「ご家族の方々には前もって言ってあるが、ナラフォンス殿とアデリア嬢殿、君達は、此度の魔女裁判で死刑となった。…………夢の中でね。」
「ーーーーっ‼︎ 夢の中ですか⁉︎」
「そうよ、アリー。マーズ殿下が投げられた青い煙幕の中に、私達が死刑にかけられた夢が封じ込められていてね、煙に当たった人達はその夢を現実だと錯覚するらしいの。」
「ナラフォンス殿の言う通りだ。……これで、お二人は公式上死刑によって死亡したと処理されるであろう。」
「マーズ殿下、私とアリーを助けてくださって、本当にありがとうございます。(深く礼)」
「マーズ殿下、ありがとうございます!(深く礼)」
「いやいや、私は自分の為にしたことだからね。君達には、大いに期待しているよ。それより二人とも、……もっと礼を言わなければいけない相手がいるのではないかい?」
「ーーナラフォンス。」
「お父様ーー。」
ルシエル公爵様が、ナラ様を呼ばれます。
「ナラフォンス、お前はもう自由だ。これからは男として、自分の心を貫きなさい。」
「はい、お父様。……今まで、育ててくださってありがとうございました。時間がかかったとしても、必ず会いに来ますから、そのときまで長生きしてください。」
「……早く孫の顔を見せに来いよ。(ウインク)」
「ーーーーっ! はい、お父様‼︎」
「ナラフォンス、……実家のことはいいから、身体に気をつけて、アデリアちゃんと仲良く生きていくのよ‼︎」
「お母様っ! お母様もお元気で。今まで私を育ててくださって、本当にありがとうございました!」
ルシエル公爵ご夫妻様とナラ様の感動のお別れを涙ながらに見守っていますと、私の兄弟達がワラワラと私に群がってきました。
「「「お姉様ー、お元気でーー!」」」
「みんな、ありがとう! 必ず会いに来るからね‼︎(涙)」
「アデリア、しっかりやるのよ‼︎(ガッツポーズ)」
「はいっ! お母様‼︎」
「アデリア、ナラフォンス様と仲良くな。(微笑み)」
「お父様っ! ……えへへ、頑張ります‼︎(にこっ)」
「ーー一通り挨拶は終わったみたいだな。」
「はい、マーズ殿下、いつでも大丈夫です。(キリッ)」
「では、二人とも、行こう!」
「「はいっ‼︎」」
私は、ナラ様から差し出された左手を強く握りしめて、これからの出会いに胸を高鳴らせるのでした。
ーーとある国で悪役令嬢と呼ばれた女性とその侍女は、其々の家族へ別れを告げ、新しい世界に一歩踏み出す‼︎ーー
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