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4.お姉様と水の都セシル
82.お姉様と女だらけの海賊団
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グレイス海賊団?
まさかこんなに簡単に見つかるとは。
展開が早すぎてついていけねーぜ!
「ちょっとお姉様、こんな簡単にお目当ての海賊船に乗り込めて大丈夫なの?」
「ああ、いくらなんでもタイミングが良すぎるぜ。何かの罠か?」
ヒソヒソと話す俺たちに、メリッサが片眉を上げる。
「何をヒソヒソと話しているの。我らが海賊団の招待を受けるの? 受けないの?」
「い、いや、もちろん行くぜ!」
俺は脂汗を流しながら笑みを作ってみせる。
「それなら良かったわ。海賊団と言うだけで一般人にはやたら警戒されるからね。我々は意味もなく人を襲ったりする訳では無いのに」
海岸を歩きながら、メリッサはやれやれと首を振る。
「仕方ないんじゃないですか? 海賊なことには代わりないですし」
苦笑いするアン。
「でも、我々が襲うのは私利私欲を貪る貴族どもだけだし、地元の港にもお金をたんと落としてるわ」
ギリリと爪を噛むメリッサ。
あのー、いくら襲うのは貴族だけとはいえ、海賊なことには変わりないのでは?
「ねぇ、あなたはどう思う!?」
メリッサは急に俺の方を向いて話を振ってくる。
「あ......ああ。貴族なんて最低さ。懲らしめてやればいいんだ」
棒読みで返す俺。貴族どころか俺たちは王族なんだがな。
「そうよね。良かった。あなたは話の通じる人だと思っていたの。可愛いし、スタイルもいいし、どう? 今夜――」
恍惚とした顔で俺の頬を撫でるメリッサ。
「メリッサさん、初対面の相手ですよ!」
アンがメリッサの腕を慌てて引っ張る。
その隙にモアもぐいと俺の腕を引き、メリッサから引き剥がした。
「お姉様に触らないでっ!」
「やぁだ。そんな怖い顔しないで。冗談よ」
メリッサは子犬が牙を剥き出しにするみたいに怒ったモアを余裕の表情で受け流す。
「お姉様、お気になさらないで下さい。メリッサ様は目をつけた女の子にはいつもこうなのです」
「そうそう、女の子同士こんな風にスキンシップするのが好きなの」
言いながらアンの控えめな胸を後ろから揉みしだくメリッサ。
アンは顔を真っ赤にする。
「や、やめてください!」
「いいじゃないの。揉まないと大きくならないわよ?」
「だからってこんな公衆の面前で! せめて外じゃなく船内でして下さい!」
「あら、外じゃなく中ならいいの~?」
な、なんだか妙に色っぽいお姉さんだなー。
「さあ、着いたわ。あそこよ」
そんなこんなで砂浜を歩くこと約10分。ドクロマークを掲げた大きな船が見えてきた。
「おおーっ、あれが海賊船か!」
はためく海賊旗。大きな船体に、ひしめく女海賊たち。胸が高鳴った。
だって海賊だぜ!? 男のロマンだ!
......つて、まあ俺は女なんだけど。
「お頭ーーっ!」
アンが声を張り上げる。
「居ないのでしょうか」
メリッサもキョロキョロと辺りを見回す。
「あっ、マリンに聞いてみましょ。マリンちゃーん!」
メリッサが一人の乗組員を見つけて走っていく。
俺は振り返るその乗組員に思わず唾を飲み込んだ。
お......男!?
そう、遠目に見た彼女はどう見ても男だった。
俺の2倍か3倍ありそうな巨大な体に、筋骨隆々な手脚。凛々しい眉毛に、モアイ像のように彫りの深い顔。並の男より男らしい。
が、近くで見ると、おっぱいがついているのでただの巨大な女だと分かった。
しかも、おかっぱの髪に可愛らしいリボン。首元にはハートのネックレス、水色の水玉模様のビキニにはフリフリの可愛いレースがついているし、香水の甘い匂いまでする。マリンちゃん、意外と乙女だ。
「船長なら中にいるわぁ~」
マリンちゃんがバーのママみたいなかすれた声でメリッサに告げる。そして、ギロリと俺たちの方を見た。
な、なんだよ!
俺が身構えていると、マリンの頬が緩む。
「あら、この子たちお人形さんみたいでかーわいーい! 顔小さっ! お目目大きい! どうしたの? どうしたの?」
マリンちゃんが鼻息を荒くする。こ、怖い。
「アンがタコの野郎に襲われていた所を助けてくれたらしいの。可愛いでしょ? 私が目をつけたんだからマリンちゃんは手を出さないでよね!」
「お姉様は、細っこい癖に、強いんです!」
拳を突き上げるアン。
「あ~ら、そうなの。じゃあ、おもてなししなくちゃね」
俺たちは、とりあえず言われるがままに船内へと脚を踏み入れた。
「お頭~! お頭!」
メリッサが船長の部屋のドアを叩く。
「誰だい」
中から声がする。
「メリッサです。客人をお連れしました」
「入んな」
キイ......
木のドアが軋みながら開く。
窓のない薄闇の部屋。
椅子から立ち上がったのは、小柄で、まだ十代にしか見えない女海賊。
青い髪に、左目には眼帯。
俺たちを睨む彼女は、この船の船長、グレイス・クロスだ。
まさかこんなに簡単に見つかるとは。
展開が早すぎてついていけねーぜ!
「ちょっとお姉様、こんな簡単にお目当ての海賊船に乗り込めて大丈夫なの?」
「ああ、いくらなんでもタイミングが良すぎるぜ。何かの罠か?」
ヒソヒソと話す俺たちに、メリッサが片眉を上げる。
「何をヒソヒソと話しているの。我らが海賊団の招待を受けるの? 受けないの?」
「い、いや、もちろん行くぜ!」
俺は脂汗を流しながら笑みを作ってみせる。
「それなら良かったわ。海賊団と言うだけで一般人にはやたら警戒されるからね。我々は意味もなく人を襲ったりする訳では無いのに」
海岸を歩きながら、メリッサはやれやれと首を振る。
「仕方ないんじゃないですか? 海賊なことには代わりないですし」
苦笑いするアン。
「でも、我々が襲うのは私利私欲を貪る貴族どもだけだし、地元の港にもお金をたんと落としてるわ」
ギリリと爪を噛むメリッサ。
あのー、いくら襲うのは貴族だけとはいえ、海賊なことには変わりないのでは?
「ねぇ、あなたはどう思う!?」
メリッサは急に俺の方を向いて話を振ってくる。
「あ......ああ。貴族なんて最低さ。懲らしめてやればいいんだ」
棒読みで返す俺。貴族どころか俺たちは王族なんだがな。
「そうよね。良かった。あなたは話の通じる人だと思っていたの。可愛いし、スタイルもいいし、どう? 今夜――」
恍惚とした顔で俺の頬を撫でるメリッサ。
「メリッサさん、初対面の相手ですよ!」
アンがメリッサの腕を慌てて引っ張る。
その隙にモアもぐいと俺の腕を引き、メリッサから引き剥がした。
「お姉様に触らないでっ!」
「やぁだ。そんな怖い顔しないで。冗談よ」
メリッサは子犬が牙を剥き出しにするみたいに怒ったモアを余裕の表情で受け流す。
「お姉様、お気になさらないで下さい。メリッサ様は目をつけた女の子にはいつもこうなのです」
「そうそう、女の子同士こんな風にスキンシップするのが好きなの」
言いながらアンの控えめな胸を後ろから揉みしだくメリッサ。
アンは顔を真っ赤にする。
「や、やめてください!」
「いいじゃないの。揉まないと大きくならないわよ?」
「だからってこんな公衆の面前で! せめて外じゃなく船内でして下さい!」
「あら、外じゃなく中ならいいの~?」
な、なんだか妙に色っぽいお姉さんだなー。
「さあ、着いたわ。あそこよ」
そんなこんなで砂浜を歩くこと約10分。ドクロマークを掲げた大きな船が見えてきた。
「おおーっ、あれが海賊船か!」
はためく海賊旗。大きな船体に、ひしめく女海賊たち。胸が高鳴った。
だって海賊だぜ!? 男のロマンだ!
......つて、まあ俺は女なんだけど。
「お頭ーーっ!」
アンが声を張り上げる。
「居ないのでしょうか」
メリッサもキョロキョロと辺りを見回す。
「あっ、マリンに聞いてみましょ。マリンちゃーん!」
メリッサが一人の乗組員を見つけて走っていく。
俺は振り返るその乗組員に思わず唾を飲み込んだ。
お......男!?
そう、遠目に見た彼女はどう見ても男だった。
俺の2倍か3倍ありそうな巨大な体に、筋骨隆々な手脚。凛々しい眉毛に、モアイ像のように彫りの深い顔。並の男より男らしい。
が、近くで見ると、おっぱいがついているのでただの巨大な女だと分かった。
しかも、おかっぱの髪に可愛らしいリボン。首元にはハートのネックレス、水色の水玉模様のビキニにはフリフリの可愛いレースがついているし、香水の甘い匂いまでする。マリンちゃん、意外と乙女だ。
「船長なら中にいるわぁ~」
マリンちゃんがバーのママみたいなかすれた声でメリッサに告げる。そして、ギロリと俺たちの方を見た。
な、なんだよ!
俺が身構えていると、マリンの頬が緩む。
「あら、この子たちお人形さんみたいでかーわいーい! 顔小さっ! お目目大きい! どうしたの? どうしたの?」
マリンちゃんが鼻息を荒くする。こ、怖い。
「アンがタコの野郎に襲われていた所を助けてくれたらしいの。可愛いでしょ? 私が目をつけたんだからマリンちゃんは手を出さないでよね!」
「お姉様は、細っこい癖に、強いんです!」
拳を突き上げるアン。
「あ~ら、そうなの。じゃあ、おもてなししなくちゃね」
俺たちは、とりあえず言われるがままに船内へと脚を踏み入れた。
「お頭~! お頭!」
メリッサが船長の部屋のドアを叩く。
「誰だい」
中から声がする。
「メリッサです。客人をお連れしました」
「入んな」
キイ......
木のドアが軋みながら開く。
窓のない薄闇の部屋。
椅子から立ち上がったのは、小柄で、まだ十代にしか見えない女海賊。
青い髪に、左目には眼帯。
俺たちを睨む彼女は、この船の船長、グレイス・クロスだ。
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