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第2章
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しおりを挟む夜の間振り続けた雪は、見事に積もった。
かまくらが崩れたらいけないからかまくら遊びは禁止したらしょぼんとしていた双子だけれど、雪だるまを教えたら楽しそうに作り始めた。
俺とエルヴィスさんは雪かき。
チェルロさんとラディカがいないから2人でやるのは時間がかかるけれど、エルヴィスさんが双子のそりに雪を山盛りにして裏に持って行ってくれるから早い。
そりは木製で重いうえに雪でさらに重くなっているのに、それを軽々と運んでいるエルヴィスさんはやっぱりすごい。
「ユーリ、見てみて~!」
「……できたー!」
「ん~?」
振り向くと、カフェの扉の横に双子の身長と同じくらいの双子の雪だるまが並んでいた。
木の枝で表された手は繋がれている。
ミクロが作っただろう雪だるまは元気いっぱいの上がり眉でフィラが作っただろう雪だるまは困った人のような下がり眉。
……2人の性格が出ているな。
「上手だな!
2人そっくりじゃないか!
よーし!」
空に術式を描いて、雪だるまに吸収させた。
「「うわぁぁぁっ!
きれーい!」」
術式を組んだときに出た魔法の残滓がダイヤモンドダストのようにキラキラ輝いて、思いがけずいい景色が見れた。
「形状記憶の魔法をかけてあるから、少しは解けにくくなったはず!」
「「!?ありがとう!」」
「フィラ、まだ作ろ!」
「……うん!」
ミクロがフィラの手を引っ張ってまだ雪かきが終わっていない薬屋の方に駆けて行った。
「これはかわいらしい人形ですね。」
裏から戻ってきたエルヴィスさんも感心したように見ていた。
「そっくりでしょう?」
「ふふ、確かに。
お、今度はあっちで作っているんですね。」
ふ、口元と緩めながら双子を見守るエルヴォイスさん。
少し寒さで鼻先が赤いのがなんだかかわいらしく見えた。
「「ユーリ!エルヴィスさん!できたー!」」
あらかた雪かきができたかな、といったところでまた双子から声がかかる。
今度はさっきよりも大きな雪だるまが薬屋の扉の横に並んでいた。
片方は大きくて、もう片方は双子のよりは大きいけれど、隣の雪だるまよりは小さい。
肩を寄せ合うように並んでいる。
「ユーリと、エルヴィスさん!」
「これは上手ですねぇ。
ではこれを、こうしましょう。」
エルヴィスさんは手のひらを合わせ、ぱ、と開くとすでに完成された術式が浮かび上がる。
!?
そんなことできるの!?
俺は空に術式を描いてやることしかできない。
……今度教えてもらお。
「形状記憶の魔法ですから、溶けにくくなりますよ。
……ん?」
「エルヴィスさん……」
「……ユーリと同じことしてるよ。」
「「そっくりさんだ!」」
なんだか恥ずかしくなったのは気のせいなはず。
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