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4.お姉様と水の都セシル
77.お姉様と水の姫様
しおりを挟む「モ......モアです」
モアとセラスが挨拶しあう。
ぶつかり合う青い瞳。
こうして見ると、モアとセラスはまるで姉妹のようにそっくりだ。
フワフワの銀髪に、ブルーの瞳。少しタレ目なところも似ている。
セラスの父親は俺たちの母親の兄に当たる。つまりセラスは俺たちの母方のいとこにあたる。
小さい頃は俺とセラスはよく遊んでいたんだけと、ここ数年は会っていないから、モアが覚えていないのも無理ないか。
「従兄弟のセラス......聞いたことある。レオ兄様の婚約者候補だった人だよね?」
モアがこっそりと耳打ちする。
「ああ。そうだよ」
そう。セラスはレオ兄様の婚約者候補のうちの一人だった。
だが、やはり従兄弟同士で近親なのであまり良くないのではらということでレオ兄様はアビゲイル義姉さんと結婚することになったのだ。表向きは。
「とりあえず、この城から出してくれ。俺たち、冒険者になったんだ。こんな所で油を売ってる暇はない」
俺が言うと、クスリ、とセラスは唇の端を上げて笑った。
「だーめ」
「何でだよ!」
食ってかかろうとする俺に、セラスは一枚の手紙を手渡した。
「とりあえず、これを読んでみて」
真っ白な艶々した封筒。
「ん、何だこれ」
俺は言われた通り封筒を受け取った。中の手紙にはこう書かれている。
『親愛なるセラスへ
うちのミアとモアが脱走した。そちらの領内に入るかもしれないから、見つけたら保護して送り返すように。
P.S. うちの妻に赤ちゃんができたぞ、早く帰ってこいと伝えてくれ。
レオより』
「兄さん!?」
レオ兄さんのやつ、こんな手紙を書いて手を回してたのか......ってか子供ォ!?
「赤ちゃんができたの?」
目を見開くモア。
「クソッ......仲悪いと思ってたけど、やることはヤッてたんだな、あの夫婦......」
「お、お姉様......」
慌てて俺の袖を引っ張るモア。ちょっと言葉が悪かったか。
「どうしよう、帰ったほうがいいのかな?」
心配そうな顔をするモアに、俺は首を横に振った。
「いや、今妊娠何ヶ月だか知らねぇが、子供が生まれんのにはまだ暫くかかると思う。産まれたらちょこっと顔出せばそれでいいだろ」
「そうだね」
モアと二人、頷き合う。
「ってなわけでセラス、俺たちは国には帰らねぇ。今すぐここから出るつもりだ」
「あらあら」
ため息をつくセラス。
「では仕方ないわね......」
ゴクリと唾を飲み込む。強制的に帰らされるのだろうか? 人ん家だから気は進まないが、だったらその前に......
俺は薄そうな白亜の壁をチラリと見た。あれなら素手で壊せるな。
しかし、セラスの口から出たのは思いがけない言葉だった。
「あなた達には、特別なクエストを申し付けます。そのクエストをクリア出来なければ、あなた達は国に強制送還されることになると思いなさい」
特別な......クエスト??
一体、何だってんだ!!
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