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奪還の章
実験
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とりあえずディアンは実験を重ねてみることにした。
まずはアリアウェットから効果がありそうと伝えられた電撃を打ち込んでみる。
すると確かに魔物はしばらくひきつるような所作を見せたが、すぐに元に戻った。
次に感情感知を試してみる。
これは相手の感情を大まかに読み取る精神魔法だ。
ところが感情感知はまるで魔物に感情そのものが無いかのように全く効果を現さなかった。
「お前は何もんだ?」
会話や念話に意思の疎通を試してみる。
しかし全く反応がない。
そもそも魔物は継続的にキュイキュイという音しか発していないのだ。
「さて、どーすっかな」
腕組みをしたディアンにアリアウェットが首を傾けた。
「ディアン、ゼノスさん達は、この魔物に心当たりはないかな?」
「そうだな姫さま、ちょっと聞いてみてくれるか?」
アリアウェットは交信の指輪に念を込める。
「なんじゃ?」
ゼノスから返事が入る。
「お、遊びの誘いかの?」
アドルフからも返事が入る。
「だからもうカモらんと言っておるだろう!」
何故か竜王は切れている。
「こんにちは、ところでみんなに教えてほしいことがあるの」
アリアウェットは三人に状況と魔物の説明を開始した。
彼女はまず東の街で起きた事件を報告すると、そこでとらえた魔物について、三人に心当たりがないか聞いてみる。
しかし残念ながら、三人とも外骨格が鋼のような四本足の蜘蛛のような魔物については知らなかった。
「光で攻撃してくるなら、竜王の眷族か?」
からかうようなゼノスに竜王は真面目に反論する。
「なんで我の眷族に蜘蛛がおるんじゃ、クモが」
そんなやり取りを無視するかのようにアドルフが興味深そうな声で呼びかけてきた。
「ディアンもそこにいるじゃろ。ディアンよ、知識は探求からじゃ。そういう時は、容赦なく解剖じゃ」
「ありがとう、ゼノス様、アドルフ様、竜王様」
「何のアリア。また何かあったら連絡をよこすんじゃぞ」
「小僧よ、新たな魔物の解剖結果報告を楽しみにしておるぞ」
「我は忙しいのだがまあ良い」
アリアウェットは魔力を閉じてから指輪をはずすと、ディアンの方を見やった。
「ジジイの言うとおりだな。いっちょやったるか」
そんな風に研究心旺盛となるディアンの横で、団員達は全員無言で硬直していた。
姫様と親衛隊長が気軽に声を交わした相手の正体をアリアウェットから聞かされたことによって。
そこからのディアンは冷酷だった。
彼はまず魔物の足の一本を掴むと、一番末端の関節に短剣を突き立ててみる。
すると、ブチブチと何かが切れるような音を立てながら、足先が落ちた。
「関節なら剣は通る訳か」
次に彼は足先を裏返してみる。
するとそこには何か球のようなものが四つ、足の裏に埋まっている。
そこを短剣でつつくと、なめらかに回転した。
ディアンは足先を小屋の床に下すと、おもちゃのように手で滑らせてみる。
「滑らかなもんだな」
続けて彼はそこから球を一個をくりぬいてみた。
すると中には油のような粘度の高い液体と、くりぬいたのと同じような球が埋まっている。
「へえ、球同士が回転を伝え合う訳か」
ディアンは魔物の移動方法を理解した。
彼らは街路を球で滑るように移動していたのだ。
ならば落とし穴などは効果があるだろう。
次にディアンは組織の破壊方法を模索してみる。
まずは物質破壊を使ってみるが、これは効果を示さない。
どうやら一応は生体らしい。
ならばと今度は精神魔法を試してみる。
発狂
しかしこの魔法にも全く手ごたえはなかった。
これは感情感知と同様の結果だ。
「ということは、俺達とは異なる精神体系と言うことか」
アリアウェットの報告で地水火風の魔法による影響は報告されているので、次は各種打撃を加えてみる。
肉体強化【全能力解放】をザックに唱え、バスタードソードで球の部分に思い切り切りかからせてみる。
しかしザックの攻撃は球に見事にはじき返されてしまう。
続けて球と脚の接合部や脚の関節に剣を突き入れる。
するとそこには関節にはズブズブと剣が入っていく。
今度は各種武器強化を試す。
武器強化【炎撃剣】は球も関節も変化なし。
次に武器強化【雷撃剣】を打ち込む
「お?」
ディアンは変化を見つけた。
ザックの雷撃剣は球に対しては効果を見せなかったものの、関節に対しては効果を見せた。
雷撃剣をつき刺された魔物は魔法の雷撃を食らった時のようにその全身をひきつらせたが、そのあとにさらなる変化を見せる。
魔物は剣を刺された以外の脚の付け根や球との接合部からぶすぶすと煙のようなものをあげ、球はギュイギュイとさらに異常な音を発っしはじめた。
「お前ら、今の見てたか?」
「関節内部への雷撃が効果ありですね!」
ザックの返事にディアンは満足そうに頷いた。
「そうだ、これで攻撃方針決定!」
「ねえ、もういいかしら?」
アリアウェットはうんざりとした表情となっている。
それはそうだ。
実験には参加させてもらえず、これまでずっと念動で魔物を捉えているのだから。
「ああ、もういいぞ」
「わかったわ」
ディアンの許可を合図に、魔物はアリアウェットが放った「電撃牢」を傷ついた関節にまともに食らうと、全身から黒煙を上げながら、各接合部ごとにばらばらになって動作を停止した。
まずはアリアウェットから効果がありそうと伝えられた電撃を打ち込んでみる。
すると確かに魔物はしばらくひきつるような所作を見せたが、すぐに元に戻った。
次に感情感知を試してみる。
これは相手の感情を大まかに読み取る精神魔法だ。
ところが感情感知はまるで魔物に感情そのものが無いかのように全く効果を現さなかった。
「お前は何もんだ?」
会話や念話に意思の疎通を試してみる。
しかし全く反応がない。
そもそも魔物は継続的にキュイキュイという音しか発していないのだ。
「さて、どーすっかな」
腕組みをしたディアンにアリアウェットが首を傾けた。
「ディアン、ゼノスさん達は、この魔物に心当たりはないかな?」
「そうだな姫さま、ちょっと聞いてみてくれるか?」
アリアウェットは交信の指輪に念を込める。
「なんじゃ?」
ゼノスから返事が入る。
「お、遊びの誘いかの?」
アドルフからも返事が入る。
「だからもうカモらんと言っておるだろう!」
何故か竜王は切れている。
「こんにちは、ところでみんなに教えてほしいことがあるの」
アリアウェットは三人に状況と魔物の説明を開始した。
彼女はまず東の街で起きた事件を報告すると、そこでとらえた魔物について、三人に心当たりがないか聞いてみる。
しかし残念ながら、三人とも外骨格が鋼のような四本足の蜘蛛のような魔物については知らなかった。
「光で攻撃してくるなら、竜王の眷族か?」
からかうようなゼノスに竜王は真面目に反論する。
「なんで我の眷族に蜘蛛がおるんじゃ、クモが」
そんなやり取りを無視するかのようにアドルフが興味深そうな声で呼びかけてきた。
「ディアンもそこにいるじゃろ。ディアンよ、知識は探求からじゃ。そういう時は、容赦なく解剖じゃ」
「ありがとう、ゼノス様、アドルフ様、竜王様」
「何のアリア。また何かあったら連絡をよこすんじゃぞ」
「小僧よ、新たな魔物の解剖結果報告を楽しみにしておるぞ」
「我は忙しいのだがまあ良い」
アリアウェットは魔力を閉じてから指輪をはずすと、ディアンの方を見やった。
「ジジイの言うとおりだな。いっちょやったるか」
そんな風に研究心旺盛となるディアンの横で、団員達は全員無言で硬直していた。
姫様と親衛隊長が気軽に声を交わした相手の正体をアリアウェットから聞かされたことによって。
そこからのディアンは冷酷だった。
彼はまず魔物の足の一本を掴むと、一番末端の関節に短剣を突き立ててみる。
すると、ブチブチと何かが切れるような音を立てながら、足先が落ちた。
「関節なら剣は通る訳か」
次に彼は足先を裏返してみる。
するとそこには何か球のようなものが四つ、足の裏に埋まっている。
そこを短剣でつつくと、なめらかに回転した。
ディアンは足先を小屋の床に下すと、おもちゃのように手で滑らせてみる。
「滑らかなもんだな」
続けて彼はそこから球を一個をくりぬいてみた。
すると中には油のような粘度の高い液体と、くりぬいたのと同じような球が埋まっている。
「へえ、球同士が回転を伝え合う訳か」
ディアンは魔物の移動方法を理解した。
彼らは街路を球で滑るように移動していたのだ。
ならば落とし穴などは効果があるだろう。
次にディアンは組織の破壊方法を模索してみる。
まずは物質破壊を使ってみるが、これは効果を示さない。
どうやら一応は生体らしい。
ならばと今度は精神魔法を試してみる。
発狂
しかしこの魔法にも全く手ごたえはなかった。
これは感情感知と同様の結果だ。
「ということは、俺達とは異なる精神体系と言うことか」
アリアウェットの報告で地水火風の魔法による影響は報告されているので、次は各種打撃を加えてみる。
肉体強化【全能力解放】をザックに唱え、バスタードソードで球の部分に思い切り切りかからせてみる。
しかしザックの攻撃は球に見事にはじき返されてしまう。
続けて球と脚の接合部や脚の関節に剣を突き入れる。
するとそこには関節にはズブズブと剣が入っていく。
今度は各種武器強化を試す。
武器強化【炎撃剣】は球も関節も変化なし。
次に武器強化【雷撃剣】を打ち込む
「お?」
ディアンは変化を見つけた。
ザックの雷撃剣は球に対しては効果を見せなかったものの、関節に対しては効果を見せた。
雷撃剣をつき刺された魔物は魔法の雷撃を食らった時のようにその全身をひきつらせたが、そのあとにさらなる変化を見せる。
魔物は剣を刺された以外の脚の付け根や球との接合部からぶすぶすと煙のようなものをあげ、球はギュイギュイとさらに異常な音を発っしはじめた。
「お前ら、今の見てたか?」
「関節内部への雷撃が効果ありですね!」
ザックの返事にディアンは満足そうに頷いた。
「そうだ、これで攻撃方針決定!」
「ねえ、もういいかしら?」
アリアウェットはうんざりとした表情となっている。
それはそうだ。
実験には参加させてもらえず、これまでずっと念動で魔物を捉えているのだから。
「ああ、もういいぞ」
「わかったわ」
ディアンの許可を合図に、魔物はアリアウェットが放った「電撃牢」を傷ついた関節にまともに食らうと、全身から黒煙を上げながら、各接合部ごとにばらばらになって動作を停止した。
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