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5.お姉さまと魔法学園
131.お姉様と学園祭の王子様
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そしてついに、文化祭が始まった。
「わー、お姉様カッコイイ!!」
モアが俺をの王子様姿を見て目を輝かせる。
白いブラウスに青地に金のベスト、青のズボンに黒い皮のブーツ。我ながらよく似合ってると思う。胸を潰してるから少し苦しいけど。
「へへ、ありがと。モアも可愛いぜ」
「へへへー、ありがと♡」
モアがクルリと回る。白いブラウスに黒いシンプルなワンピースで、露出は少ないんだけど、それがまた清楚で可愛らしい。
ああ、まさかモアのメイド服姿が見れるなんて……眼福!!
俺が感激していると、メイクの係に呼ばれる。
「王子様! メイクがまだ終わってませんよ!!」
「ああ、悪い、悪い」
急いでメイク係の前に座る。
「男役でもメイクするんだな」
「そうしないと舞台で映えませんから。一見濃く見えますが、ライトが結構当たるから客席からはこれぐらいで丁度よく見えますよ」
「へぇ、そういうものなのか」
メイクさんとそんな話をしていると、横に誰か腰掛けた。
「準備は順調?」
横にいたのは黒髪の美女――ツバキ様だ。
「は、はい!」
俺は飛び上がった。
ツバキ様、普段は化粧っ気が全然ない儚げな美人だけど、こうして化粧をすると普段とは全然違い、華やかで神々しくてびっくりしてしまう。
「あら? ツバキ様、クマができてます? 寝不足ですか?」
だけどメイク係はツバキ様の顔を見てまゆをひそめた。
そう言われてみれば、顔色が少し悪いような。てっきり化粧のせいかと思ってた。
「ええ。少し緊張して寝不足だったみたい」
「それはいけません。ちょっと待っててください。コンシーラー取ってきます」
メイク係が席を外す。
「少し緊張するけど、楽しみですね」
俺が笑うと、ツバキ様は少し微笑んでうつむいた。
「……ええ」
「そう言えば、去年はツバキ様が黒薔薇姫を演じて百合の乙女になったって聞きました。凄いですね」
「特に凄くはないわ。黒薔薇姫役の子が体調を崩して、たまたまそうなっただけ。私、本当は目立つのもそんなに好きじゃないし、姉4も、まさかあんな」
「あんな?」
「いえ、何でもないわ」
そこへメイク係が戻ってきてツバキ様のメイクを再開したので、何となく話はうやむやになってしまう。
「ロッカ様、素敵です」
「よくお似合いですわ!!」
そこへロッカの取り巻きの声がして顔を上げる。きらびやかな黒いドレスを身にまとったロッカが頭を下げる。
「ごきげんよう、ツバキ様――と、ミアさん」
俺はおまけかよっ!
まぁ、別にいいんだけどな。
俺は立ち上がると、ロッカを見下ろした。
厚底のブーツを履いているおかげで、いつもより目線が高い。
「よぉ、ロッカ。今日も綺麗だな」
ロッカの目の前で跪き、手を取りキスをする。オマケにウインクもつけて。
キャー! と悲鳴にも似た歓声が上がる。
ロッカの顔が見る見るうちに赤くなっていく。
「な、な、な……」
ワナワナと震えるロッカを背に、俺は手を挙げてその場を去った。
「じゃあな! 舞台でまた会おうぜ」
大舞台を前に、俺は何かが吹っ切れた。
ロッカと下手な小細工競ってもしょうがない。俺は俺のやり方で――俺の「女子力」で勝つ!!
◇
劇が始まる。
舞台用の化粧を施したツバキ様は美貌もオーラも桁違い。
客席は皆ツバキ様の麗しさに息を飲んでる。
だけど――
「なぁ、何かツバキ様、様子が変じゃないか?」
出番を終えた俺がモアに囁くと、モアも心配そうな顔でうなずいた。
「うん、何だか具合が悪いみたい」
ライトの明かりに照らされていても、ツバキ様の顔はかなり青白く見える。
ちょっと寝不足だって言ってたけど、本当にそれだけか?
「おしゃべりしてる場合!? 次、出番よ」
「あ、ああ」
ロッカに急かされて舞台へと進む。
「この私を除け者にするからよ白百合姫! オーホホホホホホホ!!」
ロッカの演技もかなりのものだ。
さすがいつも優等生の仮面をかぶっているだけある。
というか、こういう意地悪な役の方が生き生きしてみえるな。
黒いドレスもロッカの雰囲気に合ってるし。
「それでも……私はあなたを許します。だって私たち、同じ人を愛したライバル同士」
ツバキ様との掛け合いが始まり、物語はいよいよクライマックスへ。
だが、そこで事件は起きた。
グラリ。
突然、ツバキ様の体が揺れた。
ツバキ様!?
嫌な予感がして、俺は急いでツバキ様に駆け寄る。
舞台上に倒れるツバキ様を、急いで抱きとめる。
「ねぇ、あんなシーンあった?」
「ツバキ様、どうしちゃったの?」
ザワザワと観客席にも動揺が広がる。
俺は急いでツバキ様をお姫様抱っこすると叫んだ。
「ひ……姫は具合が悪いようだ。私たちはこれで失礼するよ!!」
咄嗟に適当なセリフをでっち上げ、俺はツバキ様を抱えて舞台袖へと走った。
ツバキ様……大丈夫か!?
「わー、お姉様カッコイイ!!」
モアが俺をの王子様姿を見て目を輝かせる。
白いブラウスに青地に金のベスト、青のズボンに黒い皮のブーツ。我ながらよく似合ってると思う。胸を潰してるから少し苦しいけど。
「へへ、ありがと。モアも可愛いぜ」
「へへへー、ありがと♡」
モアがクルリと回る。白いブラウスに黒いシンプルなワンピースで、露出は少ないんだけど、それがまた清楚で可愛らしい。
ああ、まさかモアのメイド服姿が見れるなんて……眼福!!
俺が感激していると、メイクの係に呼ばれる。
「王子様! メイクがまだ終わってませんよ!!」
「ああ、悪い、悪い」
急いでメイク係の前に座る。
「男役でもメイクするんだな」
「そうしないと舞台で映えませんから。一見濃く見えますが、ライトが結構当たるから客席からはこれぐらいで丁度よく見えますよ」
「へぇ、そういうものなのか」
メイクさんとそんな話をしていると、横に誰か腰掛けた。
「準備は順調?」
横にいたのは黒髪の美女――ツバキ様だ。
「は、はい!」
俺は飛び上がった。
ツバキ様、普段は化粧っ気が全然ない儚げな美人だけど、こうして化粧をすると普段とは全然違い、華やかで神々しくてびっくりしてしまう。
「あら? ツバキ様、クマができてます? 寝不足ですか?」
だけどメイク係はツバキ様の顔を見てまゆをひそめた。
そう言われてみれば、顔色が少し悪いような。てっきり化粧のせいかと思ってた。
「ええ。少し緊張して寝不足だったみたい」
「それはいけません。ちょっと待っててください。コンシーラー取ってきます」
メイク係が席を外す。
「少し緊張するけど、楽しみですね」
俺が笑うと、ツバキ様は少し微笑んでうつむいた。
「……ええ」
「そう言えば、去年はツバキ様が黒薔薇姫を演じて百合の乙女になったって聞きました。凄いですね」
「特に凄くはないわ。黒薔薇姫役の子が体調を崩して、たまたまそうなっただけ。私、本当は目立つのもそんなに好きじゃないし、姉4も、まさかあんな」
「あんな?」
「いえ、何でもないわ」
そこへメイク係が戻ってきてツバキ様のメイクを再開したので、何となく話はうやむやになってしまう。
「ロッカ様、素敵です」
「よくお似合いですわ!!」
そこへロッカの取り巻きの声がして顔を上げる。きらびやかな黒いドレスを身にまとったロッカが頭を下げる。
「ごきげんよう、ツバキ様――と、ミアさん」
俺はおまけかよっ!
まぁ、別にいいんだけどな。
俺は立ち上がると、ロッカを見下ろした。
厚底のブーツを履いているおかげで、いつもより目線が高い。
「よぉ、ロッカ。今日も綺麗だな」
ロッカの目の前で跪き、手を取りキスをする。オマケにウインクもつけて。
キャー! と悲鳴にも似た歓声が上がる。
ロッカの顔が見る見るうちに赤くなっていく。
「な、な、な……」
ワナワナと震えるロッカを背に、俺は手を挙げてその場を去った。
「じゃあな! 舞台でまた会おうぜ」
大舞台を前に、俺は何かが吹っ切れた。
ロッカと下手な小細工競ってもしょうがない。俺は俺のやり方で――俺の「女子力」で勝つ!!
◇
劇が始まる。
舞台用の化粧を施したツバキ様は美貌もオーラも桁違い。
客席は皆ツバキ様の麗しさに息を飲んでる。
だけど――
「なぁ、何かツバキ様、様子が変じゃないか?」
出番を終えた俺がモアに囁くと、モアも心配そうな顔でうなずいた。
「うん、何だか具合が悪いみたい」
ライトの明かりに照らされていても、ツバキ様の顔はかなり青白く見える。
ちょっと寝不足だって言ってたけど、本当にそれだけか?
「おしゃべりしてる場合!? 次、出番よ」
「あ、ああ」
ロッカに急かされて舞台へと進む。
「この私を除け者にするからよ白百合姫! オーホホホホホホホ!!」
ロッカの演技もかなりのものだ。
さすがいつも優等生の仮面をかぶっているだけある。
というか、こういう意地悪な役の方が生き生きしてみえるな。
黒いドレスもロッカの雰囲気に合ってるし。
「それでも……私はあなたを許します。だって私たち、同じ人を愛したライバル同士」
ツバキ様との掛け合いが始まり、物語はいよいよクライマックスへ。
だが、そこで事件は起きた。
グラリ。
突然、ツバキ様の体が揺れた。
ツバキ様!?
嫌な予感がして、俺は急いでツバキ様に駆け寄る。
舞台上に倒れるツバキ様を、急いで抱きとめる。
「ねぇ、あんなシーンあった?」
「ツバキ様、どうしちゃったの?」
ザワザワと観客席にも動揺が広がる。
俺は急いでツバキ様をお姫様抱っこすると叫んだ。
「ひ……姫は具合が悪いようだ。私たちはこれで失礼するよ!!」
咄嗟に適当なセリフをでっち上げ、俺はツバキ様を抱えて舞台袖へと走った。
ツバキ様……大丈夫か!?
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