お姉様(♂)最強の姫になる~最高のスペックでの転生を望んだら美少女になりました~

深水えいな

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4.お姉様と水の都セシル

118.お姉様と海の支配者

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「ふはははは! 非力な人間どもめ。この私を封印してくれた礼を、今こそしてやろうぞ!!」

 巨大なヒトデ型の触手生物と化した海の悪魔が叫ぶ。

 やばいぞ。非常にやばい。

「みんな、下がってろ!」

 叫んだ瞬間、触手がしなり紫色の光を放った。

「きゃあああっ!」
「わっ!」
「何だ!?」

 大きな音とともに、辺りに砂ぼこりが立ち込める。

「ふふふ、この城もろとも海の藻屑となるがいい!!」

 おぞましい声が響き渡り、城の壁がガラガラと崩れ出す。

「まずいよ、どうしよう!」

 ベルくんが今にも泣き出しそうな声で叫ぶ。目をやると、壁に穴が空いている。

「穴が!?」

 初めは小さかった穴。だけどそこからどんどんと海水が溢れだしてきて――ついにはボコンと大きな穴が開き、海水がこちらへ押し寄せてきた。

 ――まずい、息が!?

 思わずギュッと目をつぶり、死を覚悟する。が――

「お姉様!!」

 モアの声。

 あれ? 息ができる。体も濡れてない。モアの魔法か?

 いや――モアも驚きの表情を浮かべている。

 辺りを見回す。

「ギョギョギョ!!」

 ローブをまとい、杖を掲げる人物が一人。緑がかった皮膚に魚の顔。半魚人のうちの一人だ。豪華な服装からして、ここの長《おさ》だろうか?

「ギョギョギョギョギョ!!」

 半魚人が何かを叫ぶ。

「あいつを倒してくれと言ってるようじゃな」

 鏡の悪魔がひょっこりと顔を出す。

「そうなのか?」

「いや、適当じゃが」

 ペロリと舌を出す鏡の悪魔。おいおい。

 でも確かにそんな風に見えるな。

 ってことは、半魚人たちは敵じゃない? ただ住処に侵入されて怒ってただけ? ここに入る時、普通にぶっ飛ばしちゃったけど。

「お姉様!」

 そんな事を考えていると、不意に海の悪魔の触手が飛んでくる。

「ぐわっ!」

 触手攻撃を真正面から食らってしまい、背後の壁に叩きつけられる。

「大丈夫!?」

「ああ、心配ない」

 背中に鋭い痛みが走るが、すぐさま立ち上がる。

「でも、俺は大丈夫だけど、このままだとこの建物がヤバいことになりそうだな」

 俺は背後の崩れかけた壁や穴の開いた天井を見た。

 今のところ、半魚人が水中呼吸魔法をかけていてくれているが、その魔力もいつまで持つか。

 続けざまに飛んでくる巨大な触手。

「でやっ!」

 思い切り振る斧。ゴトリと脚が落ちる。だが、やはりすぐに再生してしまう。

「ぼ……僕も……冒険者になるんだ!」

 震える手で勇敢に剣を抜いたベルくん。が――

「馬鹿、下がってろ!」

 その瞬間、触手にはね飛ばされ、ベルくんが地面に転がる。

「大丈夫か?」

 俺はベルくんに駆け寄った。

「こ、腰が」

 可哀想に、腰が抜けたみたいだ。

 モアが首を傾げる。

「あの悪魔、目がどこにもないのに、どうやって見てるのかな」

「え?」

 そう言われて海の悪魔をチラリと見る。亡霊のように真っ白な皮膚。目らしき穴は辛うじてあるが、退化しておりとても見えているとは思えない。聴覚か嗅覚に頼っているのだろう。

「確かに。……まてよ?」

 その時、俺の頭の中に一つの考えが浮かんだ。

「ナイスだ、モア。もしかして、あいつを倒せるかもしれない」

 やっぱり、モアは天才だ!

「えっ?」

 モアの瞳が困惑の色を帯びる。
 と同時に、轟音と共に、再び水魔法による攻撃が襲う。波が押し寄せ、体が岩壁に叩きつけられる。

「ぐはっ!」

「お姉様!!」

 俺は駆け寄ってきたモアに目配せした。

「大丈夫だ。それより、頼みがあるんだけど」

 俺の作戦を聞くと、モアは力強く頷いた。

「分かった。任せて!」

 これで――海の悪魔を倒せるかもしれない!!
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