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世紀末なマグロ漁に向かうスマッシュさん
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ここはいつもの食堂。
ミトとスマッシュはいつものようにメニューを開いたが、カッツェはなにやら呪文を唱えている。
「ん? カッツェ、何をやってんだい」
「あ、ミト姉さま、これはトランスポイントというスキルですよ。ライフポイントとメンタルポイントの入れ替えができるんです」
カッツェは自らに唱えたトランスポイントによって、彼女のライフポイントを70から80に回復させる一方で、精神力は60から50に減少させた。
そこにスキル使用分の1ポイントが減少するので、カッツェのメンタルポイントは49/80となる。
「メンタルポイントを31回復させるためには六千ゼルのスペシャルストロベリーパフェを注文しなきゃならないんです!」
「ああそうかい、好きにしな」
ミトはカッツェが「でっかいパフェシリーズ」を「回復」の理由付けのもとに制覇するつもりだろうと直感した。
恐らくカッツェの中の人はそういう無茶にチャレンジしたがる年代なのだろう。
ところがスマッシュがカッツェのスキルに食いついた。
「ちょっと待てカッツェ、そのスキルは他者にも使えるのか?」
「うん、スマッシュさん。というか、本来はそっちの使い方が正しいんだけどね」
戦闘においてはよほどのことがない限り、ライフポイントよりも先にメンタルポイントが減少してしまう。
なのでメンタルポイントが底をついてしまうような緊急事態の際には、ライフポイントを削ってでもメンタルポイントを回復させる必要がある。
特にスマッシュのような、ライフポイントがメンタルポイントを上回っており、直接戦闘で互いのメンタルポイントを削り合うような種族に対しては非常に有効なスキルといえる。
「ということは、俺のメンタルポイントがゼロになっても、お前がいれば回復できるということか?」
「回復じゃなくて、ライフポイントを削って、メンタルポイントに回すだけだよ」
「うむ。それで十分だ」
なぜか満足そうなスマッシュとカッツェの会話はどうでもいいとばかりに、ミトは83/110のメンタルポイントを回復するためという理由で、三千ゼルの「地元の高級白ワイン」を注文した。
スマッシュも105/110のライフポイント回復のために、千ゼルの「タン焼き」と、39/50のメンタルポイントを回復するための、二千ゼルの「ビール漢ジョッキ」を注文した。
「ところで鮪巨人の攻略はどうすんだい?」
ワイングラスを優雅に揺らせながらミトがスマッシュに尋ねた。
「うむ、そこでちょっと試したいことがあってな。それにはカッツェの協力が必要なんだが」
「なんですか?」
スマッシュからの要請にカッツェはクリームたっぷりのロングスプーンを取り落としそうになってしまう。
「うえ。スマッシュさん、マジですか? って、私がそれやるんですか?」
「うむ、ミトよりもお前のほうが適任だ」
漢ジョッキをあおった後、スマッシュはカッツェに改めて真摯に向かい合った。
「カッツェ、あたしもスマッシュの気持ちはわかるよ」
ミトもスマッシュへのフォローを入れている。
しかしカッツェには、ミトの口元が笑いをこらえているようにしか見えない。
ホント素直な姉さまだ。
「なあカッツェ、協力してくれないか?」
ここでスマッシュのダメ押しが入る。
「わかりました……」
カッツェはパフェを平らげるころには、降参とばかりにスマッシュに返事をした。
スマッシュとカッツェの会話が終わったところで、今度はミトがカッツェに自分のコマンドページを開いた。
「ところでカッツェ、このナイトメアってスキルなんだけど、消費するのがメンタルポイントじゃなくてライフポイントになっているんだよ。これはバグか何かかい?」
「ちょっと待ってくださいね」
カッツェは手慣れた様子でコマンドページの検索を始める。
「これかな? って!」
カッツェはマニュアルの内容に目を剥いた。
続けてカッツェはミトのスキル「ナイトメア」の情報もチェックしていく。
ちなみにミトとスマッシュのコマンドページはインベントリも含め、カッツェに対してすべて開放されている。
「姉さま、それはレアスキルですよ!」
「何だいそれは?」
興奮気味のカッツェは自分のことのように説明を始めていく。
「まず、ライフポイントを使用するのはごく一部のレアスキルだそうです。姉さまのナイトメアは、相手がプレイヤーならメンタルポイントに対して、相手がモンスターならライフポイントに対してダメージを与えるものですよ! それに付帯効果として混乱が相手に付加されるんですって!」
「大げさだねえ」
ミトはいまいちこのスキルのすごさが理解できていないようだ。
カッツェにはそれがいまいち不満だったが、今後使用するタイミングを姉さまに教えてあげれば効果を実感するかなと前向きに考えることにした。
「俺にもよくわからんが、食事も終わったことだし次に行くとしよう」
ということで、新規取得のスキル効果を確認した3人は食事を終えると、次のミッションに向かった。
ここは南の海岸付近。
「鮪巨人はこの辺に出没するらしいですよ。 あ、見つけた!」
カッツェが指差した方向には、巨大なマグロの身体から手足を生やしている、その辺の落書きでよく見かける「魚人」そのものの姿があった。
「またベタな姿だねえ」
「さすがの俺もあれを掘る気にはならんな」
巨人の余りにも人外な姿にスマッシュはヤル気をそがれてしまう。
「だから妙に冷めないで頑張りましょうよ! 姉さま、スマッシュさん」
「ミッションであるから仕方がないな。それではカッツェ、打ち合わせ通りに頼む」
先行してマグロ巨人に向かっていくスマッシュにミトとカッツェは後ろからエールを送る。
「やばくなったらこっちも手を出すからね」
「スマッシュさん頑張れー!」
二人は岩陰に身を隠し、スマッシュは一人鮪巨人の前に立ちはだかった。
スマッシュの姿を見つけた鮪巨人も、地響きを立てながらスマッシュに近付いていく。
対峙する鬼と巨人。
巨人は鬼よりもさらに頭一つ大きい。
◇ミッションLv7 クッキングランクノービス以上限定 「鮪巨人を倒せ!」」を開始します◇
「行くぞ!」
「キチキチキチキチ!」
スマッシュの気合に鮪巨人も金属をこすり合わせたような鳴き声で答えた。
続けて鬼と巨人は殴り合いを開始した。
「うぐっ……」
鮪巨人の巨大な拳がスマッシュの腹にめり込む。
一方でスマッシュの拳は巨人の分厚い鱗に阻まれ、なかなか相手に通じない。
スマッシュは防具のおかげでライフポイントの減少は最小限にとどめているが、メンタルポイントは徐々に削られていく。
すると、鮪巨人の右拳が突然オレンジの光りに包まれた!
「キチキチ!(鮪帝拳!) キチキチ!(鮪剛拳破!)」
雄叫びとともにオレンジの光球が鮪巨人の拳から放たれ、それはスマッシュの全身を捉えた。
スマッシュは両腕をクロスさせ耐えようとするも、そのあまりの圧力に耐え切れず一気に押し出されてしまう。
スマッシュの両踵が地面を抉り、轍のような跡を残していく。
◇メンタルポイント》がゼロになりました◇
「ぐはあっ」
メンタルポイントがゼロとなったスマッシュはその場に崩れ落ちてしまう。
ところがそこに乙女の叫びが響いた!
「スマアアアアアアアッシュッ!」
「ぬおおおおおおおおお!」
なんと、大地の鳴動をBGMに再びスマッシュは立ち上がったのだ。
同時に鮪巨人に向けてオートマチックスキルを発動する。
「ラッシュ!うありゃりゃりゃりゃりゃりゃぁ!」」
スマッシュの拳が無数の軌跡とともに鮪巨人に叩き込まれた。
続けて、スマッシュは両の拳を握り合わせると、それを振り上げつつ大地を蹴った。
「アームズハンマー!うおおおおりゃぁぁぁぁぁ!」
スマッシュの握られた拳が鮪巨人の頭にハンマーのごとく振り下ろされる。
ぐしゃっ。
鮪巨人はスマッシュによって脳天を砕かれ、仰向けに倒れこんだ。
◇ミッションLv7 クッキングランクノービス以上限定 「鮪巨人を倒せ!」成功です◇
「良い戦いだった」
満足したスマッシュの後ろで、ミトは笑い転げ、カッツェは恥ずかしくて顔を真っ赤にしている。
そう、スマッシュは鮪巨人の攻撃を受けることによってあえて自身のメンタルポイントをゼロにし、カッツェの「トランスポイント」で復活させてもらったのだ。
自身の名をを叫ぶ乙女のコール付きで。
「馬鹿だねえ、馬鹿だねえ」
ミトは相変わらず腹を抱えながらひーひー笑っている。
「スマッシュさん、もうこんなの嫌なんですけど」
「まあそう言うな。ロールプレイングというのは、ぶっちゃけ『ごっこ遊び』だろう?」
あこがれであった「北のお星さま師匠」の真似ができたスマッシュは、ご機嫌な様子で鮪巨人の討伐証 一万ゼル 経験値5000と、鮪の赤身 1キログラムを拾い上げた。
さて、街に帰ってきた3人だが、とりあえずお仕事紹介所に討伐証を持ち込む前に、スマッシュが豪快に減らしたポイントを回復しに行くことにする。
「先に治療所に行ってくる」
治療所では、カッツェの予想通り、三千ゼルで30ポイントの回復効果をスマッシュは得た。
現在のスマッシュはライフポイント 35/110 メンタルポイント 50/50なので、2回治療を施し、ライフポイントを95まで回復しておく。
続いてお仕事紹介所へと向かった。
今回もミッション報酬は1人二万七千九百ゼルと経験値5700。
鮪巨人を倒せ!で報酬五千七百ゼルに経験値2900。
締めて報酬三万三千六百ゼルと経験値8600を三人はゲットした。
レベルアップはいつものようにミトさんから。
「また訳わかんないスキルが来たよ」
◇レベル9となりました◇
オートマチックスキル獲得
サキュバスファング 夢魔牙
タフネス 強靭さ 27
デフトネス 器用さ 27+3
クイックネス 機敏さ 46+2
クレバーネス 賢さ 70+5
ノーブルネス 気高さ 999
ビシャスネス 悪辣さ 999
ライフポイント 生命力 50+5/50+5
メンタルポイント 精神力 110+15/110+15
レベル 9
Next 20000(4000)
新たなスキルにゴキゲンなスマッシュさん。
「よしよし。良いスキルだ」
◇レベル9となりました◇
オートマチックスキル獲得
テイクダウン ダウン奪取
タフネス 強靭さ 105+5
デフトネス 器用さ 32+2
クイックネス 機敏さ 53+2
クレバーネス 賢さ 5+1
ノーブルネス 気高さ 0
ビシャスネス 悪辣さ 999
ライフポイント 生命力 95+15/110+15
メンタルポイント 精神力 50+5/50+5
レベル 9
Next 20000(4000)
レベルアップのトリはカッツェさん。
「私のスキルっていったいどこに向かっているの?」
◇レベル9となりました◇
オートマチックスキル獲得
リリーストラップ 罠解除
タフネス 強靭さ 37+3
デフトネス 器用さ 68+2
クイックネス 機敏さ 68+2
クレバーネス 賢さ 27+3
ノーブルネス 気高さ 999
ビシャスネス 悪辣さ 0
ライフポイント 生命力 80+10/80+10
メンタルポイント 精神力 79+10/80+10
レベル 9
Next 20000(4000)
「さてっと、回復の問題もないし、さっきは大笑いさせてもらったし、サクサクっと私のミッションも片付けちゃうかね」
「うっす」
「はーい」
ということで、三人はこのままトカゲ男とヤモリ女をたらしこみに向かうことにした。
ミトとスマッシュはいつものようにメニューを開いたが、カッツェはなにやら呪文を唱えている。
「ん? カッツェ、何をやってんだい」
「あ、ミト姉さま、これはトランスポイントというスキルですよ。ライフポイントとメンタルポイントの入れ替えができるんです」
カッツェは自らに唱えたトランスポイントによって、彼女のライフポイントを70から80に回復させる一方で、精神力は60から50に減少させた。
そこにスキル使用分の1ポイントが減少するので、カッツェのメンタルポイントは49/80となる。
「メンタルポイントを31回復させるためには六千ゼルのスペシャルストロベリーパフェを注文しなきゃならないんです!」
「ああそうかい、好きにしな」
ミトはカッツェが「でっかいパフェシリーズ」を「回復」の理由付けのもとに制覇するつもりだろうと直感した。
恐らくカッツェの中の人はそういう無茶にチャレンジしたがる年代なのだろう。
ところがスマッシュがカッツェのスキルに食いついた。
「ちょっと待てカッツェ、そのスキルは他者にも使えるのか?」
「うん、スマッシュさん。というか、本来はそっちの使い方が正しいんだけどね」
戦闘においてはよほどのことがない限り、ライフポイントよりも先にメンタルポイントが減少してしまう。
なのでメンタルポイントが底をついてしまうような緊急事態の際には、ライフポイントを削ってでもメンタルポイントを回復させる必要がある。
特にスマッシュのような、ライフポイントがメンタルポイントを上回っており、直接戦闘で互いのメンタルポイントを削り合うような種族に対しては非常に有効なスキルといえる。
「ということは、俺のメンタルポイントがゼロになっても、お前がいれば回復できるということか?」
「回復じゃなくて、ライフポイントを削って、メンタルポイントに回すだけだよ」
「うむ。それで十分だ」
なぜか満足そうなスマッシュとカッツェの会話はどうでもいいとばかりに、ミトは83/110のメンタルポイントを回復するためという理由で、三千ゼルの「地元の高級白ワイン」を注文した。
スマッシュも105/110のライフポイント回復のために、千ゼルの「タン焼き」と、39/50のメンタルポイントを回復するための、二千ゼルの「ビール漢ジョッキ」を注文した。
「ところで鮪巨人の攻略はどうすんだい?」
ワイングラスを優雅に揺らせながらミトがスマッシュに尋ねた。
「うむ、そこでちょっと試したいことがあってな。それにはカッツェの協力が必要なんだが」
「なんですか?」
スマッシュからの要請にカッツェはクリームたっぷりのロングスプーンを取り落としそうになってしまう。
「うえ。スマッシュさん、マジですか? って、私がそれやるんですか?」
「うむ、ミトよりもお前のほうが適任だ」
漢ジョッキをあおった後、スマッシュはカッツェに改めて真摯に向かい合った。
「カッツェ、あたしもスマッシュの気持ちはわかるよ」
ミトもスマッシュへのフォローを入れている。
しかしカッツェには、ミトの口元が笑いをこらえているようにしか見えない。
ホント素直な姉さまだ。
「なあカッツェ、協力してくれないか?」
ここでスマッシュのダメ押しが入る。
「わかりました……」
カッツェはパフェを平らげるころには、降参とばかりにスマッシュに返事をした。
スマッシュとカッツェの会話が終わったところで、今度はミトがカッツェに自分のコマンドページを開いた。
「ところでカッツェ、このナイトメアってスキルなんだけど、消費するのがメンタルポイントじゃなくてライフポイントになっているんだよ。これはバグか何かかい?」
「ちょっと待ってくださいね」
カッツェは手慣れた様子でコマンドページの検索を始める。
「これかな? って!」
カッツェはマニュアルの内容に目を剥いた。
続けてカッツェはミトのスキル「ナイトメア」の情報もチェックしていく。
ちなみにミトとスマッシュのコマンドページはインベントリも含め、カッツェに対してすべて開放されている。
「姉さま、それはレアスキルですよ!」
「何だいそれは?」
興奮気味のカッツェは自分のことのように説明を始めていく。
「まず、ライフポイントを使用するのはごく一部のレアスキルだそうです。姉さまのナイトメアは、相手がプレイヤーならメンタルポイントに対して、相手がモンスターならライフポイントに対してダメージを与えるものですよ! それに付帯効果として混乱が相手に付加されるんですって!」
「大げさだねえ」
ミトはいまいちこのスキルのすごさが理解できていないようだ。
カッツェにはそれがいまいち不満だったが、今後使用するタイミングを姉さまに教えてあげれば効果を実感するかなと前向きに考えることにした。
「俺にもよくわからんが、食事も終わったことだし次に行くとしよう」
ということで、新規取得のスキル効果を確認した3人は食事を終えると、次のミッションに向かった。
ここは南の海岸付近。
「鮪巨人はこの辺に出没するらしいですよ。 あ、見つけた!」
カッツェが指差した方向には、巨大なマグロの身体から手足を生やしている、その辺の落書きでよく見かける「魚人」そのものの姿があった。
「またベタな姿だねえ」
「さすがの俺もあれを掘る気にはならんな」
巨人の余りにも人外な姿にスマッシュはヤル気をそがれてしまう。
「だから妙に冷めないで頑張りましょうよ! 姉さま、スマッシュさん」
「ミッションであるから仕方がないな。それではカッツェ、打ち合わせ通りに頼む」
先行してマグロ巨人に向かっていくスマッシュにミトとカッツェは後ろからエールを送る。
「やばくなったらこっちも手を出すからね」
「スマッシュさん頑張れー!」
二人は岩陰に身を隠し、スマッシュは一人鮪巨人の前に立ちはだかった。
スマッシュの姿を見つけた鮪巨人も、地響きを立てながらスマッシュに近付いていく。
対峙する鬼と巨人。
巨人は鬼よりもさらに頭一つ大きい。
◇ミッションLv7 クッキングランクノービス以上限定 「鮪巨人を倒せ!」」を開始します◇
「行くぞ!」
「キチキチキチキチ!」
スマッシュの気合に鮪巨人も金属をこすり合わせたような鳴き声で答えた。
続けて鬼と巨人は殴り合いを開始した。
「うぐっ……」
鮪巨人の巨大な拳がスマッシュの腹にめり込む。
一方でスマッシュの拳は巨人の分厚い鱗に阻まれ、なかなか相手に通じない。
スマッシュは防具のおかげでライフポイントの減少は最小限にとどめているが、メンタルポイントは徐々に削られていく。
すると、鮪巨人の右拳が突然オレンジの光りに包まれた!
「キチキチ!(鮪帝拳!) キチキチ!(鮪剛拳破!)」
雄叫びとともにオレンジの光球が鮪巨人の拳から放たれ、それはスマッシュの全身を捉えた。
スマッシュは両腕をクロスさせ耐えようとするも、そのあまりの圧力に耐え切れず一気に押し出されてしまう。
スマッシュの両踵が地面を抉り、轍のような跡を残していく。
◇メンタルポイント》がゼロになりました◇
「ぐはあっ」
メンタルポイントがゼロとなったスマッシュはその場に崩れ落ちてしまう。
ところがそこに乙女の叫びが響いた!
「スマアアアアアアアッシュッ!」
「ぬおおおおおおおおお!」
なんと、大地の鳴動をBGMに再びスマッシュは立ち上がったのだ。
同時に鮪巨人に向けてオートマチックスキルを発動する。
「ラッシュ!うありゃりゃりゃりゃりゃりゃぁ!」」
スマッシュの拳が無数の軌跡とともに鮪巨人に叩き込まれた。
続けて、スマッシュは両の拳を握り合わせると、それを振り上げつつ大地を蹴った。
「アームズハンマー!うおおおおりゃぁぁぁぁぁ!」
スマッシュの握られた拳が鮪巨人の頭にハンマーのごとく振り下ろされる。
ぐしゃっ。
鮪巨人はスマッシュによって脳天を砕かれ、仰向けに倒れこんだ。
◇ミッションLv7 クッキングランクノービス以上限定 「鮪巨人を倒せ!」成功です◇
「良い戦いだった」
満足したスマッシュの後ろで、ミトは笑い転げ、カッツェは恥ずかしくて顔を真っ赤にしている。
そう、スマッシュは鮪巨人の攻撃を受けることによってあえて自身のメンタルポイントをゼロにし、カッツェの「トランスポイント」で復活させてもらったのだ。
自身の名をを叫ぶ乙女のコール付きで。
「馬鹿だねえ、馬鹿だねえ」
ミトは相変わらず腹を抱えながらひーひー笑っている。
「スマッシュさん、もうこんなの嫌なんですけど」
「まあそう言うな。ロールプレイングというのは、ぶっちゃけ『ごっこ遊び』だろう?」
あこがれであった「北のお星さま師匠」の真似ができたスマッシュは、ご機嫌な様子で鮪巨人の討伐証 一万ゼル 経験値5000と、鮪の赤身 1キログラムを拾い上げた。
さて、街に帰ってきた3人だが、とりあえずお仕事紹介所に討伐証を持ち込む前に、スマッシュが豪快に減らしたポイントを回復しに行くことにする。
「先に治療所に行ってくる」
治療所では、カッツェの予想通り、三千ゼルで30ポイントの回復効果をスマッシュは得た。
現在のスマッシュはライフポイント 35/110 メンタルポイント 50/50なので、2回治療を施し、ライフポイントを95まで回復しておく。
続いてお仕事紹介所へと向かった。
今回もミッション報酬は1人二万七千九百ゼルと経験値5700。
鮪巨人を倒せ!で報酬五千七百ゼルに経験値2900。
締めて報酬三万三千六百ゼルと経験値8600を三人はゲットした。
レベルアップはいつものようにミトさんから。
「また訳わかんないスキルが来たよ」
◇レベル9となりました◇
オートマチックスキル獲得
サキュバスファング 夢魔牙
タフネス 強靭さ 27
デフトネス 器用さ 27+3
クイックネス 機敏さ 46+2
クレバーネス 賢さ 70+5
ノーブルネス 気高さ 999
ビシャスネス 悪辣さ 999
ライフポイント 生命力 50+5/50+5
メンタルポイント 精神力 110+15/110+15
レベル 9
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新たなスキルにゴキゲンなスマッシュさん。
「よしよし。良いスキルだ」
◇レベル9となりました◇
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テイクダウン ダウン奪取
タフネス 強靭さ 105+5
デフトネス 器用さ 32+2
クイックネス 機敏さ 53+2
クレバーネス 賢さ 5+1
ノーブルネス 気高さ 0
ビシャスネス 悪辣さ 999
ライフポイント 生命力 95+15/110+15
メンタルポイント 精神力 50+5/50+5
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レベルアップのトリはカッツェさん。
「私のスキルっていったいどこに向かっているの?」
◇レベル9となりました◇
オートマチックスキル獲得
リリーストラップ 罠解除
タフネス 強靭さ 37+3
デフトネス 器用さ 68+2
クイックネス 機敏さ 68+2
クレバーネス 賢さ 27+3
ノーブルネス 気高さ 999
ビシャスネス 悪辣さ 0
ライフポイント 生命力 80+10/80+10
メンタルポイント 精神力 79+10/80+10
レベル 9
Next 20000(4000)
「さてっと、回復の問題もないし、さっきは大笑いさせてもらったし、サクサクっと私のミッションも片付けちゃうかね」
「うっす」
「はーい」
ということで、三人はこのままトカゲ男とヤモリ女をたらしこみに向かうことにした。
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