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第1章

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「そういえばユーリさんに聞きたかったのですが、ここのお風呂ずいぶん広いですよね。」

そうだ、いずれ小さな宿をやってもいいと思って、大人3人同時入っても余裕があるくらい湯船を広くしていたんだった。
薬屋以外で一番こだわった部屋と言ってもいい。

湯船にはお湯が温かいまま保てるようにした魔石と、自動洗浄の魔石など色々奮発した。

そんなお風呂場だったのだけれど、エルヴィスさんはその良さを味わっていないようだった。

湯船に浸かりるとどんなにいいことがあるのかそれはもう語りに語りまくった。

「……ユーリさんからの圧がすげぇ。」

「それは楽しみですね。
ぜひ入ってみます。」

2人への売り込みはバッチリだ。
今日の夜から楽しんでくれることだろう。




「ごめんください。」

店側から声がした。
どうやらお客さんが来たみたいだ。

「はぁい。」

店に出ていくエルヴィスさんについていく。

そこにはげっそりした人が立っていた。
え、幽鬼?

「医療ギルドからここの薬屋がおすすめだと聞いてきたのだが……。」

「どうされましたか?」

「胃薬はないだろうか。」

どうにもストレスで普段から胃薬を飲んでいるそうだがとうとう愛用している胃薬が効かなくなって来たらしい。
エルヴィスさんが飲んでいる胃薬を確認するとだいぶ強い胃薬を使っていた。


「うぅん、これ以上は体に負担がかかるからお勧めしません。

見たところストレスによる胃痛のようですね。
生薬の胃薬を試してみませんか?」

「胃痛が和らぐならなんでも構わない。」

「では今調合しますので待っていてください。」

待ってもらっている間、ベンチに座ってもらっていればその人はうたた寝を始めた。

これは寝れてもいなさそうだ。

体に負担のない睡眠を深くするポプリを作る。

「エルヴィスさんこれもつけてあげてくださ……い?」

エルヴィスさんに作ったポプリを渡そうと顔を見たらその顔に言葉を失った。

なんと黒髪は変わらないけれど、瞳が金色から俺のようなヘーゼルの瞳になり、美形の顔がなんかわからないけれど歪んでおりだいぶ印象が変わっていた。

「あぁどうにも素の顔は目立ってしまうので人前に出るときは顔を変えているんです。
この指輪のこの石を手のひら側に向けると姿を変えることができます。

なかなかに便利でしょう?」

エルヴィスさんはピアスもたくさんつけているし、指輪もたくさん嵌めているが、そのひとつひとつがどうやら魔道具のようだ。

チェルロさんはその魔道具を持っていないようで人が来た時は調薬室にいるようだ。

エルヴィスさんの身につけている魔道具を見させてもらいたい気持ちはあるけれども、とりあえず目の前にいるお客さんを起こして薬とポプリを渡す。

「あまり眠れていないようなのでポプリはおまけです。
効いた感じがあったらぜひ買いに来てください。」

「あぁ、感謝する。」

フラフラとお客さんは帰って行った。

あのお客さん大丈夫かな……?


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