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拷問しまーす

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 若草髪の少女が一人、たわわな胸を右腕で、恥ずかしいところを左腕で隠しながら、全裸で正座をしている。
 その前では金髪の少年と黒髪の少年が、不愉快そうな表情をしながら、腕を組んで仁王立ちして並んでいる。
 
 それはつい先ほどのこと。
 少年二人は気を失った少女を伴って、身ぐるみを剥いだおっさんどもからとんずらしつつ、荒野と草原の境に発見した水場を訪れていた。
 そこで二人は少女を草むらに横たえると、彼女の身にまとわりついている小汚いぼろきれを引きはがし、垢臭い少女の裸体を二人で文句を言いながらも、水で絞ったタオルでせっせと拭いていたのである。
 
 その理由は「偽装保護者でっち上げ、および非常時の収入確保」のためだ。
 アージュとクラウスは、自分たちの見た目が幼いことは理解している。
 一方で少女は、年のころは十五・六歳に見えるし、おっさんどもと堂々と対峙していた姿からみても、どうやらこの世界においては、一人前の女だとは認識されているようだ。
 
 なのでアージュとクラウスは、この薄汚い少女をそれなりの姿に整え、背後から操ろうと画策していた。
 ところで「非常時の収入確保」というのは、何か致命的なことが起きてしまった際に、この娘を売っぱらって当座の資金を手に入れるということだ。

 ところが、目を覚ました少女は、そんな彼らの好意?も理解せず、悲鳴とともに暴れ出してしまった。
 しかし二人は相変わらず容赦なし。

 アージュは無言でいきなり腹パンを少女にぶち込んだ。
 不意にみぞおちへ強烈な一撃を喰らった少女は、せき込みながら呼吸困難に陥ってしまう。
 そこにクラウスが続けてこの魔法をぶち込んだ。
 
こちょこちょティックル
 この魔法はよく知られた初級魔法であり、本来は魔術学校で魔法の効果を体感するために生徒同士が互いにかけあうものだ。

 効果は魔法名のとおり。
 そう、全身をくすぐる魔法だ。
 お互いにこの魔法を唱えあった生徒たちは、魔法を発動させる感覚や、魔法を受ける感覚を安全に体感できる。
 適度な魔力であれば。
 
 ところが、クラウスは数倍の魔力をもってこの魔法を唱えた。
 しかも少女の身体には、既にクラウスが「防御破壊ディストラクションニードル」を撃ちこんでいる。
 
 彼女が乱戦時に「赤子に戻った」と感じたのは、身体から魔法抵抗力の一切を奪われた感覚による。
 ディストラクションニードルの効果は「魔法抵抗力の消去」
 しかもこの魔法自体も抵抗一切不可というおまけつき。

 この魔法単体では意味がない。
 しかしながら、この魔法はクラウスの姉であるクレアが操る術式で最凶とされている。
 なぜなら、ディストラクションニードルに続けて放たれる魔法は、その効果を百パーセント相手に発揮させるからなのだ。
 
 通常ならば魔法が通じない相手にも強制的に魔法を通してしまう遺失最上級状態異常魔法。
 それがディストラクションニードルなのである。
 ちなみに使い手はクレアと弟のクラウスだけ。
 クレアは両親や元魔王にもこの術式を開示していない。

 つまり少女は魔法抵抗力を引き剥がされたところに、数倍増しのティックルを全身に食らったということになる。
 途端に少女の全身にくまなく容赦ない「こちょこちょ」が襲いかかる。

 それは正真正銘の「拷問」であった。
 
 少女はもだえ出す。
「だめ、くすぐったい!」

 少女は髪を振り乱す。
「やだ、やだだめ、だめだったら!」

 少女はその身をねじ切るかのようによじる。
「お願いもう許して、死んじゃう!」

 少女は全身を震わせる。
「ああーん!」

 少女は失禁しつつ失神した。
 
 で、最初の場面に戻る。
 次に少女の身体を襲ったのは、横っ面を張り倒される感覚だった。
 頬の痛みに少女が目を覚ますと、すぐさま彼女に命令が与えられた。
 
「おいクソアマ、まずは正座な」
 アージュからの命令に、とっさに少女は指示に従い、半ば反射的にその場に正座をした。

「あーあ、おしっこ漏らしちゃって。また洗い直しだよ」
 クラウスの迷惑そうな呟きに、少女は失禁してしまったことに気づき、恥ずかしそうに頬を赤らめながらうつむいてしまう。

「まあいいや。とりあえずお前、自分で水浴びして来い。逃げようとしたら、もう一回こちょこちょな」
「こちょこちょ」の響きに少女は恐怖したかのような表情で顔をあげると、いやいやをしながらもゆっくりと立ち上がり、よろめきながら水場にその身を晒していった。

「股ぐらも綺麗にしとけよー」
「髪もちゃんと洗うんだよー」

 などと指示なのか晒しなのかもわからない二人の罵声を浴びながら、少女はその身に何が起きたのかもわからずに、久しぶりの水浴びを行った。
 彼女にとって水浴びは食事の前にするもの。
 なぜなら仮の前に水浴びをしてしまうと、彼女自身が発する香りに獲物が気づいてしまい、警戒されてしまうから。
 
「そろそろいいだろ、あがってこーい」
 少女は金髪少年の指示に従うように、前を隠しながら、洗いざらしの髪のままで少年たちが待つ草むらにとぼとぼと向かった。
 すると不意に彼女の鼻を美味しそうな香りが刺激する。

「早くおいで」
 黒髪少年にそううながされた直後、彼女の頭上に柔らかなタオルがふわりと投げかけられた。
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