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第弐譚

0019:月と見えざる者たち

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 ーー『スピカ』が解散して六日目の朝方。ーー


「わふわふ!(パトリック様、朝ですよ‼︎)」

「うーーん、あと一刻だけーー。(涎を垂らして布団に潜り込むだらしない殿下)」


 ーーマリア嬢はパトリック殿下の布団を剥ぎ取った‼︎ーー


「いーやー! さむいーー!(ゴロゴロ転がる殿下)」

「わふう、わふ!(もう朝ご飯は出来ていますのよ! 早く顔洗って着替えてくださいまし‼︎)」


 ーー二人の攻防戦は暫く続いた‼︎ーー


「(マリア嬢に負けて、もそもそと上体を起こす殿下)……ふあーーあーー。……マリア様、おはよう‼︎」

「わっふう!(おはようございます!)」

「今日の朝ご飯は何かな?(足をバタバタさせる殿下)」

「わっふわっふ!(乾パンとあったかいスープですわ‼︎)」

「了解! いつもありがとう、マリア様。」

「わふうわわふわふ!(当たり前のことですからね‼︎)」

「ううん、全然当たり前なんかじゃないよ。本当に感謝してる。(嬉しすぎて溶けてる殿下)」

「わっふわっふ‼︎(か、感謝してくださるのであるならば、早く支度をしてくださいまし! 赤面マリア嬢)」


 ーーマリア嬢は、殿下の着替え一式を取り出した‼︎ーー


「(殿下の膝に着替え一式をベチっと置いて)わっふうう!(食堂で待っていますからね!)」


 パタパタ、パタパタパタ


 ーーマリア嬢は、食堂へと向かった‼︎ーー


「……ふふふ、……マリア様のお母さん化に成功したぞ!(謎にほくそ笑み、パジャマのボタンに手をかける殿下)」



 ◇  ◇  ◇



 ーーここは、元スピカの食堂。ーー


「……マリア様の作ったスープ、うまーーい‼︎」

「わっふわっふ‼︎(ほ、褒めても何も出ませんからね!)」


 ーーマリア嬢は、追加のスープを差し出した‼︎ーー


「わっふう!(食べれる時に食べておきましょう‼︎)」

「(小声で)……マリアお母さん。(嬉し涙殿下)」

「わ、わふ⁉︎(わ、私はパトリック様のお母様ではありませんよ⁉︎ 赤面マリア嬢)」

「えへへ、……幸せだなー。(スープを掬う殿下)」

「……わふ。(熱いですから気をつけてくださいね。)」


 ーーと、そこへ、サネユキがやって来た‼︎ーー


「おお、いたいた。二人共、おはよう‼︎(超元気)」

「わっふふう!(実雪サネユキ様、おはようございます‼︎)」

「おはよう、サネユキ。どうしたの?(きょとん殿下)」

「『どうしたの?』ではないだろう! 明日は運命の日! 私も、現場に立ち会う為に、から舞い戻って来たのだ。(殿下の隣の椅子に腰掛けるサネユキ)」


 ーーマリア嬢は、サネユキにお茶を出した‼︎ーー


「わふふう‼︎(実雪様、とりあえずお茶どうぞ!)」

「ありがとう、マリア嬢。(お茶をすすって)パトリック、『盆踊り』って知ってるか?(神妙顔のサネユキ)」

「盆踊り?(スープを啜る殿下)」

「いや、なんでもない。大したことではないんだ。ただ、久々にジョナサンと再会したら、何故か奇声をあげて姉上と一緒に踊りまくっててな……。私も何故か、盆踊りとやらに参加させられて三日間筋肉痛だ。」

「ほへーー。(サネユキの姉ちゃん、やってるなー。)」

「わっふふう!(実雪様も乾パンとスープ、どうぞ!)」

「マリア嬢、何から何までありがとう。……いただきます。(ご飯に手を合わせるサネユキ)」


 ーー三人は、黙々と朝食を食べた‼︎ーー


「マリア様、ご馳走様でした‼︎」

「マリア嬢、とても美味しかった。ご馳走様。」

「わふわふ!(いえいえ、どういたしまして‼︎)」


 ーーマリア嬢は、食べ終わったお皿をシュパパっと抱えて、調理場へ下げに行った‼︎ーー


「……それで、久々のはどうだったの?」

「……相変わらずだな。いつでも使ように、準備だけはしてきたぞ。……それよりも、踊り狂うジョナサンの姿が頭から離れなくてかなり困っている。(困り眉サネユキ)」

「あのジョナサンがねー。……まあ、単細胞だから、されやすいのかなー?」

「……あのまま残して来てよかったのか、今でもわからない。ジョナサンが、姉上に上手いこと飼い慣らされてて、私はすごく悔しいぞ!(目に涙を滲ませるサネユキ)」

「……まあまあ、近いうちに帰れるはずだからさ、気を取り直して今日はお仕事をしようか!」

「……お仕事?(嫌な予感がするサネユキ)」

「…………えへへ‼︎(満面の笑みな殿下)」



 ◇  ◇  ◇



 ーーここは、マリア嬢と殿下が初めて会った場所。ーー


「マリア様、準備はいいかい?」

「わっふふう!(オッケーですわ!)」

「えっ、パトリック、これは……。(青ざめるサネユキ)」

だよ!(巨大な網をブンブン振り回す殿下)」

「わっふふう!(パトリック様、一匹捕まえましたわ!)」

「でかした、マリア様‼︎(マリア嬢に駆け寄る殿下)」


 ーー殿下は、マリア嬢が捕まえた妖怪を受け取るとすぐに、特殊な籠の中へ収めた‼︎ーー


「さすがマリア様、僕よりも上手くなってるね‼︎」

「わ、わふふう!(ま、まぐれですのよ!)」

「…………。(えええ、マリア嬢は素手で妖怪を捕まえられるのか⁉︎ 驚愕サネユキ)」

「引き続きよろしくね!」

「わっふふう!(任してくださいまし!)」


 ーーマリア嬢は、妖怪ハントに集中した‼︎ーー


「……パトリック、……何故、マリア嬢に妖怪が視えるのだ?(確か、霊力を教えていなかったはずだが。)」

「うん? ああ、僕のを、一時的に付与しているからね。びっくりしたでしょ?」

「かなり驚いたぞ。それに、今まで放置していた妖怪達を捕まえてどうするつもりなのだ?」

「……エドワード・ロックからの助言なんだ。」

「なに?(あの使のか?)」

「うん。……エドワード・ロック曰く、月の技術ってさ、と共鳴してしまうらしいんだ。新型爆弾の材料からして、幽霊さんや妖怪さんとの親和性が強いんじゃないかと考えられる。爆弾が投下されて幽霊さんや妖怪さん達に悪い影響が出たら、そっちの処理もしないといけなくなるじゃない? だから、スピカが解散してからずっと、浮遊している幽霊さんは除霊して、この森に住む妖怪さんには、安全な場所に避難してもらってたんだ。……正直な話、なんでわざわざアデルとの間に爆弾を投下するのか、疑問に思ってたんだけど、ここってさ、『百鬼夜行』の大通りでしょ? その大通りを狙って落とすのなら、奴らの考えてることに色々と辻褄が合うんだけど、サネユキはどう思う?」

「月か。昔話で聞いたことがあるな。『満月の出る日には、要注意。と皆狂う』ってな。(生真面目顔)」

「明日って、……丁度、満月だね。(冷や汗殿下)」

「私も手伝おう。どうすればいい?」

「サネユキには浮遊霊の除霊をやってもらっていいかな? 百鬼夜行の常連はもう安全な場所に移し終えたから、残りの小さな妖怪さん達を、僕とマリア様で捕獲する!」

「了解。洗い清めるぞ‼︎」

「よろしく! マリア様、僕達も急ごう‼︎」

「わっふふう!(ラジャー、なのですわ‼︎)」


 ーー新型爆弾投下まであと一日‼︎ーー
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