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灼熱の荒野の章
寄り道の代償
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砂漠蜥蜴の尻尾を十分に集めた彼らは、一旦街へと戻った。
ディアンが先頭を歩き、派手な背負籠を担いでいるガルが続く。
更にその後ろからは、まるでショッピングの帰りかのようにトートバッグを肩にかけ、談笑しながらアリアウェットとシルフェがついてきている。
冒険者の店に到着すると、すぐにディアンは男どもに歓迎された。
「ディアンソンさん、こんちわっす」
「お疲れ様です、ディアンソンさん」
などと、兵士たちは相変わらずディアンをアイドルかのように取り囲んでいく。
一方で冒険者達の視線は一斉にガルの背に集まった。
そのお世辞にもセンスが良いとは言えないド派手な背負籠は俄然注目の的になっている。
兵士たちの輪を愛想笑いを浮かべながらかいくぐったディアンは、受付嬢に向かうと彼女が気持ち悪くならないように目線を逸らしながら、ガルの背を指さした。
「この中に砂漠蜥蜴の尻尾が百以上はあるはずだ。登録料に足りるかどうか、確認してくれ」
続けてガルに背負籠ごと尻尾を受付カウンターに持ち込むように指示を出してやる。
「それじゃ、一服するか」
「うっす、兄さん」
さて、アリアウェットとシルフェは先にテーブルを陣取ると、何やらごそごそと話をしている。
「ねえシルフェ、唐揚げって知ってる?」
アリアウェットの問いに、シルフェは不思議そうな表情を見せた。
「なら、クッキーって知ってる?」
今度はシルフェが満面の笑顔を見せながら、うんうんと頷いた。
ちょうどそこにディアンとガルが受付から戻ってきた。
「ねえディアン、クッキーを買いに行きたいの!」
「あ?」
突然、アリアウェットが一気に馬鹿姫に戻ってしまったかのようなお願いをしてきたことにディアンは一瞬戸惑ってしまう。
なんだこいつ?
正直アホかとは思いつつも、ディアンはワールストームでアリアウェットが経験した辛い出来事を思い出すと、たまには馬鹿姫にさせておいてもいいかと思い直した。
「わかりました。ではこれでクッキーを買ってらっしゃい」
ディアンは銀貨一枚をアリアウェットに渡してやる。
しかし彼女は不満げな表情で文句たらたら。
「シルフェの分は?」
「そうですか」
アリアウェットの突っ込みに、ディアンは諦めたようにもう一枚銀貨を彼女に渡してやる。
するとアリアウェットの口調が少々変化した。
「ディアン、これでは私とシルフェはクッキーを十枚づつしか買えません。確か旅程は三十日ほどでしたよね」
そろそろ「親衛隊長殿」とか「ディアン様」とか呼ばれそうな雰囲気になってきたことを感じ取ったディアンは、厄除け代わりに銀貨を四枚追加してやる。
これならばクッキーを60枚は購入できるはずだ。
続けて彼はガルとシルフェに聞こえないようにアリアウェットの耳元で囁いた。
「姫様、これが限界ですよ」
「わかったわ」
合計6枚の銀貨を手にしたアリアウェットは、シルフェの手を取ると、お揃いのトートバッグを抱えて街に飛び出していった。
「兄さん、俺にも小遣いをくれ!」
「少し黙ってろ!」
ディアンは調子に乗ったガルを麻痺で黙らせると、今後の旅程について一人で検討を始めた。
それができるのは自分しかいないという事実と冷静に向かい合いながら。
アリアウェットはシルフェの手を引いて街を連れまわしている。
シルフェもアリアウェットに引っ張られながらも小走りでついていく。
シルフェが誰かと手をつなぐのは、ガルの父であるおじさん、ガルに続いて三人目の経験だ。
なのでシルフェはアリアウェットの手の柔らかさを新鮮に感じながら後をついていく。
さて、一方のアリアウェット。
「シルフェ、クッキーのお店を探すのよ!」
彼女は必死になって焼き菓子店を探している。
アリアウェットに言われたようにシルフェも店を探しながら思い出した。
クッキーは、おじさんがたまに街に行ったときに買ってきてくれた、とっても美味しいお菓子のこと。
おじさんは、クッキーは日持ちがするから土産には便利だといつも笑っていた。
日持ち?
「ねえアリア、日持ちがしないお菓子って、どんなものがあるの?」
シルフェの素朴な疑問にアリアウェットはその場で急停止すると、シルフェは勢いでアリアの頭にその鼻先をぶつけてしまう。
「そうね、シルフェの言うとおりだわ!」
アリアウェットは、シルフェがぶつかった後ろ頭をさすりながら、鼻先を襲った衝撃にその場に座り込んでしまったシルフェの腕を引っ張り無理やり引き起こすと、高らかに宣言した。
「そうよ! まずは日持ちがしないフルーツや生クリームがたっぷりのケーキを楽しむべきだわ! シルフェ、カフェを探すのよ!」
しばらくの探索後、二人はおしゃれなカフェを見つけた。
そこで彼女たちはフルーツと生クリームで飾られた、ふわふわのケーキと紅茶を楽しんだ。
それらはシルフェにとって初めての経験であった。
「アリア、これ、とっても美味しいの!」
「でしょ、シルフェ! ああん! 幸せだわ!」
これはアリアウェットにとっても、ジルとの以来のお茶会であり、余りのケーキの美味しさに、二人はついついおかわりをしてしまう。
楽しいときは過ぎ、お会計の時間がやってくる。
代金はお一人様銀貨二枚なり。
事態に気づいたアリアウェットの顔色がさっと変わる。
残金は銀貨2枚となってしまった。
ディアンが先頭を歩き、派手な背負籠を担いでいるガルが続く。
更にその後ろからは、まるでショッピングの帰りかのようにトートバッグを肩にかけ、談笑しながらアリアウェットとシルフェがついてきている。
冒険者の店に到着すると、すぐにディアンは男どもに歓迎された。
「ディアンソンさん、こんちわっす」
「お疲れ様です、ディアンソンさん」
などと、兵士たちは相変わらずディアンをアイドルかのように取り囲んでいく。
一方で冒険者達の視線は一斉にガルの背に集まった。
そのお世辞にもセンスが良いとは言えないド派手な背負籠は俄然注目の的になっている。
兵士たちの輪を愛想笑いを浮かべながらかいくぐったディアンは、受付嬢に向かうと彼女が気持ち悪くならないように目線を逸らしながら、ガルの背を指さした。
「この中に砂漠蜥蜴の尻尾が百以上はあるはずだ。登録料に足りるかどうか、確認してくれ」
続けてガルに背負籠ごと尻尾を受付カウンターに持ち込むように指示を出してやる。
「それじゃ、一服するか」
「うっす、兄さん」
さて、アリアウェットとシルフェは先にテーブルを陣取ると、何やらごそごそと話をしている。
「ねえシルフェ、唐揚げって知ってる?」
アリアウェットの問いに、シルフェは不思議そうな表情を見せた。
「なら、クッキーって知ってる?」
今度はシルフェが満面の笑顔を見せながら、うんうんと頷いた。
ちょうどそこにディアンとガルが受付から戻ってきた。
「ねえディアン、クッキーを買いに行きたいの!」
「あ?」
突然、アリアウェットが一気に馬鹿姫に戻ってしまったかのようなお願いをしてきたことにディアンは一瞬戸惑ってしまう。
なんだこいつ?
正直アホかとは思いつつも、ディアンはワールストームでアリアウェットが経験した辛い出来事を思い出すと、たまには馬鹿姫にさせておいてもいいかと思い直した。
「わかりました。ではこれでクッキーを買ってらっしゃい」
ディアンは銀貨一枚をアリアウェットに渡してやる。
しかし彼女は不満げな表情で文句たらたら。
「シルフェの分は?」
「そうですか」
アリアウェットの突っ込みに、ディアンは諦めたようにもう一枚銀貨を彼女に渡してやる。
するとアリアウェットの口調が少々変化した。
「ディアン、これでは私とシルフェはクッキーを十枚づつしか買えません。確か旅程は三十日ほどでしたよね」
そろそろ「親衛隊長殿」とか「ディアン様」とか呼ばれそうな雰囲気になってきたことを感じ取ったディアンは、厄除け代わりに銀貨を四枚追加してやる。
これならばクッキーを60枚は購入できるはずだ。
続けて彼はガルとシルフェに聞こえないようにアリアウェットの耳元で囁いた。
「姫様、これが限界ですよ」
「わかったわ」
合計6枚の銀貨を手にしたアリアウェットは、シルフェの手を取ると、お揃いのトートバッグを抱えて街に飛び出していった。
「兄さん、俺にも小遣いをくれ!」
「少し黙ってろ!」
ディアンは調子に乗ったガルを麻痺で黙らせると、今後の旅程について一人で検討を始めた。
それができるのは自分しかいないという事実と冷静に向かい合いながら。
アリアウェットはシルフェの手を引いて街を連れまわしている。
シルフェもアリアウェットに引っ張られながらも小走りでついていく。
シルフェが誰かと手をつなぐのは、ガルの父であるおじさん、ガルに続いて三人目の経験だ。
なのでシルフェはアリアウェットの手の柔らかさを新鮮に感じながら後をついていく。
さて、一方のアリアウェット。
「シルフェ、クッキーのお店を探すのよ!」
彼女は必死になって焼き菓子店を探している。
アリアウェットに言われたようにシルフェも店を探しながら思い出した。
クッキーは、おじさんがたまに街に行ったときに買ってきてくれた、とっても美味しいお菓子のこと。
おじさんは、クッキーは日持ちがするから土産には便利だといつも笑っていた。
日持ち?
「ねえアリア、日持ちがしないお菓子って、どんなものがあるの?」
シルフェの素朴な疑問にアリアウェットはその場で急停止すると、シルフェは勢いでアリアの頭にその鼻先をぶつけてしまう。
「そうね、シルフェの言うとおりだわ!」
アリアウェットは、シルフェがぶつかった後ろ頭をさすりながら、鼻先を襲った衝撃にその場に座り込んでしまったシルフェの腕を引っ張り無理やり引き起こすと、高らかに宣言した。
「そうよ! まずは日持ちがしないフルーツや生クリームがたっぷりのケーキを楽しむべきだわ! シルフェ、カフェを探すのよ!」
しばらくの探索後、二人はおしゃれなカフェを見つけた。
そこで彼女たちはフルーツと生クリームで飾られた、ふわふわのケーキと紅茶を楽しんだ。
それらはシルフェにとって初めての経験であった。
「アリア、これ、とっても美味しいの!」
「でしょ、シルフェ! ああん! 幸せだわ!」
これはアリアウェットにとっても、ジルとの以来のお茶会であり、余りのケーキの美味しさに、二人はついついおかわりをしてしまう。
楽しいときは過ぎ、お会計の時間がやってくる。
代金はお一人様銀貨二枚なり。
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