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第30話
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サーラとブレイブは、寝台に寝転がりながら今後について話をした。気付けば寝入っていて、起きた頃に既に朝を迎えていた。
身支度を終え、朝食を済ませるとサーラ達はすぐにミネルヴァと面会をしたいと願い出た。
「既に本日の夜、面会の予定が入っておりますが……」
と告げる使用人は怪訝そうな顔をしながらも、ミネルヴァの側近とスケジュールの調整をしてくれた。
「ミネルヴァ陛下の予定は既に決まっているので時間が取れない可能性もございます。万が一、時間が取れたとしても部屋の設営にお時間をいただきますがよろしいでしょうか」
側近はサーラ達に説明するが、サーラは首を横に振る。
「ミネルヴァ皇帝陛下とお茶をしながら話がしたいだけなのです」
側近は不思議そうにしていたが、すぐにミネルヴァに確認を取ってくれた。
招いてもらっている客人の立場で失礼な態度を取っているのは重々承知している。公務ではなく、個人として話をしなければ、ミネルヴァは対等な立場で見てくれないだろうとサーラは考えていた。
ミネルヴァは当日の申し出にも関わらず、サーラ達との時間を作ることを了承してくれた。
側近は2人を庭園の見える客室に案内をしてくれる。窓から美しい庭が見える席を用意してくれた。
側にはお茶の準備をしている使用人が控えている。
2人が座って待っていると、少ししてから扉が開いた。
「待たせたな。こんな格好で申し訳ない」
ミネルヴァは髪も結うことなく、後ろに流したままだった。着ている服は昨日のような豪奢な衣装ではなく、質素な部屋着だ。
「突然の申し出で失礼いたしました。お時間をいただきありがとうございます」
サーラは立ち上がり頭を下げる。ブレイブも見習うようにしてミネルヴァに頭を下げた。
ミネルヴァは本当に気にしていないらしく、楽しげに自慢の庭について話をしたり、こだわりの茶葉について語ったりした。
「ところで……我に何か話があるのだろう?」
ミネルヴァは鋭い視線をサーラにやった。
彼女の射るような目にも怯むことなく、サーラは見返しながら答える。
「はい。昨日のお話の事です」
「朝からその話か……。良い、話せ」
「昨日は『エゲリア』という1つの国と『シュトルツ族』という1つの民族でお話をいたしました。ですが、少数民族の1つを大国エゲリアが守るとなると、他の国との国交にも影響が出る可能性があることをわたし達は失念しておりました」
その為、ミネルヴァはエゲリアに協力してもらいたいのなら傘下に入れと告げたのだ。一族が傘下に入らないのならば、族長であるブレイブをミネルヴァの配下に置く。
エゲリアに対して何も差し出していないシュトルツ族を守れば、今後エゲリアに対して他の少数民族から助力してくれないかという申し出が殺到するかもしれない。
ミネルヴァはそれを危惧した結果なのだろう。
「私達は一晩考えました。エゲリアの帝都ユノとシュトルツ族とで友好関係を結びたいのです。親善都市として位置付ける事で『国』と一部の少数民族の外交ではなく、一都市同士の交流とするのです」
「帝都とシュトルヴァ領で友好関係を結ぶということか。確かに『国』として動くよりは良かろう」
「友好関係を結んだユノの兵とシュトルツ族の兵との合同軍事訓練中に、サビア軍が侵略して来たので協力して立ち向かうというシナリオはいかがですか?」
サーラは悪戯っぽく笑った。彼女の笑みにつられたようにミネルヴァも微笑みを浮かべる。
「それに今回の件だけでなく、友好関係を結ぶことで今後も交流が出来るようになればと考えています」
「エゲリアの民とシュトルツ族が国境、人種を超えて良い友人として生きていけるように」
ミネルヴァは静かに微笑む。
「良かろう。友好関係を結ぶことでシュトルツ族の優秀な人材が我が国に来るやも。未来の科学の天才がエゲリアだけにいるとは限らぬ」
身支度を終え、朝食を済ませるとサーラ達はすぐにミネルヴァと面会をしたいと願い出た。
「既に本日の夜、面会の予定が入っておりますが……」
と告げる使用人は怪訝そうな顔をしながらも、ミネルヴァの側近とスケジュールの調整をしてくれた。
「ミネルヴァ陛下の予定は既に決まっているので時間が取れない可能性もございます。万が一、時間が取れたとしても部屋の設営にお時間をいただきますがよろしいでしょうか」
側近はサーラ達に説明するが、サーラは首を横に振る。
「ミネルヴァ皇帝陛下とお茶をしながら話がしたいだけなのです」
側近は不思議そうにしていたが、すぐにミネルヴァに確認を取ってくれた。
招いてもらっている客人の立場で失礼な態度を取っているのは重々承知している。公務ではなく、個人として話をしなければ、ミネルヴァは対等な立場で見てくれないだろうとサーラは考えていた。
ミネルヴァは当日の申し出にも関わらず、サーラ達との時間を作ることを了承してくれた。
側近は2人を庭園の見える客室に案内をしてくれる。窓から美しい庭が見える席を用意してくれた。
側にはお茶の準備をしている使用人が控えている。
2人が座って待っていると、少ししてから扉が開いた。
「待たせたな。こんな格好で申し訳ない」
ミネルヴァは髪も結うことなく、後ろに流したままだった。着ている服は昨日のような豪奢な衣装ではなく、質素な部屋着だ。
「突然の申し出で失礼いたしました。お時間をいただきありがとうございます」
サーラは立ち上がり頭を下げる。ブレイブも見習うようにしてミネルヴァに頭を下げた。
ミネルヴァは本当に気にしていないらしく、楽しげに自慢の庭について話をしたり、こだわりの茶葉について語ったりした。
「ところで……我に何か話があるのだろう?」
ミネルヴァは鋭い視線をサーラにやった。
彼女の射るような目にも怯むことなく、サーラは見返しながら答える。
「はい。昨日のお話の事です」
「朝からその話か……。良い、話せ」
「昨日は『エゲリア』という1つの国と『シュトルツ族』という1つの民族でお話をいたしました。ですが、少数民族の1つを大国エゲリアが守るとなると、他の国との国交にも影響が出る可能性があることをわたし達は失念しておりました」
その為、ミネルヴァはエゲリアに協力してもらいたいのなら傘下に入れと告げたのだ。一族が傘下に入らないのならば、族長であるブレイブをミネルヴァの配下に置く。
エゲリアに対して何も差し出していないシュトルツ族を守れば、今後エゲリアに対して他の少数民族から助力してくれないかという申し出が殺到するかもしれない。
ミネルヴァはそれを危惧した結果なのだろう。
「私達は一晩考えました。エゲリアの帝都ユノとシュトルツ族とで友好関係を結びたいのです。親善都市として位置付ける事で『国』と一部の少数民族の外交ではなく、一都市同士の交流とするのです」
「帝都とシュトルヴァ領で友好関係を結ぶということか。確かに『国』として動くよりは良かろう」
「友好関係を結んだユノの兵とシュトルツ族の兵との合同軍事訓練中に、サビア軍が侵略して来たので協力して立ち向かうというシナリオはいかがですか?」
サーラは悪戯っぽく笑った。彼女の笑みにつられたようにミネルヴァも微笑みを浮かべる。
「それに今回の件だけでなく、友好関係を結ぶことで今後も交流が出来るようになればと考えています」
「エゲリアの民とシュトルツ族が国境、人種を超えて良い友人として生きていけるように」
ミネルヴァは静かに微笑む。
「良かろう。友好関係を結ぶことでシュトルツ族の優秀な人材が我が国に来るやも。未来の科学の天才がエゲリアだけにいるとは限らぬ」
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