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第肆譚

0033:月の砂と昔話

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 ーーここは、フィックスド家の会議室。ーー


「……ミクル姉さん、このについて知ってるんですか?(大汗殿下)」

「うん? ああ、見たところだろう? それも、されたな。(超余裕綽々なサネユキ姉)」

「そうですが、……これを飲むとどうなるんですか?」

「命に別状は無いが、は完全に無くなるはずだぞ。」

「「「「ーーーーっ⁉︎(なんだって⁉︎)」」」」

「……お前たち、その物質について何も知らないのか?」

「……ええ。トルネード王国に導入された新型爆弾の主な成分であることと、月から持ち込まれたということ、ままでは全てを汚すということしか、僕達は知っていません。」

「なるほど。それでお前たちは、爆弾の被曝を軽減するために、月の砂を魔法分解して爆心地付近に散布したのか。」

「……ご存知でしたか。(大汗殿下)」

「当たり前だ。……トルネード王国は、私にとっての叔母であるを殺した国。うちニホン帝国の諜報員を舐めてかかると大火傷するぞ。」

「……その大巫女って僕の母も入っていますよね?」

「そうだ。……すんごく般若みたいな叔母だったが、いろいろお世話になっているのだよ、パトリック。……まあ、叔母に関しては後で詳しく話してやろう。それよりも月の砂についてだ。……爆弾に対する処置は、大方正解だろう。」

「ーーーーっ‼︎ そうですか。(ほっとする殿下)」

「一応、爆心地付近を通って霊視したが、初めてにしては、まあまあな出来だな。良い感じに中和されてたから、付近の生物や人体への影響は少ないだろう。ただし、白い方の残渣物が多少残ってはいたから、幽霊なり妖怪なりが共鳴強大化してそれなりに暴れるかもしれん。……だが、あれくらいの規模ならば、簡単に処置できるはずだ。」

「……現役大巫女のミクル姉さんにお墨付きをもらえて、一安心ですね。(なかなかやりづらい殿下)」

「月の砂、それも、魔法分解された砂を散布するだけなら問題はない。しかし人体に入ると色々と厄介だ。ちなみにここにいる全員の体内には、もれなく月の砂が入っているな?」

「「「「ーーーーっ⁉︎」」」」

「細かい砂は空気中に漂い、知らないうちに人体へ入る。微量ならば、問題無い。それこそ月の砂よりも有害な物質を、私たちは絶えず吸い込んでいるからな。……しかし、そこに置かれてる濃縮された錠剤を飲むとなれば、話は別だ。月の砂の副作用が顕著に出る。『が空っぽになって、無我の境地と化す。即ち、痛み、苦しみ、悲しみ、喜び……全ての感情を無くし、簡単には死ねない。』……冗談抜きで生きたしかばねだ。それは、あまりにマズイだろう?」

「はい。月の砂にそんな作用があったなんて……。(顔を真っ青にする殿下)」

「知らないのも当然だ。……大昔、アデルとトルネードが建国される前にあった大国が用いてきた『月の砂』を、あるときから、全世界で使用禁止にし、尚且つ、その存在をも葬り去った。……もう二度と、が起こらないようにするためにな。」

「「「「ーーーーっ⁉︎(世界大戦だって⁉︎)」」」」

「ミクル姉さん、……世界大戦ってなんですか?」

「……そうだな。無理もない。世界大戦については、各国の王族や、宰相クラスの貴族しか知らないもんな。……一度、全世界の全ての人間の記憶はされたから。……手短かに言おう。各国の重要一族の間で脈々と伝承されているの昔話では、『月の砂』を使用して、機械人間の軍隊を作ったが、とされている。」

「「「「ーーーーっ⁉︎」」」」

「これは、あくまでの話だがな。世の中は、本音と建前で出来ているもの。パトリック、があれば、もあるのだよ。(すんごく悪い笑みを浮かべるサネユキ姉)」

「ミクル姉さん、……何故それを、僕達に?」

「ふふふ。……側は、かなり用意周到だ。全てを見越して布石を置いている。……今、言っておかないと、大変なことになるからな。(謎の余裕顔のサネユキ姉)」

「……そうですか。(大汗で調子が狂ってる殿下)」

「とりあえずパトリック、……その錠剤は飲むな。わかったな?(めっちゃ圧のすごいサネユキ姉)」

「わかりました。……あの、ミクル姉さん、……実は、僕のお仕事を手伝ってくれているさんに、銀色の粉を練り込んだパンを食べてもらったんですが、大丈夫ですかね?(すんごく不安な殿下)」

「うん? ああ、死神ってことは、だけの一族の末裔だろう。それなら、大丈夫だ。死神の一族は、霊界に住むのが基本だからな。……霊界は、月の砂と同じ成分で出来ている。それなりの耐性はあるはずだぞ。」

「……そうですか。(めちゃくちゃ安心する殿下)」

「ふふふ。……よその心配より、自分の心配をした方がいいのではないか、パトリック?(悪い笑みなサネユキ姉)」

「……僕は、マリア様が元気で楽しく生きてくれたら、あとは何も要りませんから。(でも、僕以外の輩と仲良くしたら、地獄の沙汰まで追いかけて閉じ込めてやるう‼︎)」

「パトリックさま……。(何故でしょう。とてもお優しいお言葉に温かみのある雰囲気なのに、悪寒が止まりませんわ。 ガクブルマリア嬢)」

「そうか、そうか! やはり、血の繋がった親子というものは、似るものだな‼︎ 叔母も天国で喜んでいると思うぞ‼︎」

「……はあ。(正直、母のこと覚えてないんだよな。)」

「そんな叔母から預かっている物がある。……パトリック、先日シグレへ運ばせたは、ちゃんと保管しているか?」

「はい。ここフィックスド家の金庫に入れてもらっていますが……。」

「今すぐ出してくれ。」

「……ノア。(チラリとノアにアイコンタクト殿下)」

「……了解です。(ささっと退出するノア)」

「ミクル姉さん、……あの鈴って、ではないですよね?(やや青ざめてる殿下)」

「ふふふ。……出してからのお楽しみだ。(ものすごく悪い笑みを浮かべるサネユキ姉)」

「…………。(調子狂うなー。 ソワソワ殿下)」

「……ジョナサン、……行かないで、……くれ。……愛して、……いる。……姉上は、……危険だ……。(謎の悪夢にうなされてるサネユキ)」

「ありゃりゃ、隊長、なんだかとても苦しそうですねー。(きょとんなジョナサン)」

「すまんな、ジョナサン。うちの弟が不甲斐なくて。」

「いえいえ姐御、隊長って結構しぶといですからね! よくわかりませんけど、目覚めたらコロっと元気になりますよ‼︎(なんとかなる精神のジョナサン)」

「ふふふ。……ジョナサンが嫁に来てくれて大助かりだからな。……弟には勿体無い逸材だ。」

「そんな、……褒めても何も出てきませんよ、姐御‼︎ の為、僕はニホンに骨を埋める覚悟ですからね!」

「ふふふ、威勢がよいな。(優しい微笑みなサネユキ姉)」

「…………?(眉間に皺を寄せる殿下)」

「行くなー‼︎ ジョナサン、戻って来いー‼︎(かなり悪夢にうなされてるサネユキ)」

「……隊長、珍しいくらいに寝言が大きいですね。……ほら、大丈夫ですよ。……よしよし。(きょとん顔でサネユキの頭をナデナデするジョナサン)」

「……良い嫁だ。(何故か感激してるサネユキ姉)」

「…………いや、どこが?(コソッとツッコミ殿下)」


 ーー大巫女ミクルの有難いお話はまだまだ続く‼︎ーー



【おまけ】


 ーーここは、霊界空港の待合室。ーー

「エドー‼︎ 酒が足らないわよー! もっと持ってきなーー‼︎(超絶酔っ払いな)」

「おう。(巫女って、お酒禁止じゃないのか? いろいろと不満に思いながらも素直にお酒を取りに行くロック公爵)」

 ーーロック公爵は遠く離れた酒置場へ歩いて行った。ーー

「お姉様、やっとミクルちゃんが到着したみたいですわね。(今風じょうはりの鏡を般若巫女に見せる般若巫女の妹)」

「……マーニー第三王妃もとりあえず救出できたし、ミクルっちも合流したし、……私たちの仕事もここまでのようね。(さっきとは、一変して真顔の般若巫女)」

「……本来なら、私たちが成さねばならないことを……。」

「パトリック達に背負わせてしまわないといけない。……親として、不甲斐ないわね。」

「お姉様……。」

「でも、……何があっても、パトリックなら大丈夫よ。……だって、パトリックにはマリアちゃんがついているからね‼︎(優しい微笑みの般若巫女)」

「ええ、そうですわね。(つられて微笑む妹)」

「一時はどうなるかと思ったけど、さすが私の息子‼︎ 強引にマリアちゃんを奪ったんだから、かなり上出来よ‼︎」

「……そうですわね。(お二人に似て怖すぎですわ。)」

「それより、マーズトルネード王国第一王子の未来が心配だわ。」

「…………ほほほ、誰に似たのでしょうね。(大汗妹)」

の大切なマーキュリーちゃんをあんな風にして、……戦争になったりしないわよね?」

「…………ほほほほほほ。(なんとも言えないですわ。)」

「おーーい、酒、持ってきたぞーー‼︎(ひょこっと公爵)」

「よっしゃ、みんなー! 飲み直すぞーー‼︎(シュパパっと酔っ払いに戻る般若巫女)」

「「「「おうよーーー‼︎」」」」

「…………。(……おれも飲みたい。 しょんぼり公爵)」


 ーー霊界の飲み会はまだまだ続く‼︎ーー
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