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第1章
52 side エルヴィス
しおりを挟むside エルヴィス
ユーリのところで美味しい朝食をいただいた後、薬屋に戻ってティーカップに紅茶を淹れる。
「……それで?こうやってなんとか半同棲状態に持ち込んだわけだけど。」
「えぇ、昨日は私のこのティーカップを選んでくれました。」
「あぁ、俺をわざわざダンジョンに行かせてデートにしたんだ。
楽しかっただろうさ。」
「私の部屋の家具もリビングもユーリ好みにできました。
とりあえず満足です。
チェルロにダンジョンに行ってもらったのは薬の材料の補充のためですよ。
ほら、おかげでこんなに薬品庫が潤っています。」
「……何も言わん。」
生まれたときから恵まれていた。
なのに自分自身は満たされない。
竜人族が愛するのは生涯にたった1人だけ。
たとえ、結ばれずとも本人が愛した相手が幸せであるように願う。
相手が同じ竜人族なら言わずもがな。
魔人族や精霊族でも比較的うまくいく場合が多い。
問題は愛した相手が人族だった場合。
魔力も霊力も少ない人族はその魔力や霊力の強さを感じ取れないため、アピール材料になりにくい。
地道に行くしかない。
竜人族は大体100歳くらいまでには愛する相手を見つけるものだが、エルヴィスは違った。
180歳になるエルヴィスには現れなかった。
乳兄弟のチェルロは91歳のときに相手ができてつがいにまでなったというのに。
歳を取れば取るほど周りは憐憫の目を向けてくる。
それから逃れたくて世界各地を旅して回った。
チェルロは心配してつがいと一緒についてきてくれた。
その旅のときに暇で色々スキルや資格をとっていったのだが、それが役に立つと思わなかった。
一度国に帰るかと、国の真下にあったフィオール王国ではたまたま花祭りをやっていた。
そこでやっと、やっと待ち望んだ愛する相手と出会うことができた。
人族であることなんて気にならない。
出会えたことが奇跡なのだ。
「ここまで来たら確実に手に入れたいのでね。
焦りませんよ。」
「お~こわいこわい。」
なんと言われようと気にならない。
それにしても……ユーリは危険ですね。
平民にありふれた髪色や瞳だがいかんせん容姿が整っている。
見た感じ本人にその自覚はなさそうだ。
今の所ユーリより目立つ双子がいるから視線は分散されているが。
「そうだ、エルヴィス、やっぱり手紙が来たぞ。」
「無視しておいてください。」
「そんなわけにいかないだろう!
絶対に返事しろよ!?
でないといつまでも俺にくるんだから!」
……私が困るわけじゃないので無視しましょう。
「そういえばここに入る小道……なんとも不思議ですねぇ。」
魔力とも霊力ともいえない力でユーリに悪意のあるものを弾いている。
「……一応調べたがそんな魔道具や霊道具はなかったぞ。」
「でしょうね。」
もっと仲良くなることができればそういう秘密も教えてくれるだろうか。
「さ、役に立つとわかってもらうためにも開店しますよチェルロ。」
「はいはい。」
扉の札をオープンにしたのだった。
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