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5.お姉さまと魔法学園

128.お姉様と次なる作戦

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「おかしい」

 制服を畳みながらつぶやくと、モアは「ん?」と首をかしげた。

「何がおかしいの? お姉様」

「体育祭であんなに活躍したのに、ツバキ様から妹の誘いが来ない……」

 そう、俺は体育祭で花形競技の短距離走で一位を取り、注目度の高いリレーでも白百合寮のアンカーとして優勝に貢献したのに、ツバキ様からの妹の誘いは未だ無い。

「どうしてだ?」

 ちなみにだが、モアには内緒だけど「姉になってください」という下級生からの誘いは結構来る。全部断わってはいるけど。

「やっぱりあれじゃ、お尻丸出しで走ったのが良くなかったのではないかの」

 影から鏡の悪魔が出てきて笑う。

「それか~~! やっぱりそれか~!」

 俺はあの時のことを思い出し、枕に顔を埋めてバタバタする。

「何言ってるの鏡ちゃん!」

 モアが憤慨する。

「お姉様の美尻は天女の美尻! 見るものを魅了する神々しい美尻なんだよ! お姉様の黄金の桃尻がプラスに働いてもマイナスに働くなんてありえない!」

「いや、いいよ、モア、もういいよ……」

 ため息をつく。

「となると、残りはテストでロッカより好成績をたたき出すかもしくは別の手を考えないと」

 でも今から勉強しても常に成績トップのロッカに勝つのは難しそうだ。他に何か良い手はないだろうか。

「そもそも、何でツバキ様は妹を作らないのかな?」

「姉妹関係とか人付き合いが面倒臭いみたいなことは言ってたけど」

 ケイトの情報によると、ツバキ様は去年、先代の姉4が寮の代表だった時も、必要な用事がある時以外は姿を見せず、お茶会やお姉様たちの集いは断ってたって話だ。

「何かツバキ様に取り入るいい方法はないだろうか」

 俺は頭を抱えた。

「大丈夫、その内ツバサ様もお姉様の良さを分かってくれるよ」

「そうかなー」

「そうだよ。あれ? これは何?」

 モアが手にしていたのは、ピンク色の手紙。ヤバっ、俺が下級生からもらったやつだ! うっかり鞄から落ちたのかもしれない。

「モ、モア、それは!」

「なになに? 『剣術の試合で戦うミアお姉様の姿を見て、ビビッときました。貴女は私の運命のお姉様に違いありません』お姉様、何これ!?」

「いや、放課後一年生の子に呼び出されて渡されちゃってさ。でもちゃんと断るから大丈夫!」

「全く、油断も隙もあったもんじゃない」

 ブツブツとつぶやくモア。

「これからは、もっとお姉様の監視を強化しないと」

 ひえ~!!





「おーっす、ご機嫌よう、桃尻ちゃん!」

 翌日、声をかけてきたのはケイトだ。

「桃尻ちゃんはやめてくれ」

 ゲンナリして言うと、ケイトはニシシと笑った。

「ごめんごめん! でも凄かったなぁリレーでサツキ様に勝つし!」

「ケイトこそ、ロッカに勝ってたじゃん」

 俺が言うと、ケイトはニヤリと笑った。

「それなんやけどな……」

 ロッカが見せてきたのは一枚の絵。

「これは私が念写したもんなんやけどな」

 ドキリと心臓が鳴る。

「これって」

 そこには俺の運動靴に向かって一心不乱に山芋をすり下ろすロッカの姿が写っていた。

「言っておくけど、私の念写は真実しか写さんよ?」

「分かってる」

 まさかとは思っていたが、ロッカが。それほどまでに姉4になりたいのだろうか。

「なるほど、リレーの時ロッカの様子がおかしかったのは、この写真を使って脅したからだったんだな」

「その通りや。ま、結局は負けてしまったけどな。恐らく、アンタのお尻丸出し事件も、ホウキに空気に触れると溶ける薬品とか、あるいはなんかの魔法をかけとったんだろうな」

「なるほど」

 なんて卑怯なやつだ!

「でもどうして俺にそんなことを?」

「決まってるやろ、姉4になるためや。ロッカは一年の時から姉4の座を狙っとった」

「そうなのか」

 考え込む俺の肩を、ケイトはポンポンと叩いた。

「そんだけ今のアンタが姉4の座に近い位置に居るってことやな。姉4のメンバーとも仲良くお茶もしてるみたいだし? 転校してきたばかりなのに凄いやないの」

「でも、ツバキ様からの妹の誘いは無いんだよな。前よりちょっとは仲良くなったと思うんだけど、ツバキ様って意外と人付き合い苦手な所があるみたいで」

「別に意外やあらへん」

 ケイトが昔の新聞記者を引っ張り出してくる。

「ツバキ様は元々姉妹関係が苦手でずっとお姉様を作らへんかったお人や。それが百合の乙女コンテストで先代に目をつけられて、それで断りきれなくて仕方なく姉妹になったみたいやし」

「百合の乙女コンテスト?」

 ケイトの話によると、来月の文化祭で行われるミスコンのことを「百合の乙女コンテスト」と呼んでおり、そこで優勝した人は姉4になるという伝説があるのだという。

「なるほど、いい話を聞いた」

 つまりロッカに勝つには、そのコンテストで優勝すればいいんだな?

「ふふっ、やる気になったみたいやね、ま、頑張りや」

 ケイトは笑う。

「でもケイト、なんで俺にそんなことを教えてくれるんだ?」

「いや、私はロッカはどうも虫が好かん。それに、アンタが姉4になったほうが新聞部に姉4の情報も沢山流して貰えそうやし」

「そんな理由かよ」

 でも味方がいるのはありがたい。ロッカのやつ、他の生徒からの信頼は厚いみたいだし。

「よし、やってやる。俺は百合の乙女コンテストで優勝する!!」

 でも一体、どうやったらコンテストで優勝できるんだろう?
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