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4.お姉様と水の都セシル
108.お姉様とベルくんの行方
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翌朝、俺たちはベルくんを尋ねてロレンツ海賊団へと向かった。
「ベルくん? ベルくんならいないぞ。昨日のうちに海賊団を辞めたって話だが」
若い下っ端の海賊に尋ねてみると、そんな返事が帰ってくる。
「そっか。もう目的の品を手に入れたわけだから、海賊団にいる理由もないか」
モアがガックリと肩を落とす。
すぐに見つかると思っていたのになぁ。
すると若い海賊が、俺の顔をマジマジと見た。
「あっ、君、もしかしてベルくんのお姉さん? よく見ると少し似てるし! こっちの子も」
「あ? うん、まあ」
俺が苦笑いを浮かべると、若い海賊は親しげに背中に手を回してきた。
「だよなー、やっぱり、そうじゃないかと思ったんだ! どうだい? そこの酒場でゆっくりオイラとベルくんの行方について話を……痛っ!」
俺はそんな男の手の甲を思いっきりつねってやる。
「話は分かった。ありがとな!」
俺はそそくさとその場を後にする。やっぱり、女の姿だとナンパとかされるから面倒くせーな。
「お」
すると、見慣れたハゲ頭が目に入る。俺と一緒に、おっパラに行ったアイツだ。
「おーい! 久しぶりだな!」
手を振ると、ハゲ男がキョトンとした顔をする。
「ん? どこかで会ったか?」
「ほら、一緒におっパラで……」
そこまで言って、気づく。そうだ。おっパブに行ったのはオディルの姿でだった!
「あっ、もしかして、おっパラで働いてるお姉ちゃんか!? ガハハ、悪い悪い、どうも俺は女の子の顔を覚えられなくて。そうだ、おっぱい見せてくれたら思い出すかも! ゲヘヘ」
俺は思わず右ストレートをハゲ男の顔面に叩き込む。一瞬でもこんな男を懐かしいと思った俺が馬鹿だった!
「行こう、モア」
モアの手を引く。
「……お姉様」
だが、モアの様子がおかしい。
「おっパラで働いてたって……どういうこと!?」
ち、違う!!
「モア、誤解だ」
だが、モアの妄想は止まらない。
「まさか、お姉様があられのないセクシーな格好でポールダンスやストリップを!? そそそんな駄目っ!!」
「モア、鼻血が」
何故か興奮しだすモア。
もー、訳が分からん。
「お前ー、何女の子と話してるんだよ!」
「こんな可愛い子たちと知り合いなのか?」
しかも周りに次々と男海賊たちが集まってくる。
「いや、俺も覚えが」
しどろもどろになるハゲ頭。
俺はふざけてウインクをするとその場を離れた。
「じゃあね、お兄さん♡ また会いましょっ! チュ♡」
俺が投げキッスをすると、ハゲ男が顰蹙《ひんしゅく》を買う声が聞こえる。
「い、いや、俺もあんな娘覚えは」
男海賊たちにもみくちゃにされるハゲ。
「何だか、凄いことになってるね」
「ははは」
ハゲには申し訳ないが、ちょっと楽しい。
でも……
「さーて、この後、どうすっかなぁ」
ベルくんの手がかりが、まるっきり無くなってしまったぞ。
「ベルくん? ベルくんならいないぞ。昨日のうちに海賊団を辞めたって話だが」
若い下っ端の海賊に尋ねてみると、そんな返事が帰ってくる。
「そっか。もう目的の品を手に入れたわけだから、海賊団にいる理由もないか」
モアがガックリと肩を落とす。
すぐに見つかると思っていたのになぁ。
すると若い海賊が、俺の顔をマジマジと見た。
「あっ、君、もしかしてベルくんのお姉さん? よく見ると少し似てるし! こっちの子も」
「あ? うん、まあ」
俺が苦笑いを浮かべると、若い海賊は親しげに背中に手を回してきた。
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俺はそそくさとその場を後にする。やっぱり、女の姿だとナンパとかされるから面倒くせーな。
「お」
すると、見慣れたハゲ頭が目に入る。俺と一緒に、おっパラに行ったアイツだ。
「おーい! 久しぶりだな!」
手を振ると、ハゲ男がキョトンとした顔をする。
「ん? どこかで会ったか?」
「ほら、一緒におっパラで……」
そこまで言って、気づく。そうだ。おっパブに行ったのはオディルの姿でだった!
「あっ、もしかして、おっパラで働いてるお姉ちゃんか!? ガハハ、悪い悪い、どうも俺は女の子の顔を覚えられなくて。そうだ、おっぱい見せてくれたら思い出すかも! ゲヘヘ」
俺は思わず右ストレートをハゲ男の顔面に叩き込む。一瞬でもこんな男を懐かしいと思った俺が馬鹿だった!
「行こう、モア」
モアの手を引く。
「……お姉様」
だが、モアの様子がおかしい。
「おっパラで働いてたって……どういうこと!?」
ち、違う!!
「モア、誤解だ」
だが、モアの妄想は止まらない。
「まさか、お姉様があられのないセクシーな格好でポールダンスやストリップを!? そそそんな駄目っ!!」
「モア、鼻血が」
何故か興奮しだすモア。
もー、訳が分からん。
「お前ー、何女の子と話してるんだよ!」
「こんな可愛い子たちと知り合いなのか?」
しかも周りに次々と男海賊たちが集まってくる。
「いや、俺も覚えが」
しどろもどろになるハゲ頭。
俺はふざけてウインクをするとその場を離れた。
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俺が投げキッスをすると、ハゲ男が顰蹙《ひんしゅく》を買う声が聞こえる。
「い、いや、俺もあんな娘覚えは」
男海賊たちにもみくちゃにされるハゲ。
「何だか、凄いことになってるね」
「ははは」
ハゲには申し訳ないが、ちょっと楽しい。
でも……
「さーて、この後、どうすっかなぁ」
ベルくんの手がかりが、まるっきり無くなってしまったぞ。
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