お姉様(♂)最強の姫になる~最高のスペックでの転生を望んだら美少女になりました~

深水えいな

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4.お姉様と水の都セシル

102.お姉様と幽霊船

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「あ、あれは、幽霊船!?」

 俺が腰を抜かしていると、幽霊船がどんどんこちらに近づいてくる。

「こっちに来る!」

 グレイスが慌てて操舵室にいる船員に目配せをする。急旋回する船。

 だが遅かった。幽霊船は俺たちの乗った船に横付けすると、海賊の服を着た骸骨たちがワラワラと降りてきた。

「ひえええええええ!!」

 全身に寒気が襲いその場にしゃがみ込む。心臓がバクバクする。思わず横にいたグレイスに抱きつく。

「がっ、骸骨ぅぅう!!」

 グレイスが大声を上げる。
 あれ、もしかして、グレイスも幽霊が怖い? 意外だ。

 グレイスが怖がっているのを見て、俺は少し冷静になる。

「お姉様!?」

 声を聞きつけたモアが走ってきた。

「お姉様、今の声は……大丈夫!?」

「あ、ああ」

 駆け寄るモア。俺はグレイスから離れた。モアの影から馬鹿にしたような声が聞こえる。

「唇が真っ青じゃぞ」

「うるさいなー」

 俺が少しムッとしていると、鏡の悪魔は低く笑った。

「安心せい。あれはただ単に悪魔に操られているだけの沈没船じゃ」

「悪魔に?」

 モアもびっくりした声を出す。

「じゃ、じゃあ、あれは悪魔の手下というか、ただのモンスターみたいなもんなんだな?」

「ああ、そうじゃ」

 それを聞き、俺は俄然やる気が出てきた。だってそうだろ? 幽霊は怖いけど、モンスターならそんなに怖くない。

「それなら!」

 俺は斧を取り出す。

 ナイフで遅いかかってくる骨の海賊。俺はそれを避けると、思い切り斧を振った。

「でりゃあ!」

 がしゃん、と骨の崩れる音。崩れ去った骸骨たちは、キラキラとした塵になって消える。

「ウインド!」

 モアが杖を振る。嵐の中巻き起こる風。
 同時に五体の骸骨がバラバラになる。

「凄いぞモア!」

 俺はモアの頭を撫でた。

 と、そこへ後から骸骨が斧を振り下ろしてくる。

「ちいっ!」

 振り返り応戦しようとした瞬間、骸骨の頭が撃ち抜かれる。

 振り向くとグレイスが銃を構えている。

「全く、よそ見してるんじゃないよ!」

「あ、ありがとう」

 なんだよグレイスのやつ、さっきまで震えていたのに、えらい違いだな。

「でやあっ!」
「たあっ!」

 嵐の中、骸骨たちを一体一体倒していく。

「くっ、何体倒せば良いんだ!」

 すると、骸骨たちが、急にキラキラ光る塵になって消えていく。

「何だ?」

 よく見ると、辺りが明るい。
 いつの間にか嵐が止み、太陽が出てきたのだ。

 もしかしてあいつら、太陽の光に弱いんだろうか?

 そんなことを考えていると、一人の船員が叫んだ。

「島に着いたぞー!!」

 見ると、いつの間にか陸地が間近に迫っていた。

「よし、上陸する!」

 グレイスの逞しい声に、わあっ、と歓声が上がった。





「大分雨も小降りになってきたな」

 錨を下ろし、砂浜に船をつける。

 確かに、雨はだんだんと落ち着き、空は微かに明るさを取り戻しつつある。良かった良かった。

「よし、作戦を立てよう」

 グレイスが地図を広げた。

「ここがカラスの巣のある山だ」

 地図によると、丸い島のほぼ中央に山があるらしい。山と言ってもそんなに高く無くてほぼ丘みたいなものらしいが。

「ここへ私とメリッサ、マリンちゃんの三人で向かおうと思う」

「たった三人で?」
「危なくない?」

「目立たないようにできるだけ少人数で行きたいんだ。それと、もし良ければ誰か囮になってカラスを引き付けておいてほしい」

 俺は反射的に手を挙げた。

「じゃ、じゃあ俺が!」

 その様子を見ていたモアも手を上げる。

「じゃあ、モアも!」

「じゃあ、私も」

 アンも手を上げる。

「じゃあ、三人には囮を頼む。危険だが、あんた達の腕は信じてる」

「ああ、分かった」
 
 こうして、巨大カラスの巣への襲撃作戦は始まった。

「何とかして、船長たちを出し抜いて先にセラスのブローチを手に入れよう」

「うん」

 俺とモアは目配せをし、頷き合った。
 肝心の船長たちを出し抜く作戦は、思いつかないのだけど。

「いざとなったら、気合いで何とかするしかない」

 まあ、なんとかなるだろ。
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