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第肆譚

0042:呪いの副作用

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【side ノア・フィックスド(みんなの先輩)】


 ーーここは、サネユキの執務室。ーー


「サネユキ、ジョナサン、いい加減離れないと、この部屋、木っ端微塵になっちゃうよ?(かなりお怒り魔王殿下)」

「「ーー‼︎(瞬時に距離を置くサネユキとジョナサン)」」


 みなさん、どうもお久しぶりです! みんなの先輩ノアだよー‼︎ ……現在、俺とパトリック殿下にマリア様、大巫女ミクル様、そして元お庭番のシグレさんは、ニホン帝国の隊長サネユキの執務室にお邪魔しているのですが……。


「まずサネユキ、……精神を操る呪いには、が必ずあるってことを知ったうえで、多用したよね?(やっぱり怒ってる殿下)」

「……。(バツが悪そうにコクンと頷くサネユキ)」


 お二人の間に緊迫した空気が流れてる。はて、副作用とはなんぞや? 俺は、珍しく隊長に対して怒っている殿下に聞いてみることにした。


「パトリック殿下、副作用ってなんですか?」

「……用量を越えると、廃人になるんだよ。(すんごくドスの効いてる殿下)」

「ーーーーっ⁉︎(ギョギョギョなノア)」


 ははははは廃人ですと⁉︎
 やばいやばい‼︎ 霊力恐ろしすぎるよー⁉︎(ガクブル)


「ミクル姉さんが声を荒げるのも当たり前だ‼︎ サネユキ、……ジョナサンが廃人になってもいいのか⁉︎(本気で二人を気にしてる殿下)」

「…………。(沈黙を貫くサネユキ)」

「黙ってないで答えろ、サネユキ‼︎」

「……がう、違うんです、パトリック殿下‼︎(うるうるな瞳で殿下に訴えかけつつサネユキに寄り添うジョナサン)」

「「「ーーーーっ⁉︎(どうした、ジョナサン⁉︎)」」」

「僕の、……僕のせいなんです‼︎」


 ええええええ⁉︎
 きゅきゅきゅきゅ急展開ってやつなのか⁉︎
 ……ジョナサンから隊長に抱きついていってるところを見せつけられた俺たちは、一定時間、ポカンと口を開きっぱなしになっていたのでした。


 ◇  ◇  ◇


「……それで一体どういうことなの、ジョナサン?(不意をつかれて毒気が抜けてしまった殿下)」

「……実は僕、……ここ宮殿にきてから、たくさんの女官の方々から目の敵にされて、数えきれない嫌がらせにあってたんです。(ポツリポツリと話し出すジョナサン)」

「ほう……。(マリア嬢を長時間お姫様抱っこしたまま聞いてる殿下)」

「まず、朝餉に生卵がついてなかったり、……昼餉にも生卵がついてなかったり、……さすがに夕餉にはついてるでしょって楽しみにしていたら、ついてなかったり……。酷くないですか⁉︎ 隊長の御膳には、ちゃんとついてるんですよ⁉︎ 時たま温泉卵のときもあって、それはそれで贅沢すぎる! ……コホン。……そういうわけなんですよ。(うるうるしつつドヤるジョナサン)」

「……何がそういうわけなんだよ?(全然意味が分からない殿下)」

「……コホン。ここに来て、隊長の優しさが身に染みたといいますか、……卵かけ御飯、温泉卵ごはん、……卵のお雑炊も良い、……いえ、毎日卵を分け与えてくれる隊長のことが、好きになりました。(涎を垂らしてるジョナサン)」

「いや、違うでしょ⁉︎ ジョナサンはただ単に卵かけ御飯が好きなだけで、サネユキのことなんてカモネギとしか思ってないように僕には見えるんだけど⁉︎(ものすっごい信じられないという目つきでジョナサンを責める殿下)」

「ちちちちがいますよ、パトリック殿下‼︎ 隊長のことをカモネギだなんて、おこがましすぎますよ‼︎(ぶわっと発汗してソワソワし出すジョナサン)」

「じゃあジョナサンは卵関係以外でサネユキのどこが好きなのさ?」

「…………。(かなりソワソワしてるジョナサン)」


 …………うん。ジョナサン、ちゃんと考えてから発言しようね。……生卵が好きなのはいいけれど、支離滅裂というか、……なんだろう。『卵が……!』とか言いつつ、隊長を守るように抱き締めて酔いしれるのは一旦やめようか。……殿下って結構、隊長とジョナサンのこと一目置いてるから、きちんと順序立てて説明すれば、良い理解者になってくれるはずだよ。(ちょっとおっかないけどね。)


「ほら、サネユキの好きなところさえ言えないじゃないか‼︎(ジョナサンを責め立てる殿下)」

「やめてくれ、二人とも‼︎ これ以上、私を取り合って争わないでくれ‼︎(二人の男から言い寄られている悲劇のヒロインばりに殿下とジョナサンとの間に割り込むサネユキ)」

「「「「「ーーーーっ⁉︎」」」」」


 ……ほえ? たたた隊長、どうしました? 
 あれっ? 俺の見間違いかな? 

 よく河原とかで決闘している青年二人の間に入って『私の為に争わないで‼︎(酔いしれてるうるうる)』って言ってるご令嬢に見えてしまったのは、俺の気のせいですよね? 

 辺りを見回すと、呆然な殿下に、複雑な表情の大巫女様と何故か号泣しているシグレさんを確認できた。あと、シュンリンさん?っていうお庭番の方が、『サネユキ様、素晴らしいです。(嬉し涙)』って横でつぶやいてるんだけど、何が素晴らしいのでしょう? ……ほんと、ここの空気のせいかな? カオスすぎて頭が狂いそうだよ‼︎(オリビアさん、助けてー‼︎)ちなみに、唯一の癒しマリア様は、殿下の腕の中でスピスピ体力温存中だ。……助かる。精神的に助かりますよ、マリア様‼︎


「ジョナサンは、……少しシャイで、上手く喋れないだけなんだ。……卵かけ御飯よりも、私のことを好いてくれているのは、言われなくても感じている‼︎(ドヤドヤサネユキ)」

「ーーーーっ⁉︎(絶句な殿下)」

「隊長ーー。(うるうる甘々ジョナサン)」

「それに、……呪いをかけたのも、ジョナサンからアツくお願いされたからだ。(さりげなくジョナサンを腕の中に閉じ込めるサネユキ)」

「そそそそうなの、ジョナサン?(驚き殿下)」

「……はい。……僕、天邪鬼あまのじゃくといいますか、素直じゃないのは自分で自覚してるんで、……いつも、隊長に対してそっけない態度とってますけど、本当は……。」

「言わなくていいよ、ジョナサン。(ジョナサンを固く抱くサネユキ)」

「……たいちょう~~‼︎(鼻水ズピズピ号泣ジョナサン)」

「……うん、なんか、もういいや。(諦めた殿下)」


 殿下、諦めないでくださいよ‼︎ ちょっとこの二人、いつもと全然違うと言いますか、……呪いの影響かもしれないので、もっと調べた方がいい気がします‼︎


「(ジョナサンとイチャイチャしつつ)すまない、パトリック。……パトリックのことも大切だが、……妻として共に歩みたいのは、ジョナサンだけなのだ。諦めてくれ。(謎の酔いしれた表情のサネユキ)」

「ごめんなさい、パトリック殿下。……でも、道なき道とわかっていても、隊長とは離れられないんです。……パトリック殿下から隊長を取り上げちゃって、テヘペロです!(ムードに流されて斜め上をゆくジョナサン)」

「……疲れた。……もういい。好きにしてくれ。(かなりのおつかれな様子の殿下)」

「……解せぬ。……なにかがおかしい。(すんごくモヤモヤしてる大巫女)」

「パトリック、……生憎、私は、叔父上ニホンの帝が帰国しない限り、ここから出れそうにない。……本当に申し訳ない。(しょんぼりサネユキ)」

「ああ、大丈夫。……サネユキの叔父ちゃん、強制的に連れてくるから。(にこにこ魔王殿下)」

「「ーーーーっ⁉︎(驚きサネユキとジョナサン)」」

「どんな理由であれ、スピカの大事な戦闘員を閉じ込める輩には、容赦しないからね。」

「……二人をここへ転送したのは殿下だったと思うんですけど。(さりげなく呟くノア)」

「うん、どうした、ノア? 僕の呪い、受けてみる?」

「いえ、いいです。(汗だくノア)」


 危ない危ない‼︎ 聞こえてた‼︎ ……結構パトリック殿下って、地獄耳だから、気をつけておかないと、冗談抜きでジョナサンと同じようになっちゃうよーー‼︎


「あっ、それとサネユキ、……一つだけアドバイスしたいんだけど、いいかな?(にっこり魔王殿下)」

「ああ、どうした?(きょとんサネユキ)」

「メンヘラは中途半端だ‼︎ やるならヤンデレを目指すべし‼︎(普通の道から外れるアドバイスを真顔でする殿下)」

「ーーーーっ⁉︎ ……ぐぬう、……確かに、そうかもしれん。(謎の『負けた……。』みたいな顔をするサネユキ)」

「ジョナサンに嫉妬されて喜んでいるようじゃまだまだだよ‼︎ 僕なんかな、最近やっと、マリア様のに成功したんだ‼︎ ふっふっふ、……あーっはっはっはっはっはー‼︎(ドヤ顔殿下)」

「すぴー、すぴー、……むにゃむにゃ。(幸せそう)」

「…………負けた。(しゅんとするサネユキ)」

「もう、隊長、……隊長には僕がいるんですから、腹黒殿下にちょっと言われたくらいでしょげないでくださいよー。(サネユキの頭を撫で撫でするジョナサン)」

「……ううっ、……じょなさんー‼︎(超甘えるサネユキ)」

「よしよし……。(サネユキを甘やかすジョナサン)」

「……ジョナサンが手に取る卵全部ゆで卵(しかも硬め!)になるような呪いかけようかな。(腹黒と呼ばれてかなりご機嫌ななめな殿下)」

「地味に嫌なヤツ!(小声でツッコむノア)」

「……サネユキ、いつになるのかはまだわからないけど、必ず叔父ちゃんを連行させるから、どうにか二人で乗り越えてね。」

「ああ! 二人で待ってるぞ‼︎(元気になったサネユキ)」

「……よし、ミクル姉さん、に行こうか。」

「……そうだな。……くううっ‼︎(なんか悔しい大巫女)」

「(小箱を取り出して)指定人物魔法転送ーー。」


 殿下の呪文とともに、橙色の光が、俺たちを包み込む。


「みんなー、元気でねー‼︎(手を振るジョナサン)」

「お婆様にもよろしくな‼︎(すんごく嬉しげサネユキ)」


 未来のことなんて、俺には一切わからないけれど、でも、この二人には、また会えるような気がした。


 ーーパトリック殿下御一行、巫女寮へと突き進む‼︎ーー
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