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性教育の時間

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「ねえアージュ、せいよくしょりってどんなことなのかしら?」

 ただいま三人は、市場終了間際の安売りで手に入れた骨付きチキンを、アージュが甘辛く照り焼きにした夕食を堪能中。
 しかしベースキャンプでの出会いが三人の心に引っかかっていたためか、三人ともしばらくは無言だった。
 その沈黙を破ったのがナイである。

 するとアージュはナイの疑問に掟破りの逆質問を返した。
「ナイねーちゃん、セックスって知ってるか?」
「せっくす?」

 そこに自慢げにクラウスが胸を張る。
「ボクたちのちんちんがタンポポになったら、おねーちゃんたちのお花畑にぶわっと撒くんだよ」
「ちんちん、たんぽぽ、おはなばたけ?」

 ……。
 
 実はアージュもクラウスもこの辺りの知識はすっぽりと抜けている。

 それは師匠たち五色の乙女があえてはぐらかしていたのも理由の一つではあるが、そもそもこいつらはしょせん精通前のガキなのだ。
 ちんちんが大きくなるのもおしっこを我慢しすぎたときくらいしか起こりえない。

 それにこの二人は、大きくなったちんちんよりも小さく固まったちんちん、いわゆる「ドリルちんちん」の研究に余念がないのである。

「大人の男は定期的にタンポポになりたくなるから、穴にちんちんを入れるんだと。それが性欲処理だって麦わら帽子のおっさん元魔王で現在はヒモが言ってたぞ」
 聞きかじりの知識を自慢げに披露するアージュにクラウスも追随する。
「だからボクたちは大人になるために、日夜、掘削ちんちんエクスカバイトちんちんの研究に余念がないのさ!」

 ちなみに「エクスカバイトちんちん」というのは、大地竜ランドドラゴンが得意とする掘削腕エクスカバイトアーム(両腕に細かな岩石の粒を大量に回転させ、ドリルの要領で大地を掘り進む魔法)をドリルちんちんに応用するという二人の野望である。
 だからといって何に穴を開けるのかまでは、二人には考えがいたっていないのではあるが。
 
 こうした二人のやり取りに、ナイは母さまの言葉を思い出した。
 
「ねえアージュ、クラウス。それって交尾のことかしら」

「交尾?」
「交尾?」

 二人にとっては、ナイから初めて発せられた未知の知識である。

「あのね、子供を欲しいと思った雄と出会うと、鎌先から染み出す麻痺毒パラライズ魅了毒チャームに変化するの」
 ナイの説明に二人はふんふんと聞き入る。
 
「そしたら身体を綺麗に清めてから、月の日がやってくる直前に、雄に身体を委ねるの」
「ふんふん」

「ややこを授かるまで、飲まず食わずで身を委ねるの」
「そしたら?」

「ややこを授かったら、雄に感謝しながら今度は麻痺毒を打ち込んで、それから頭から美味しく頂くの」

「食われるのかよ」
「うええ」

 ナイの説明にアージュとクラウスは思わずドン引きしてしまう。

「するってえと、ナイねーちゃんには親父はいないってことか?」
「親父?」
「父さまのことだよ。ナイの母さまの旦那さま」
 アージュとクラウスからの質問に、今度はナイが悩んでしまう。
 父さまってなんだろう?
 
「雄は残さず美味しく頂かなければなりませんって母さまから教わったの」

 その回答に今度はアージュとクラウスが悩んでしまう。
 ナイの言う通りならば、彼ら二人の父親はいったい何者なんだろう?
 
「そんじゃオレの親父は何者なんだ?」
「父さまって、ボクの本当の父さまじゃないの?」
「少なくとも二人が生まれたってことは、二人の母さまは二人の雄を美味しく頂いているはずよ。だって二人が生まれるには滋養じようが必要だもの」

 うーん。
 
 すると、ナイがぽんと手のひらを叩いた。

「わかったわ! 多分こういうことよ」

 ナイの出した結論。
 それは、アージュやクラウスの母さまと暮らしている雄は、次の交尾の相手ではないかという推論だ。
 
「私たちの種族は広いなわばりが必要だから、母さまは荒野を私に譲ってくれたけれど、人間は普段から集団で暮らしているから、なわばりをややこに譲る必要もないものね!」

「すげえなナイ!」
「理論的だよナイおねーちゃん!」

 ということで、見事アージュとクラウスの知識には、交尾を終えたら雄は頭からぽりぽりかじられるものだと植えつけられたのである。
 
「こりゃオレらも子供を残すために最高のねーちゃんと交尾しなきゃな」
「そだね、ぽりぽりされても我が人生に悔いなしが大事だよね!」

 二人は謎の興奮に包まれる。
 
「で、ナイねーちゃん。具体的には交尾ってのはどうするんだ?」
「そだね。やり方は学んでおかないとね!」

 すると、ナイはちょっと恥ずかしそうな表情を見せながら、ぼそぼそと続けた。
 
「雄のおちんちんを、月の前におしっこの穴に入れてもらうらしいわ」

 すると、途端にアージュとクラウスの表情にあからさまな嫌悪が浮かび上がる。
 
さび臭い股ぐらにちんちんを入れるだと? ふざけんじゃねえ」
「おしっこの穴におしっこの穴を入れちゃったら時空が歪んじゃうかも」
「でも、母さまはそう教えてくれたから」

「じゃあナイは、おしっこの穴にちんちんを入れてもらいたいのか?」
 アージュの突っ込みに、ナイはぶんぶんと首を左右に振る。
「やだ、気持ち悪い」
 そう、母さまから聞き流していたときには気にもならなかったが、こうして改めて自ら説明してみるとわかる。
 その行為が非常にキモいことだということが。
 
「大人って汚いね」

 クラウスの呟きにアージュとナイはうんうんと頷くと、この話をするのをやめた。
 
 そして就寝。
 
 すうすうと寝息を立てるナイの両脇で、アージュとクラウスがさっきの続きをぼそぼそと続けている。
 
「ねえアージュ、アージュはナイのおしっこの穴にちんちん入れたい?」
「ふざけんなオレはこれがあれば十分だ! その話はヤメヤメさっさと寝ろ!」
 と、アージュはナイの横おっぱいに顔をうずめてしまう。

「そだよね」

 クラウスは思う。
 ボクもナイのおっぱいが好き。
 でも何故か思い出した。
 ある晩に、父さまと母さまが母さまのベッドで全裸フリースタイルレスリングに汗を流していたことを。
 
「あれって、交尾だったのかな」

 しかしクラウスも忘れることにした。
 あれが交尾なら父さんはその後母さんに頭からぽりぽりのはずだもの。
 
 思わず身震いしたクラウスも、全てを忘れるかのようにナイの横おっぱいに顔をうずめたのである。
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