7 / 109
第1章
7
しおりを挟む米だけじゃなくてこのお店にはなんと藁納豆も売っていた。
「それは開けたらなんかくせえもん入っていることがわかって、近々処分する予定だったんだ。
サクラマイと一緒に食べたら美味しいとか言って買わされたに等しいんだが、腐ったもんを売りつけられちまった。」
「これはこういうものなんですよ。
これも売ってください!」
そして俺は運命の出会いを果たして、ホクホクな気分で店を案内したのだった。
もちろん自分の店のアピールも忘れずにして。
「よし、やるぞ。」
家に帰って早速麹づくりだ。
麹がないことには味噌も醤油も作れない。
10kg全てを小分けして作っていく。
これだけで食品棚ひとつ全てを使うことになった。
食品棚は棚ごとに保存温度を変えることができるから最適温度にしてほっとくことができるというファンタジー。
麹づくりで数日、味噌なんて数ヶ月。
魔人族の国に行けばあるかもしれないが、現状ない今は作るしかない。
行きたいところリストに魔人族の国が追加されたことは言うまでもなかったのだった。
麹づくりが終わればランチの準備。
麹づくりと若干並行していたとはいえ時間はギリギリだ。
少し簡単になってしまうが、シャキシャキキャベツにサクサクのカツを挟んだカツサンド。
粗めの卵マヨにハムを挟んだサンドイッチ。
一緒に皿を持って、クラムチャウダーを添えればできあがり、と。
「今日もきたぞ。」
「いらっしゃいませ」
本屋のおじいさんは初日から毎日来てくれる。
「お弁当というものを始めたんじゃろう?
わしはランチを楽しみにしておったから行かなかったが。」
「えぇ、何人か買っていってくれましたよ。」
「そうか、お、今日もうまそうじゃ。」
本屋のおじいさんは今日も美味しそうに食べていってくれた。
20食に増やしたけれど、今日もありがたいことに完売した。
お弁当は余ったけれど、ランチは今のところ毎回完売だ。
「それにしてもこれから週3回になってしまうのは寂しいのう。」
「お弁当だったり色々なことに挑戦してみたいんですよ。」
「ま、若いうちに挑戦はたくさんするべきじゃな。」
「若いと言える年齢からそろそろ卒業しなきゃいけませんけれどね。」
「ん?バカ言っちゃいけないよ。
おまえさんは人間じゃろ?
人族の10代なんかやんちゃ盛りじゃろうに。」
あぁ、これは日本人にありがちなやつかも。
「……私は今年で27歳になりますよ。」
そう言った瞬間本屋のおじいさんは見事にスープを吹いた。
「おまえさん人族じゃないのか。」
「……れっきとした人族ですよ。」
「16くらいかと思っておったわ。
いやぁ長く生きていてもまだ驚くことはたくさんあるものじゃのう。」
こちらの世界ではだいぶ馴染んでいるけれど、日本に住んでいたときは、このキャメル色の髪とヘーゼルの瞳のせいで日本人としてもらえない上にだいぶ年齢が上に見られていたけれど、ここでは馴染んだ代わりに随分年下に見られるようだ。
いやはやいやはや、と髭をなでる最後のお客様だった本屋さんおじいさんを見送って店を閉めたのだった。
2,132
お気に入りに追加
3,429
あなたにおすすめの小説
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
俺は成人してるんだが!?~長命種たちが赤子扱いしてくるが本当に勘弁してほしい~
アイミノ
BL
ブラック企業に務める社畜である鹿野は、ある日突然異世界転移してしまう。転移した先は森のなか、食べる物もなく空腹で途方に暮れているところをエルフの青年に助けられる。
これは長命種ばかりの異世界で、主人公が行く先々「まだ赤子じゃないか!」と言われるのがお決まりになる、少し変わった異世界物語です。
※BLですがR指定のエッチなシーンはありません、ただ主人公が過剰なくらい可愛がられ、尚且つ主人公や他の登場人物にもカップリングが含まれるため、念の為R15としました。
初投稿ですので至らぬ点が多かったら申し訳ないです。
投稿頻度は亀並です。
追放されたボク、もう怒りました…
猫いちご
BL
頑張って働いた。
5歳の時、聖女とか言われて神殿に無理矢理入れられて…早8年。虐められても、たくさんの暴力・暴言に耐えて大人しく従っていた。
でもある日…突然追放された。
いつも通り祈っていたボクに、
「新しい聖女を我々は手に入れた!」
「無能なお前はもう要らん! 今すぐ出ていけ!!」
と言ってきた。もう嫌だ。
そんなボク、リオが追放されてタラシスキルで周り(主にレオナード)を翻弄しながら冒険して行く話です。
世界観は魔法あり、魔物あり、精霊ありな感じです!
主人公は最初不遇です。
更新は不定期です。(*- -)(*_ _)ペコリ
誤字・脱字報告お願いします!
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福論。〜飯作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
西園寺若葉
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃんでした。
実際に逢ってみたら、え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこいー伴侶がいますので!
おじいちゃんと孫じゃないよ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる