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第2章 出産編

14.ひとりきりの出産(1)

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私が出産したのは一月の初めごろでした。

 ちなみに出産の二日前に行った妊婦健診では、子宮口はまだ1センチも開いていませんでした。

 友達の話によると、出産の一週間くらい前には子宮口が1.5センチ開いていたとのことだったし、出産予定日までまだ一週間あったので、出産はまだまだ先だなと思ってすっかり油断していました。

 母親も「初産は予定日より遅れるパターンが多いから焦らなくて大丈夫」と言っていましたし。

 なので、出産日前日は、近所にあるイオンまで歩いて行き、いつもと同じように買い物していました。

 すると帰りには何だか少し腰が痛くなってきたような……?

 歩きすぎかな、なんだか少しお腹も張ってるみたいだし。

 そう思った私は、夜の九時ころには腰にホッカイロを貼って就寝。

 ですが夜中の一時頃、私は腹痛で目が覚めました。

 最近便秘ぎみだったので、便秘かな?と思いつつも、一応予定日も近いので陣痛カウンターのアプリを起動。

 しかしおよそ十分おきではあったものの、五分の時あれば十五分の時もあり、痛みも軽い生理痛程度だったので陣痛かどうかは半信半疑でした。

 実はこの一週間前くらいにも似たような腹痛があったのですが、その時は朝になったら治ったので、とりあえず朝まで待ってみることにしました。

 そうこうしているうちに、痛みがそんなに強くなかったこともあり私は寝てしまいました。

 そして朝の六時頃に起きると、痛みは収まっておらず、間隔は七、八分程度になっていました。

 これは……陣痛なのか??

 まだ半信半疑の状態でしたが、初産婦の場合、陣痛が十分間隔になったら病院に行かなくてはならないと言われていたので、とりあえず病院に電話してみることに。

 すると「朝八時に外来が開くのでその時来てください。もし我慢できない痛みや破水があったら教えてください」とのこと。

 えっ、そんなゆっくりでいいの?

 とりあえず朝ごはんを食べてからゆっくり病院に行くか~と思っていたところ、お腹の中で何かが

 ブルルン!!!!

 と弾けるような音がしました。続いて

 バッシャー! 

 と水が溢れパンツもズボンもびしょびしょに!

 陣痛の時は半信半疑でよく分からなかった私も、この時は「ウワーッ! これは破水だ!!」とはっきり分かりました。

 急いで再び病院に連絡し、救急外来に。

 この時診察したお医者さんによると、この時の子宮口の開きは二センチ。

医者「羊水が少し少ないねー。このままだと危険かもしれないから、とりあえず帝王切開の準備も並行して進めておくね」

 えっ、まさかの帝王切開!?

 そして陣痛室に運ばれた私ですが、痛みはどんどん強くなってきます。その様子を心配そうに見ていた両親。ですが――

母親「初産婦は産まれるまで時間がかかるし、まだしばらく産まれないだろうから一度家に帰るわ!」

 生まれるのはまだまだ先だと思った両親は、なんと帰宅してしまったのです。

 家から病院まで徒歩三分だし、いざとなったらすぐに駆けつけられると思ったのでしょう。病院にいてもやることも無いですし。

 しかし痛みはどんどん強くなり……。

 看護師「子宮口もう五センチ開いてますね。ご両親はどこへ? 旦那さんは来てくれるんですよね!?」オロオロ

私「旦那は少し離れた所に住んでて、もうすぐ着くとは思うんですけど。親はいったん
家に戻って……」

看護師「そうなんですね。陣痛の時に誰か腰をさすってくれたりする人がいるだけで全然違うんですが……。万が一手術になったりした時にも誰かがいないと困るし」
 
 とりあえず親や旦那に産まれそうだと連絡するものの、いつまで経っても親も旦那も来ず――

「痛たたたっ!」

 ついにその時はやって来ました。

「赤ちゃんだいぶ降りてきてますね、分娩室に移動しましょう!」

「子宮口九センチ開いてます」

「ご家族の方ははまだ来ないんですか!?」

 結局、私は一人で出産することになったのでした。


(つづく)
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