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灼熱の荒野の章
単独探索者
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アリアとシルフェに救われた男の生業は単独探索者。
彼はお宝の中でも、特に魔法素材を採取しているそうだ。
灼熱の荒野では、ワールフレイムでの魔族召喚乱発の影響もあってか、モンスターを含む多くの生物がおかしな進化をしているという。
その理由は「魔力の生体濃縮」にある。
成体濃縮された魔力は生物の体内で「魔結晶」の形で発見されることがほとんどである。
ところがまれに、モンスターの特定部位が、特定の魔法能力を纏った魔道具となっている場合があるのだ。
例えば「魔力を弾く毛皮」「魔力を充填できる骨」「魔力を特定の効果に変換する眼球」など、その効果は様々なものが発見されている。
今回この探索者は、奥地で上級モンスターの死骸を発見することに成功した。
そこで彼は夢中で魔力を発する部位を死骸から切り取ってゆく。
しかしそこを、砂漠禿鷹の群れにモンスターの死骸を横取りするかのように襲われてしまった。
彼は魔法を駆使し、辛くもコンドルたちから逃げおおせることには成功したが、魔力も体力も限界に来てしまった。
そうなると水を創りだす魔法も、念のため所持していた水を創りだす魔道具も使用不可となってしまう。
その結果、男はそのまま行き倒れとなってしまった。
「どうだ、一人で街に戻れるか?」
ディアンは魔力移動で男に魔力を分け与えてやりながら男に尋ねた。
「助けてもらった上にすまないが、食料をほんの少しでいいので分けてはもらえないか?」
「わかった、とりあえずこれを食え」
ディアンが男に渡したのは、オレンジビネガーで漬け焼きした肉を、豆のクレープで包んだもの。
「……、旨いな」
「そりゃよかった。ところで、もう自力で水は作れるな」
「ああ」
ならばと、ディアンは三カップほどの乾燥豆と干肉を彼に渡してやる。
「これで街まではしのげるだろう」
「こんなにいいのか?」
「お互い様さ」
すると横からアリアウェットとシルフェも顔を出した。
「甘いモノを食べると疲れが取れるわよ!」
二人は弱った彼でも味わえるような、比較的柔らかなお菓子を選んで彼に差し出してやる。
そのお菓子を見て一瞬驚きの表情を見せた男だったが、すぐに感謝の意をアリアウェットとシルフェにも示し、皆の名前を教えてほしいと望んだ。
「俺はディアンソン、この娘はアリアロッドだ。こいつらはガルとシルフェ。冒険者の店のオーナーとは知らぬ中でもない。戻ったらよろしく伝えてくれ」
「ああ、そうさせてもらう」
そう礼を言いながら、男は腰にしっかりと結び付けられたポーチから石を一つ取り出した。
「つまらんもんだが、受け取ってくれ」
それは魔結晶。
しかも相当な魔力を貯めこんでいる代物である。
しかしディアンはやんわりと受け取りを拒んだ。
「いいよ、お互い様だから」
「いいのか?」
「いいんだ」
男はディアンたちに改めて感謝の意を示すと、街に戻っていった。
「ディアン兄さん、カッコ良かったっす!」
感動するガルを横目に、ディアンはほくそ笑む。
これでワールストームでの俺達の評判は、更にランクアップだなと。
そう、ディアン一行が無償で男を助けたということが街に伝われば、彼らの株はさらに上がるだろう。
ディアンはそう計算した上で、男からの礼をやんわりと辞退してみせたのだ。
魔結晶一つの値段でそうなれば安いものである。
さて、ディアンが小芝居を披露している間、アリアウェットとシルフェは朝食になるはずのいつもの豆の煮込みを無視すると、ディアンが男に食べさせてやった、本来は非常食であるはずの肉入りクレープを美味しそうにぱくついている。
「朝ごはん、これからはこっちのほうがいいよね」
「うん!」
こうして翌日からディアンは再び朝食メニューに頭を悩ますことになる。
彼はお宝の中でも、特に魔法素材を採取しているそうだ。
灼熱の荒野では、ワールフレイムでの魔族召喚乱発の影響もあってか、モンスターを含む多くの生物がおかしな進化をしているという。
その理由は「魔力の生体濃縮」にある。
成体濃縮された魔力は生物の体内で「魔結晶」の形で発見されることがほとんどである。
ところがまれに、モンスターの特定部位が、特定の魔法能力を纏った魔道具となっている場合があるのだ。
例えば「魔力を弾く毛皮」「魔力を充填できる骨」「魔力を特定の効果に変換する眼球」など、その効果は様々なものが発見されている。
今回この探索者は、奥地で上級モンスターの死骸を発見することに成功した。
そこで彼は夢中で魔力を発する部位を死骸から切り取ってゆく。
しかしそこを、砂漠禿鷹の群れにモンスターの死骸を横取りするかのように襲われてしまった。
彼は魔法を駆使し、辛くもコンドルたちから逃げおおせることには成功したが、魔力も体力も限界に来てしまった。
そうなると水を創りだす魔法も、念のため所持していた水を創りだす魔道具も使用不可となってしまう。
その結果、男はそのまま行き倒れとなってしまった。
「どうだ、一人で街に戻れるか?」
ディアンは魔力移動で男に魔力を分け与えてやりながら男に尋ねた。
「助けてもらった上にすまないが、食料をほんの少しでいいので分けてはもらえないか?」
「わかった、とりあえずこれを食え」
ディアンが男に渡したのは、オレンジビネガーで漬け焼きした肉を、豆のクレープで包んだもの。
「……、旨いな」
「そりゃよかった。ところで、もう自力で水は作れるな」
「ああ」
ならばと、ディアンは三カップほどの乾燥豆と干肉を彼に渡してやる。
「これで街まではしのげるだろう」
「こんなにいいのか?」
「お互い様さ」
すると横からアリアウェットとシルフェも顔を出した。
「甘いモノを食べると疲れが取れるわよ!」
二人は弱った彼でも味わえるような、比較的柔らかなお菓子を選んで彼に差し出してやる。
そのお菓子を見て一瞬驚きの表情を見せた男だったが、すぐに感謝の意をアリアウェットとシルフェにも示し、皆の名前を教えてほしいと望んだ。
「俺はディアンソン、この娘はアリアロッドだ。こいつらはガルとシルフェ。冒険者の店のオーナーとは知らぬ中でもない。戻ったらよろしく伝えてくれ」
「ああ、そうさせてもらう」
そう礼を言いながら、男は腰にしっかりと結び付けられたポーチから石を一つ取り出した。
「つまらんもんだが、受け取ってくれ」
それは魔結晶。
しかも相当な魔力を貯めこんでいる代物である。
しかしディアンはやんわりと受け取りを拒んだ。
「いいよ、お互い様だから」
「いいのか?」
「いいんだ」
男はディアンたちに改めて感謝の意を示すと、街に戻っていった。
「ディアン兄さん、カッコ良かったっす!」
感動するガルを横目に、ディアンはほくそ笑む。
これでワールストームでの俺達の評判は、更にランクアップだなと。
そう、ディアン一行が無償で男を助けたということが街に伝われば、彼らの株はさらに上がるだろう。
ディアンはそう計算した上で、男からの礼をやんわりと辞退してみせたのだ。
魔結晶一つの値段でそうなれば安いものである。
さて、ディアンが小芝居を披露している間、アリアウェットとシルフェは朝食になるはずのいつもの豆の煮込みを無視すると、ディアンが男に食べさせてやった、本来は非常食であるはずの肉入りクレープを美味しそうにぱくついている。
「朝ごはん、これからはこっちのほうがいいよね」
「うん!」
こうして翌日からディアンは再び朝食メニューに頭を悩ますことになる。
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