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第壱譚

0001:少女が生きている⁉︎

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 ーートルネード王国軍演習場から少し離れた道にて。ーー


「……はあはあ、……もう少しよ。(息切れエリン)」

「…………医者に見せても、無駄だぞ。(ジト目少女)」

「ーーーーっ⁉︎(バッと背負っている少女の方を向く)」

あの男班長も言っていたではないか。(ジト目)」

「い、意識が戻ったの⁉︎(びっくり仰天エリン)」


 ーー少女はエリンからヒョイっと飛び降りた‼︎ーー


「……さっきは身代わりになってくれてかたじけない。」

「い、いえ……。(なんだか古い言い回しね……。)」

「そなたのこころざし、しかと受け取った。このご恩は、末代にかけて返すと誓うぞ。(キリッと)」

「は、はあ……。(ぽかーん)」

「私の名はだ。そなたの名はなんと言う?」

「えっと、……エリンよ!」

「エリンか。……良い名前だ。エリン殿、せっかくここまで運んでくれて有り難いのだが、私には、やらねばならぬことがある。ここでお別れだ。(暗い表情)」

「ま、待って! ……傷は大丈夫なの? あと、もうすぐ日が暮れるから、今から動き出すのは危険だわ! ……ここから少し歩いたところに私の実家があるから、今夜はそこで休んでいかない?」

「しかし、……いいのか?(上目遣いのナギ)」

「全然オッケーよ! 家が貧乏だから、すんごいおもてなしは、できないけどね!(ウインク)」

「……ありがとう、エリン殿。(うるうる)」

「さあ、行きましょう!(ナギの左手を取って)」

「ああ。(エリンの右手を力強く握り返すナギ)」


 ーー二人は、エリンの実家へと向かった‼︎ーー



 ◇  ◇  ◇



 ーーここは、エリン家の小さい応接間。ーー


「ナギちゃん、しっかり食べてね!(エリンママ)」

「……かたじけない。かたじけないぞ。(うるうる)」


 ーーナギは目の前にある『お肉が入っていなくて、ジャガイモがゴロゴロとしたシチュー』を黙々と食べている。ーー


「ごめんね。お金が無くて、お肉が買えないんだ。(ナギの向かいに座ってモグモグ食べているエリン)」

「案ずるな。……とても美味しいぞ。こんなにも美味しいご飯を食べたのは、生まれてこのかた、初めてだ。(涙を流しながらシチューを食べるナギ)」

「ナギちゃん、おかわり沢山あるから食べてね!」

御母堂ごぼどう様、ありがとうございます。(うるうる)」

「ナギちゃんは礼儀正しくて良い子ね!」

「ママ、私もおかわり!(皿を母親に手渡すエリン)」


 ーー応接間は、あたたかい笑顔で溢れた‼︎ーー



 ◇  ◇  ◇



 ーーここは、エリンの小さな小部屋。ーー


「ナギっち、痛くない?(ナギの患部を触るエリン)」

「くっ…………だ、大丈夫だ。(我慢するナギ)」

「いや、絶対痛いでしょ! よくここまで耐えたわね。(ナギの患部を手早く消毒し薬草を塗布後包帯を巻くエリン)」

「なんのこれしき……。(痛みに顔を歪めるナギ)」

「……よしっ、一応、応急手当ては終わったわ! だけど、治るのに時間がかかると思うから、しばらくここエリンの家で身体を休めないといけないわね。(救急箱の蓋を閉めるエリン)」

「ーーーーっ‼︎ ……エリン殿に迷惑かけてばかりで申し訳ないのだ。(しょんぼりするナギ)」

「いいの、いいの! 丁度私もお仕事辞めちゃって暇だから、ゆっくりしましょう!(ウインク)」

「……エリン殿、ありがとうなのだ。(うるうる)」

「気にしないで! それよりも、どうして軍の演習場にいたの? それに班長の見立てでは、ナギっちもしているはずなのに、身体自体は回復している。何故なのかしら?」

「それは、……長くなるのだが、いいか?」

「全然構わないわ!(ウインク)」

「相わかった。……実は、……私は、とある組織から命を狙われているのだ。(暗い表情のナギ)」

「ええええええ⁉︎(ナギっちが⁉︎)」

「ヤツらから逃れる為に、私と育ての親であるは、住む場所を転々として暮らしていた。そして一昨日頃、あのカルスト台地に着いたから、一カ月程、あそこ演習場で隠れることに決めたのだ。……トモカズはすぐさま軍に入隊して軍事演習に加わり、私は、トモカズの近くで身を潜めていた。」

「それで、今日の演習で……。」

「トモカズが、あの爆弾が落ちた付近にいた為、トモカズは被爆して死んだ。……私も、被爆して死ぬはずだった。」

「ナギっち……。(うるうる)」

「でも、死ねなかった。……私の身体は、普通の人とは違っておかしいのかもしれない。(しょんぼりナギ)」

「……おかしくなんてないわ! 奇跡なんだから!」

「エリン殿……。(うるうるナギ)」

「少なからず、私は、どのような理由であれ、ナギっちが生きてくれて、とても嬉しかったわ!」

「……エリン殿。(うるうるナギ)」

「……同僚が皆、あの爆弾でバタバタ亡くなっていったの。軍部上層部は、被害の報告を出しても何もしない。腕の立つ班長もお手上げ状態。……ほんと、先の見えない毎日だった。……でも、今、目の前に生存者がいる! これほど喜ばしいことは無いわ!(不意に涙が溢れるエリン)」

「…………。(うるうるナギ)」

「ここで会ったのも何かの縁よ。これからもよろしくね!」

「……何から何まで、かたじけない。(号泣ナギ)」

「えへへ! ……明日、何かしたいことはない?」

「……トモカズをきちんと埋葬してやりたい。一緒に来てくれないか?(不安げナギ)」

「お安い御用よ!(ウインクするエリン)」

「……それと、私の身体が、何かしらの研究に役立つかもしれん。あの男班長のところに、もう一度連れて行ってほしい。」

「わかった。ナギっち、ありがとね。(微笑みエリン)」

「私も、自分の身体について知りたいからな。(照)」

「……よーし、明日も忙しくなりそうだから、今日はもう、お風呂に入って早く寝ましょう‼︎」

「…………お風呂?(きょとん)」

「……まさか、お風呂に入ったことないの⁉︎(びっくり)」

「左様。身体を清めるのは、いつも冷たい川や湖だったからな。……屋根のある家に入るのも、今日が初めてだ。」

「…………‼︎(私がナギっちを守ってあげなくちゃ!)」

「やはり、私は世間知らずなのだろうか?(不安げ)」

「大丈夫よ、ナギっち! 私に任せて!」

「あ、ああ、かたじけないぞ。(困り眉ナギ)」


 ーーエリンはナギの人生に想いを馳せるのであった‼︎ーー
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