上 下
53 / 235
第04章 禁じられた恋

第053話 禁じられた恋

しおりを挟む
 レイはアランと共にエリー王女を迎えに行くが、エリー王女は一度もレイの方を見ようとはしなかった。
 いつものように、五人で朝食をとっている時もそうだった。二人の関係を知られてはいけないと、エリー王女の判断で行っているのだろう。分かってはいるのに、レイの心にじわりと不安が広がっていく。

「今日はいつもに増して美しいな」

 突然リアム国王がとエリー王女を褒めた。
 リアム国王はあまりお世辞は言わない。だからこそ、急に褒められたエリー王女の心臓はびくんと跳ねた。いつもと違う・・・・・・。それは今のエリー王女にとって恐ろしいことだった。

 後ろ暗さのせいで、何と応えて良いか分からなくなり、エリー王女は顔を赤らめ俯いてしまう。黙ったままではおかしいのに、何も言えなかった。

 その様子は、端から見れば照れているように見える。

「困らせてしまったようだな。申し訳ない」
「い、いえ……。ありがとうございます」

 リアム国王の優しい声色に、エリー王女は顔を上げ安心したように小さく微笑んだ。

「ああ、そうだ。今日はもしよければ遠乗りできればと思っている。見せたい場所があるのだ」
「遠乗り……馬に乗ってでしょうか? あの……私は馬に乗ったことがなく……」

 エリー王女は以前アランとレイと三人で遠乗りしようと言っていたことを思い出していた。その約束を叶える前に他の人と行くのはなんとなく気がひける。

「もちろんそれは承知だ。嫌でなければ私と二人乗りをお願いしたい」

 出来ることなら断りたかった。しかし、隣に座るアランから「お受けください」と耳打ちをされ、エリー王女は誘いを受けることにした。



 ◇

 リアム国王のご好意により乗馬用の衣装を用意してもらい、部屋に戻って着替えをした。乗馬用キュロットは足のラインがくっきりと出るパンツスタイル。今までスカートしか履いたことのないエリー王女にとっては、とても恥ずかしい格好だった。

「エリー様、すっごく可愛いね」

 迎えに来たレイが最初に放った言葉に、思わず顔を赤らめた。

「あ、ありがとうございます」
「エリー様。それでは私も準備してまいります」

 マーサはちらりとレイを見ると、エリー王女に挨拶をして出て行った。扉の閉まる音を聞くと二人は自然と距離を縮める。

「可愛すぎて誰にも見せたくなくなっちゃうな」

 レイがエリー王女の髪に触れ、困ったように笑った。

「本当はレイと一緒に馬に乗りたかったです……」

 甘えるように呟くエリー王女にレイの心は激しく揺れる。先ほどまでの不安やリアム国王に対する嫉妬もすべて嘘のように消えた。気がつけばエリー王女の唇に触れている。まるで自分のものであると証明するかのように激しく求めていた。

 アランに言われたことも頭によぎってはいたが止められないのだ。
 エリー王女もまた、昨夜と変わらぬレイの態度に喜びを感じ求めに応じる。

「ん……。はぁ……あ、あの……レイ……」

 ふとマーサのことを思い出し、遠慮がちにレイの胸を押した。

「ん?」
「実は……マーサが疑っているかもしれないのです……」

 エリー王女は今朝の出来事を伝える。

「あー、そっか。ごめん。着させてから行くべきだった……。わかった。気をつける」
「私……レイを危険な目に合わせたくありません。ですので、普段はあまり……」
「うん、分かってる。俺のことは気にしないで」

 さっきまで嫉妬していた自分を隠し、レイは笑顔を作った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜

七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。 ある日突然、兄がそう言った。 魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。 しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。 そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。 ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。 前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。 これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。 ※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

処理中です...