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1章

4 どうしようもない闘争本能

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【モンスターハウスへの侵入を確認】

「なんだ?」

 頭に流れるアナウンス。いや、アラーム。

 背後を見ると既にその入り口は土によって塞がれていた。

 オレの中の何かがけたたましく警鐘を鳴らす。

ボロッ……。
 ボロッ……。
  ボロッ……。

 残念ながら聞こえる、複数の壁が同時に崩れる音。その瞬間、考えるでもなくその崩れた一つにショートソードを殴りつけるように叩き込む。

 成否は確認しない。

「次、次、次っ!!」

 6かそこらでそれは打ち止めになった。あれが殴りかかってくる。

 勿論、棍棒で。

    ゴブリンだ。

    オレは横の回転を生かして距離を開けることで何とか回避するが、その先にゴブリン。こちらは予期していなかったのか対応が遅かったのでその回転の力で首を引き裂いた。

    そのゴブリンが倒れ込むのをしり目に、不意打ち野郎を目におさめる。見れば他のゴブリンも立ち上がり始めていた。

「目算10」

 数えている暇がない。囲まれたら終わりだ。比較的ふらついていた一体に盾を前にしてのタックル。

    そのまま駆け抜ける。

    その一体は失神している。迫ってきた一体を振り向くと同時に重心移動で切り裂く。なんとなくつかめてきた。

 左からの攻撃を盾で右に受け流し、そのまま返すように盾でゴブリンを殴る。

 二体同時に殴りかかってくるのを前転で前に転がることで回避しつつ立ち上がる。後ろからきているであろう攻撃を瞬時に低い体勢になることでかわし、そのまま水平にショートソードを振り抜く。

    そのゴブリンの膝が半分ほどまで逝った。力任せにショートソードを引き戻す。

 戦闘継続だ。姿勢を立て直す。盾を前に出し、腰を落とす。右手が重い。筋疲労だ。盾を持つ左手も我慢できないほどではないが痛い。だが、やるしかない。

    頑張れ。オレの腕。まともに立っているのが6体。

「すぅーー、はぁーーー」

一度大きく呼吸した。少しだけ落ち着く。視界が開けるのがわかる。やってやる。やってやるよ。状況は不利。だが、勝つ。

「薄汚い子鬼どもかかってこい!」

 言葉が通じるかはわからない。表情が変わったところを見るにそういうことなんだろう。

 怒りをあらわにして襲ってくるから壁側の一体を盾で殴り飛ばして抜ける。その一体はノクッバック気味だ。

    迫ってくる一体の振り下ろしを真直ぐ受け止め、ショートソードを胸に突き刺す。体を半身にすることで引き抜く。鮮血が飛び散り、オレの顔を濡らす。

    愉快。愉快。実に愉快。テンションをあげろ。気後れしたら負ける!

 ショートソードを逆手に持ち、後ろから迫ってくるゴブリンに刺す。運よく角度があって首に刺さった。少し刃先が欠けたかもしれない。

    それを引き抜きつつも、突進して迫ってくる一体を盾で受け流しつつ、足をかけて転ばせる。

    意外と学校生活の準必須技術って役立つのだなと嘲る。背中からショートソードを叩きつけることでそのまま殺す。

 あと3体。

 剣を振るえ。

 盾を構えろ。

 腰を落とせ。

 前を向け。

 既にアドレナリンと気力だけで立っているようなものだ。

    迫りくるゴブリンの攻撃を回避し、ショートソードを振るう。刃こぼれは酷くなっていて、曲がっていないのが奇跡だ。【斬る】や【刺す】のスキルが働いているのかもしれない。

「攻撃をくらうな。最低でも流せ」

    自分に言い聞かせる。幾度もの攻撃で左腕が痺れているのは最早気にする暇がない。そういうものだとして左腕を使う。

    このゴブリンはこの見た目で俺とタメを張るくらいには力がある。全くもって愉快極まりない。

 視野は広く。注目しすぎない。

「ぎぃゃぁっ!」

 間抜けな声で殴りかかってくるのを半身になることで回避し、そのまま盾で頭を殴打。ついでに顔面に膝をかました。

    当たり前のようにその背後からもう一体が振り下ろしてくるので、振り下ろさせる棍棒に盾を合わせて軌道をそらし、回転の力をもってショートソードを叩き込む。

 何度も何度も、何度も。

 肉が拉げひしゃげ血肉が飛び散る。それは、そのゴブリンが消えるまで続けられた。

 気付くとそのゴブリンは消えていた。小さな小瓶が残されていた。あとは残敵処理だ。のたうち回り、消えていないゴブリンに鉄の塊となったショートソードを振り下ろす。

 血の匂いが酷い。武器の匂いなのか判別がつかない。

 全て終えると、オレは倒れ込んだ。

 不快ではなかった。

「はあ。はあ……。持久力がないのは問題だな。でも楽しい。オレは生きてる」
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