上 下
20 / 45
とある暴走族のリーダー、就職する‼︎

0014:新たな門出

しおりを挟む
 ──ここは、フィックスド辺境伯領とフローレンス辺境伯領との境界沿いに位置する山の入り口付近。──

 ──そこでは、五十人強の若い青年達と、一人の中年男性が、見るも無惨な、真っ二つになっていく地雷をボケーっと眺めていた。 そしてとある女性が、奇声を発しながら、傷一つ付いていない地雷達を手刀一つで破壊している。──

「キエエエエエ‼︎ ソワッシャー‼︎ テキシェエエエエ‼︎(ギラギラと目を光らせながら、地雷を割っていく女性)」

「先輩、……すごいです。(感無量なノア)」

「……お嬢さんは、この技をどこで体得したのかな? 普通に考えておかしいよね、サネユキ?(ややドン引き殿下)」

「そうだな。女性でも男の力を凌駕する程の体術を学べる場所か、…………これは、昔、伯父上から聞いた話だが、トルネード王国の何処かに、を育てる一族がいるらしい。その一族は男女関係無く、最強の接近体術を代々継承しているそうだが、普段はコソコソ隠れて暮らしているために、誰もその存在を知らないみたいだ。……都市伝説級の話だが、お嬢さんを見ていると、その一族の可能性も否めないかもしれないな。(まあ、あり得ない可能性の方が高いが。 半信半疑に思っているサムライ男)」

「暗殺者か……。なかなか血生臭い匂いがプンプンしてそうだね。(ちょっと気になる殿下)」

「調べてみるか?(調べたそうなサムライ男)」

「……安全第一でできるならね。(慎重殿下)」

「了解。では私は、警察さんを呼んで来るついでに、中枢図書館に行ってみる。(少し嬉しそうなサムライ男)」

「そうだね。……警察は、いつもの人でよろしく。」

「ああ! じゃあ、パトリック、後は頼んだぞ!(言うや否やドロンと消えるサムライ男)」

「…………差し入れもよろしくって、言付ければよかった。(少し後悔している殿下)」

「キエエエエエ‼︎ …………皆様、地雷の破壊が終わりましたわよ‼︎(良い汗を流した女性)」

 ──どうやら地雷の処理が終わったようである。──

「──っ‼︎ お嬢さん、ありがとう。あなたのおかげでトルネードを守ることができました!(女性に感謝感激殿下)」

「なんのこれしき。……亡くなった鹿さんのためにも、出来ることがあれば何でもしますわ。(真剣女性)」

「あっ、そのことなんですけど、……地雷を踏んでしまった鹿さん達の傷は、が処置したので、全員命に別状はありません。(ノア)」

「「────っ⁉︎(びっくり殿下と女性)」」

『クックックル。(ふん、若造にしてみれば容易い事だからの。 相変わらずノアの頭の上に乗ってる鳩)』

「ノノノア君、処置したって……。(ふるふる殿下)」

「えっと、……対象者によるのですけど、抱擁すると、何故だか傷が治ってしまうんですよね。……でもかなりの重体だと、もちろん助かりませんよ。今回の鹿さん達には、まだ呼吸が続いていたので、ギリギリ間に合っただけなので。(殿下達の反応に、戸惑うノア)」

「ペンさんは、素晴らしい能力をお持ちなのですね。(羨望の眼差しをノアに向ける女性)」

「い、いえいえ、……その代わり、喧嘩は苦手なので、いつも負けてばっかりです。(照れまくりなノア)」

「勝ち負けなんて、関係ありませんわ。……ペンさんは、素晴らしいお方です。(真っ直ぐな瞳の女性)」

「……ありがとうございます。……先輩にそう言われると、なんだか元気が湧いてきました!(涙が頬をつたうノア)」

「ふふふ、……そのいきですわよ!」

「……お二人さん、地雷の処理も終わったし、後は、おじちゃんを警察に突き出して、事後処理をするだけだから、みんなと一緒に、フローレンス領へ、向かってもいいからね。(きゅるるん殿下)」

「──っ! い、いいのですか、殿下⁉︎(ノア)」

「うん、……早く、ここから移動しないと、警察に止められて、今日中にフローレンス領に入れないかもしれないから、急いだ方がいいかもしれない。(優しい殿下)」

「「────っ‼︎(確かに‼︎ 納得ノアと女性)」」

「ペンさん……。(ノアを見つめる女性)」

「ええ、行きますか、先輩‼︎(応えるノア)」

「はい!(頷く女性)」

「……(山の入り口からトコトコやってきて)アニキ、みんなの準備は出来てます!(やる気満々な毟られキース)」

「おう!(青年達に向かって)みんな、先輩をフローレンス領まで無事に送り届けるぞ!(左腕を振り上げるノア)」

「「「ラジャーー‼︎(ノアに応える仲間達)」」」

「ラジャー、ですわよ。(さりげなく入ってる女性)」


 ──若者達は、目の前の山を越えることにした!──


 ◇  ◇  ◇


 ──ここは、フローレンス領側の、山口──

 ──山の中には、五十人ほどの若い青年達が自転車に乗ったまま、フローレンス領側の出口をしきりに見ている。──

「ペンさんと皆様、此度は、本当にありがとうございました。(山の入り口に向かって、ペコリとお辞儀する女性)」

「あっ、……先輩、……忘れ物ですよ。(自転車から素早く降りて女性へ近づき、とある小物を女性へ渡すノア)」

 ──ノアが女性に渡したものは、とあるペンギンの形をしたアップリケだった‼︎──

「──っ! 確かに忘れていましたわ!(慌てる女性)」

 ──と、女性はスカートのポケットから裁縫セットを取り出した。そして、ノアの左腕をガシッと掴み、ものの数分で特攻服の左袖へ、ペンギンのアップリケを縫いつける‼︎──

「少し前から、ペンさんの大切な特攻服の左袖が破れていましたから、ペンギンさんアップリケをつけようと思ってたのです。(にっこり女性)」

「あっ、ありがとうございます! 一生大事にしますから‼︎(嬉しすぎてオドオドしているノア)」

「ふふふ、喜んでいただけて私も嬉しいですわ。……ペンさん、短い間でしたが、ペンさんのおかげで、とても楽しかったです。……身体に気をつけて、お元気でいてくださいね。(少し目に涙が滲んでいる女性)」

「はい‼︎ 俺も、先輩と出逢えたことが、人生で一番の宝物です‼︎ ありがとうございました‼︎ ……その、一つだけ、お願いがあるのですが、いいですか?」

「……? ええ、なんでも仰ってくださいませ。」

「もし、……再会することがあるならば、……先輩の本当の名前を教えてほしいです。……だめでしょうか?」

「…………(にっこり笑って)私も、そう思っていました。……次回会う時は、ペンさんのお名前を教えてくださいませ。私も、名乗りますから。(うるうる女性)」

「……その日が、必ず、来ることを、待ってます。それでは、俺は、ここで……。(涙を女性に見られたくないから、クルッと踵を返して山の中へ入っていくノア)」

「……私も。(頬をつたう涙を拭うこともせず、ゆっくりとフローレンス領側に向いて、少しずつ歩んでいく女性)」

「…………。(静かに涙を流しながら、女性の後姿が見えなくなるまで、動かないで女性を見続けているノア)」

「……(青年達の方を向いて)みんな、先に戻るぞ。……アニキ、キャンプ場で待ってます。(ノアからの応答は待たずに、仲間達を引き連れて来た道を引き返すキース)」

「……。(先輩。どうかお元気で。……俺、先輩が、誰かの人妻になっても、一生、先輩だけを想い続けます‼︎)」

 ──新たな門出により、二つの星は別々の道を歩むことになるが、いつかまた、再会する日が来るかもしれない。──
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

運命の歯車が壊れるとき

和泉鷹央
恋愛
 戦争に行くから、君とは結婚できない。  恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。    他の投稿サイトでも掲載しております。

私、この人タイプです!!

key
恋愛
美醜逆転物です。 狼獣人ラナン×自分の容姿に自信のない子キィラ 完結しました。感想やリクエスト、誤字脱字の指摘お待ちしています。 ここのページまでたどり着いてくださりありがとうございます。読んで頂けたら嬉しいです!

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが

カレイ
恋愛
 天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。  両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。  でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。 「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」  そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。

悪役令嬢の父親に転生したので、妻と娘を溺愛します

yui
恋愛
転んだことで異世界の記憶を得た主人公には、妻と娘がいた。可愛すぎる二人にメロメロになり、二人を溺愛しようと誓う主人公だったが、ある時 ふと気付いた。娘が前世の乙女ゲームの悪役令嬢であることにーーーデッドエンドしかない彼女を前に主人公は「そんな破滅を娘にさせるものか!」と誓い、全力で二人を愛でながら過酷な運命を変えるために行動する。 これは悪役令嬢の父親に転生した主人公が妻と娘を溺愛する物語(ただの溺愛物語、だだ甘な予定です)。 ※なろうにて連載してたのを少しリメイクして書き直そうかと・・・お付き合いいただけると幸いですm(_ _)m

処理中です...