断罪裁判は蜜の味

星 佑紀

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第弐譚

0006:わくドキ結納儀式‼︎ 承

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「国王陛下、此度のロバート殿下によるヘレン家一族に対する無礼な発言に、リノン男爵令嬢の儀式妨害、……私も堪忍袋の緒が切れました。ベル殿下と私の娘の結納儀式は、一旦、見合わせていただきたい。」



 皆様、こんにちは。父であるヘレン公爵の言葉を左横で聞いて、ひとりびっくりしているリリアナ・ヘレンですわ。



「……それに、私は自分の娘を嫁に出すつもりは、はじめからなかったのです。元々、婿養子として第二王子であるロバート殿下を希望していましたのに、何故、王位継承者のベル殿下といつの間にか婚約していることになっているのですか⁉ おかしいでしょう? ヘレン家の跡継ぎは、リリアナしかいないのです‼ 陛下、なんとか仰ってください!」



 私のお父様は、すっごく家族思いで、とてもアツい人なのでした。



「ヘレン公爵、……わしも内心不思議に思っているところなのだがな、……ベルからリリアナ嬢たっての願いと聞いておる。勿論、ベルは前々からリリアナ嬢との結婚を希望していたのだがな。……ヘレン公爵、お主も恋愛結婚であったではないか。駆け落ち同然でヘレン公爵夫人と一緒になったはずだぞ。そのときに、お主らの味方になって先代に掛け合ったことをわしはずっと覚えておる。……ここは、わしらの意見よりも若い二人の意見を聞いてはどうだろうか?」



 父と国王陛下の問答を聞きまして、私は口をあんぐりと開けてしまいました。……目の前の席に座られているベル殿下に目を向けますと、魔王様のように、にっこりと微笑んでいらっしゃいます。ベル殿下からの無言の圧力が強すぎて、ガクブルと身震いしてしまいましたわ。



「……わかりました、国王陛下。リリアナの気持ちを聞いてみましょう。……リリアナ、お前の意見を言ってみなさい。ベル殿下のことを愛しているのか?」



 お父様、質問が直球すぎて逆に言いにくいですわ‼ 瞬間湯沸かし器のように顔が真っ赤になってしまったではないですか‼ 

 ……私は、自分の恋愛に関しては、まだよくわからないのです。ベル殿下のことも、大好きなお兄様という気持ちで接していますので、これが恋で愛なのかは断言できません。


 ――ベル殿下には申し訳ないのですが、今の気持ちを正直に言いましょう。もし今回、結納が見合わせになったとしても、以前より行きたかった外国へ遊学するという道もありますからね。


 私はそう決心して、口を開こうとした瞬間、ベル殿下が、目の前でにこにこしながらクリンゲル・ホームズ先生原作のミュージカルチケットをヒラヒラさせているではありませんか‼

 ――――っ! 忘れていましたわ。本日、結納儀式を終わらせることができなければ、せっかくマーキュリー殿下が工面してくださったミュージカルを諦めなければならないのです! どうにかして、お父様を説得しなければ‼



「お父様、私は日頃より、ベル殿下のことをお慕いしております。結納儀式も早く終わらせたいです!」


「なにっ⁉ そ、そんなにベル殿下のことを愛しているのか‼」


「はい、愛しておりますわ‼」


「……………………、分かった。二人の結婚を認めよう。(涙)」


「ありがとうございます、お父様!」



 これでミュージカルを観に行くことができますわ‼(嬉)



「……リリアナ、そんなに私のことを想ってくれていたんだね。とても嬉しいよ。……私も、リリアナのことを世界で一番愛している。(にっこり)」



 両家から生暖かい拍手が沸き起こり、私は今更ながらですが、はたと気が付きました。


 ――これって、いわゆる『公開告白』ではなくて⁉


 そう思ったとたん、なんだかとても恥ずかしくなりまして、元々赤かった顔が、茹蛸のようにもっと真っ赤っかになってしまいましたわ! チラッとベル殿下を見てみますと、にっこり微笑みながらこちらをじっとりと観察されていらっしゃるではありませんか!


 ベル殿下にしてやられましたわ‼(赤面)



「それではこれより、二人の結納儀式をはじめる――――。」



 ――結納儀式中、ヘレン公爵令嬢は真っ赤な顔で床を見続け、ベル殿下は赤面を必死に隠そうとしているヘレン公爵令嬢を舐めまわすように凝視し続けるのであった。――
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