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人外の章
カモられ竜王
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「あいたたた……。今回は我の負けだ」
素直に降参した竜王は、人間変化の魔法で人型になると、一行を彼の住処へと案内していった。
ちなみに人型の竜王は偉丈夫の中年の姿で、精悍な印象を受ける。
心配そうに彼を見つめる火炎龍の脇を通り過ぎた竜王は、自身の寝床まで一行を連れて行った。
そこはまさしく豪華絢爛な宝の山だった。
「まずは金貨千枚だったな」
竜王は金貨の山に向かう。
するとゼノスがガルバーンの方を指さした。
「千枚きっちり数えるのも面倒じゃからの、そやつの背負籠一杯でどうじゃ?」
すると竜王も細かいことはどうでもいいとばかりにガルバーンを手招きすると、その背負籠を金貨で満たしてしまった。
「うおっ」
同時にガルバーンはその重さにのけぞり、しりもちをついてしまう。
「せっかくの収穫じゃ、ボロボロこぼすんではないぞ」
などと軽口をたたいているアドルフを横目でにらみつけながら、シルフェーヌはガルバーンに駆け寄ると、かいがいしく肉体強化の呪文を唱えた。
「次は指輪か。ところで人数分と言うのは、四個か? 六個か?」
「六個に決まっておろう。そこの夫妻、特に奥方が涙目になってやめてと絶叫しなければ、儂らはもうしばらく魔法を続けておったぞ」
「ということは、そこの夫妻は我の恩人であるか。了解した」
ゼノスの指摘に竜王は素直に納得する竜王。
シンプルな思考は、さすが爬虫類といったところか。
「で、どの指輪を所望するのだ?」
竜王が宝の山から何やら箱を取り出すと、彼らに問いかけた。
「まずはあたしに、理想体の指輪を返さんかい」
シェイプアップの響きに、シルフェーヌがひそかに反応する。
「儂は亡者収穫の指輪じゃ」
ハーベストの響きに、アリアウェットがひそかに反応する。
「それでは残り四つだな。お前らは何にするんだ?」
竜王に顔を向けられたアリアウェット、ディアン、ノース夫妻は困ってしまう。
というのは、一体どんな魔道の指輪があるのか、さっぱり想像がつかないからだ。
四人を代表してディアンが竜王の前に立った。
「ここはおススメでお願いします」
「おススメなあ」
竜王は真剣に悩み始めた。
その真摯な表情を見てディアンは思う。
もしかしたら竜王って良い人なのではないか?
すると、何かを思いついたのか、ゼノスが嫌らしい笑顔を浮かべた。
「ノース夫妻には、一心同体の指輪でよいんではないかいの?」
「それはどんな指輪ですか?」
ガルバーンの質問に、ゼノスは恩着せがましく説明を始めた。
「それは二つで一対の指輪でな。身につけている者同士が常に互いの位置を感知できる上に、ある程度の感情も把握できる。しかも二人を常に肉体強化【全能力解放《リリースフルポテンシャル》】状態に維持するという、まさにカップルのための指輪じゃよ」
「まじか! まさに俺とシルフェーヌのための指輪ではないか!」
ガルバーンは喜びの絶叫をあげ、シルフェーヌも先程まで気になっていた理想体の指輪の事も忘れ、一緒になって喜んでいる。
一方で邪悪な笑みを浮かべ続けるゼノスと、困惑した表情のアドルフと竜王の表情が気になるディアン。
「それはちょっと可哀そう過ぎるんではないか? 特にガルバーンには」
アドルフがノース夫妻に聞こえないよう、ゼノスに小声で囁いたのをディアンは聞き逃さなかった。
次に続くゼノスの嫌らしい微笑みも。
「これも実験じゃ」
竜王は再び悩みだす。
「それではあと二つ、どうしたものか」
するとアドルフがアリアウェットに声を掛けた。
「お嬢ちゃんは並列思考が使えるようじゃが、回路はいくつ持っておるのかの?」
「三つよ
「三つです」
「三つですわ」
三つの声色を同時に発生したアリアウェットに同時もせず、アドルフはことばを続けていく。
「それなら並列思考の指輪にしたらどうじゃ?」
「ほう、それは面白いの」
アドルフの提案にゼノスも同調している。
「並列思考の指輪で回路を四つにすれば、さっき竜王をカモった贖罪を一人で唱えることができるようになるじゃろ」
「ちょっと待て」
ディアンは三人の会話に割って入った。
「並列思考による、同一目標に対しての魔法は、最も強力なものに上書きされるのではないか?」
そう、かつてアリアウェットが風刃を磔で上書きしたようにだ。
しかしゼノスはそんなディアンを鼻で笑った。
「まだまだ若造じゃの」
そこにアドルフが続く。
「贖罪はあくまでも召喚魔法じゃ。実際に攻撃を行うのは、召喚された四聖獣じゃから互いに干渉はせぬよ」
その説明にディアンは納得した。
恐怖とともに。
今後万一姫様にあれを自分に向けて唱えられたら、生き残る自信が全くない。
なので彼は決意する。
今後は姫様に喧嘩を売るのはやめよう。
「でも、そんな強力な呪文を、アリアに持たせてもいいのか?」
ディアンの素朴な疑問に、三人は当たり前のように声をそろえた。
「わしらに、同じ技は二度と通用せんよ」
どこの〇〇〇だよ。
「さて、残り一つか」
三人は再び悩みだした。
「ちんこがなくなる指輪とか、どうじゃの?」
「儂は少年回帰の指輪を推すぞ」
ディアンはとても嫌な予感がした。
このままでは碌でもない指輪を持たされてしまう羽目になるのではないか?
なので彼は自身から希望を出してみる。
「例えば真実を知る指輪とかないですか?」
「あるぞ」
すると竜王は即答した。
ゼノスとアドルフも、そう来たかという表情をディアンに向けている。
「これじゃ」
それは告白の指輪という。
素直に降参した竜王は、人間変化の魔法で人型になると、一行を彼の住処へと案内していった。
ちなみに人型の竜王は偉丈夫の中年の姿で、精悍な印象を受ける。
心配そうに彼を見つめる火炎龍の脇を通り過ぎた竜王は、自身の寝床まで一行を連れて行った。
そこはまさしく豪華絢爛な宝の山だった。
「まずは金貨千枚だったな」
竜王は金貨の山に向かう。
するとゼノスがガルバーンの方を指さした。
「千枚きっちり数えるのも面倒じゃからの、そやつの背負籠一杯でどうじゃ?」
すると竜王も細かいことはどうでもいいとばかりにガルバーンを手招きすると、その背負籠を金貨で満たしてしまった。
「うおっ」
同時にガルバーンはその重さにのけぞり、しりもちをついてしまう。
「せっかくの収穫じゃ、ボロボロこぼすんではないぞ」
などと軽口をたたいているアドルフを横目でにらみつけながら、シルフェーヌはガルバーンに駆け寄ると、かいがいしく肉体強化の呪文を唱えた。
「次は指輪か。ところで人数分と言うのは、四個か? 六個か?」
「六個に決まっておろう。そこの夫妻、特に奥方が涙目になってやめてと絶叫しなければ、儂らはもうしばらく魔法を続けておったぞ」
「ということは、そこの夫妻は我の恩人であるか。了解した」
ゼノスの指摘に竜王は素直に納得する竜王。
シンプルな思考は、さすが爬虫類といったところか。
「で、どの指輪を所望するのだ?」
竜王が宝の山から何やら箱を取り出すと、彼らに問いかけた。
「まずはあたしに、理想体の指輪を返さんかい」
シェイプアップの響きに、シルフェーヌがひそかに反応する。
「儂は亡者収穫の指輪じゃ」
ハーベストの響きに、アリアウェットがひそかに反応する。
「それでは残り四つだな。お前らは何にするんだ?」
竜王に顔を向けられたアリアウェット、ディアン、ノース夫妻は困ってしまう。
というのは、一体どんな魔道の指輪があるのか、さっぱり想像がつかないからだ。
四人を代表してディアンが竜王の前に立った。
「ここはおススメでお願いします」
「おススメなあ」
竜王は真剣に悩み始めた。
その真摯な表情を見てディアンは思う。
もしかしたら竜王って良い人なのではないか?
すると、何かを思いついたのか、ゼノスが嫌らしい笑顔を浮かべた。
「ノース夫妻には、一心同体の指輪でよいんではないかいの?」
「それはどんな指輪ですか?」
ガルバーンの質問に、ゼノスは恩着せがましく説明を始めた。
「それは二つで一対の指輪でな。身につけている者同士が常に互いの位置を感知できる上に、ある程度の感情も把握できる。しかも二人を常に肉体強化【全能力解放《リリースフルポテンシャル》】状態に維持するという、まさにカップルのための指輪じゃよ」
「まじか! まさに俺とシルフェーヌのための指輪ではないか!」
ガルバーンは喜びの絶叫をあげ、シルフェーヌも先程まで気になっていた理想体の指輪の事も忘れ、一緒になって喜んでいる。
一方で邪悪な笑みを浮かべ続けるゼノスと、困惑した表情のアドルフと竜王の表情が気になるディアン。
「それはちょっと可哀そう過ぎるんではないか? 特にガルバーンには」
アドルフがノース夫妻に聞こえないよう、ゼノスに小声で囁いたのをディアンは聞き逃さなかった。
次に続くゼノスの嫌らしい微笑みも。
「これも実験じゃ」
竜王は再び悩みだす。
「それではあと二つ、どうしたものか」
するとアドルフがアリアウェットに声を掛けた。
「お嬢ちゃんは並列思考が使えるようじゃが、回路はいくつ持っておるのかの?」
「三つよ
「三つです」
「三つですわ」
三つの声色を同時に発生したアリアウェットに同時もせず、アドルフはことばを続けていく。
「それなら並列思考の指輪にしたらどうじゃ?」
「ほう、それは面白いの」
アドルフの提案にゼノスも同調している。
「並列思考の指輪で回路を四つにすれば、さっき竜王をカモった贖罪を一人で唱えることができるようになるじゃろ」
「ちょっと待て」
ディアンは三人の会話に割って入った。
「並列思考による、同一目標に対しての魔法は、最も強力なものに上書きされるのではないか?」
そう、かつてアリアウェットが風刃を磔で上書きしたようにだ。
しかしゼノスはそんなディアンを鼻で笑った。
「まだまだ若造じゃの」
そこにアドルフが続く。
「贖罪はあくまでも召喚魔法じゃ。実際に攻撃を行うのは、召喚された四聖獣じゃから互いに干渉はせぬよ」
その説明にディアンは納得した。
恐怖とともに。
今後万一姫様にあれを自分に向けて唱えられたら、生き残る自信が全くない。
なので彼は決意する。
今後は姫様に喧嘩を売るのはやめよう。
「でも、そんな強力な呪文を、アリアに持たせてもいいのか?」
ディアンの素朴な疑問に、三人は当たり前のように声をそろえた。
「わしらに、同じ技は二度と通用せんよ」
どこの〇〇〇だよ。
「さて、残り一つか」
三人は再び悩みだした。
「ちんこがなくなる指輪とか、どうじゃの?」
「儂は少年回帰の指輪を推すぞ」
ディアンはとても嫌な予感がした。
このままでは碌でもない指輪を持たされてしまう羽目になるのではないか?
なので彼は自身から希望を出してみる。
「例えば真実を知る指輪とかないですか?」
「あるぞ」
すると竜王は即答した。
ゼノスとアドルフも、そう来たかという表情をディアンに向けている。
「これじゃ」
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