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第弐譚

0010:王子の初恋

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「ど、どういうことなのか、説明していただけないでしょうか?」



 皆様、どうも、トルネード王国第一王子マーズ殿下からの衝撃発言に脳震盪をおこしている灰かぶりです。


 ――父(?)が仮死状態⁉


 ……私が考えている以上に、事態は深刻なのかもしれません。私は、マーズ殿下に事のあらましを問いかけてみました。



「……そうだな。順を追って説明したほうがいいかもしれない。」


「殿下、差し出がましいようですが、……殿下の幼少期から話されたほうが、灰かぶり姫も頭に入りやすいと思いますよ。」


「ツクヨミさん?」


「たぶん、灰かぶり姫の頭の中では、マーズ殿下とお師匠様との繋がりがよくわからないと思いますので。そうでしょ、灰かぶり姫?」


「は、はい。正直、謎ですね。」


「……わかった。一番最初から話そう。」



 殿下は一つ頷いてぽつりぽつりと昔話を話してくださいました。



「――私は一時期、アデル皇国の人質だったんだ。」






 【回想 side マーズ殿下 始】



 幼少の頃、私はトルネード王国とアデル皇国との取り決めで、一時期『』というかたちでアデル皇国に滞在した。しかし、留学とは名ばかりで、その待遇はまさに人質であり、長い間離宮へと幽閉されていたのだ。

 周りにいた大人達曰く、アデル皇国から採掘される貴重なと引き換えに、私は売られたらしい。


 ――用意された離宮の独居房は薄ら寒く、とても暗かったことを今でも覚えている。


 ひとり、朝から晩まで独居房から出ることもなく、一日一日が過ぎていく。


 会う人も限られた関係者だけで、息の詰まる日々だった。


 ――私はこの狭い世界で衰弱して、いずれあの世へいくのだろう。


 幼いながら、私は、自身の将来の無さを憂いていた。




 ――しかし、ある日を境に、私の退屈な生活は一変する。




 いつもと同じように起床すると、アデル皇国のとある戦闘部隊が、独居房の外で熱くてを繰り広げていたのだ!



ですか?」


「そう、それが私とエドワードとの出会いだ。」



 シルバーブロンドを首元で短く切り揃えた赤目のが外で大の大人達を薙ぎ倒していたのだ‼


 ――私は一瞬で恋に落ちた。


 どうにかして彼女と話がしたくて、私は独居房から脱出しようと試みたが、子供の力故にそれはできなかった。


 毎日毎日、彼女のバトルを見る。

 手が届きそうな距離にいるのに、届かない、存在をあらわせない状況に気が狂いそうになった。



「……これは、本当に父(?)の話なのですか?(ツクヨミに対して小声で)」


「長いけど聞いたげて!(小声)」



 ――そして、ある日、衝撃的な出来事が起こったのだ!


 彼女が放った大火が離宮に延焼して、私は煙を吸ってしまい、意識朦朧の状態となって、死を悟った。とても苦しかったのを覚えている。




 ガシッ‼


「大丈夫か⁉」



 息絶える寸前、彼女が私の肩を掴んで助けようとしてくれていた。



「……わ、私と、け、結婚してください。」



 ――やっと、言えた。もう、死んでも悔いはない。


 私は、『安らかに天国へ行けるな。』と心なしか喜んでいた。



「……生きろ、ばか‼」



 しかし、彼女は私を放っておいてはくれなかった。小さい体で私を担ぎ、離宮の外へと連れ出してくれたのだ!


 ――彼女も私のことが好きなのだと、そのとき、子どもながらに感じたのであった。



「…………?」


「聞いたげて!(小声)」



 それから、彼女が男で、子持ちの既婚者で、魔法使いだということを知った。勿論、プロポーズしたけど断られたよ。



「エドワード、私と結婚してください!」


「俺は男で既婚者だ! 一人娘もいるんだ! ふざけるな‼」


「……じゃあ僕を弟子にしてください!」



 父(トルネード王国の国王)に見つかるまで、エドワードに弟子として、たくさんしばかれた。何度も何度もエドワードにはプロポーズしたんだがな、エドワードの答えはいつも同じだったよ。エドワードを追いかけている途中で、ツクヨミにも出会った。今は仲の良い兄弟弟子だが、当初はエドワードを取られるんじゃないかって、いつもひやひやしていたな。

 ――まあ、これが私とエドワードの甘いエピソードだ。



 【回想 side マーズ殿下 終】






 ……ツッコミどころが満載なのですが、殿下の仰っていることは本心なのだと思います。

 とても恍惚とした表情で、目をギラギラさせて語られていましたので。

 殿下をここまでさせる父(?)とは、一体、何者なのでしょうか? 私は無性に、父(?)に会ってみたくなりました。



「そして、ここからが先日のとある大事件の話だ。」



 キリッと目つきを変え、殿下は口を開きます。



「エドワードが危険な状態に瀕したのには、全て私に責任がある――。」



 ――窓のない部屋に一筋の風が吹く‼――
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