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3.お姉様と木都フェリル
41.お姉様と試練の洞窟
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モア!? 一体どうしたんだ!?
思わず椅子から立ち上がると、入口から凄まじい炎が吹き出してきた。真っ赤に染まるダンジョン。
「どわっ!!」
余りの熱気に思わず後ずさる。あの時と同じだ。あの杖はどうしたんだよ!? 魔力を抑えてくれるんじゃなかったのか!?
「ちょ、お前の妹、どんな魔法使ってんだよ!」
詰め寄るゼット。
「え? 確かファイアー、ウォーター、セイントしか覚えてないはずだけど」
「馬鹿言え、そんな初級の魔法でこんな威力が出るわけないだろ!?」
「そ、そうなのか?」
すると、隣に座っていたチョビ髭でタキシードのおじさんが頷く。
「その通り。いいか、ファイアーっていうのはこういうやつだ」
チョビ髭おじさんが呪文を唱えると、小さな火の玉が現れる。小型の虫モンスターくらいなら倒せるかなっていうささやかな炎。
「お分かりかね?」
ウインクするチョビ髭おじさん。
「じゃあ、モアが唱えたのは一体」
「分からん。今のを見た限りだと地獄の業火位の威力はありそうだが」
腕組みをして眉間をトントンと叩くおじさん。ゼットは目を見開く。
「ええっ? そんな魔力の食いそうな呪文ばかり唱えてたら、すぐ魔力切れになるんじゃ」
「まあ敵の数によってはチマチマ倒してるよりも一気に焼き尽くした方が、案外魔力の効率が良いかもしれないし、それはどちらとも言えなんがな」
「そっか」
でも、もしもモアが魔力切れでダンジョンの中で行き倒れてたら……段々不安になってきた俺の肩を、ゼットはポンポンと叩いた。
「大丈夫だよ、試験用のダンジョンなんざ、そんなに難易度高いわけないだろ」
「ありがとう。何だ、お前案外いい奴だな!」
俺が言うと、ゼットは顔を赤くしてプイッと横を向いた。
「ふんっ! そんな事言って懐柔しようったってそうはいかないんだからな!」
全く。残念だなあ。もしマロン絡みのあれこれがなければ、俺たち、いい友達になれたかもしれないのに。
よく考えたら、長いこと王宮で姫生活で送ってきた俺には男友達があまり居ない。
男相手の方がなんとなく話しすいから、もっと男友達がほしいんだけどな。
「次! ゼットさん!」
「は、はい!」
名前を呼ばれたゼットが緊張した面持ちでダンジョンに入っていく。
ゼットの試験中はこれといった物音や悲鳴は聞こえず、ただ静かに時が過ぎていった。
それにしても何かモアの時に比べて長くないか? 何だか俺まで緊張してきたんだけど。
先程までさほど緊張していなかったのだが、モアとゼットの二人がいなくなり、段々胃が痛くなってきた。結局、ゼットの試験中に4回もトイレに立ってしまった。
「次、ミカエラさん」
「は、はい!」
いよいよ俺の実技試験だ!
薄暗いダンジョン内に足を踏み入れる。
唯一渡されたアイテムの松明を手に、二人横に並んで丁度いい幅の狭い一本道を、ゆっくりと歩いていく。
「なんだ、全然モンスター出ないじゃないか」
言いながらも慎重に辺りを見回す。
ゴツゴツした岩壁はモアの炎魔法のせいなのか、丸焦げになり黒いすすで覆われている。
「モア、大丈夫だったかな」
っと、いかんいかん、自分の試験に集中しなくては。
モアなら大丈夫、そう言い聞かせて心を落ち着かせ、次の角を曲がった。
すると俺に向かって何かが飛んできた。
「うわっ!」
なんだ!?
思わず椅子から立ち上がると、入口から凄まじい炎が吹き出してきた。真っ赤に染まるダンジョン。
「どわっ!!」
余りの熱気に思わず後ずさる。あの時と同じだ。あの杖はどうしたんだよ!? 魔力を抑えてくれるんじゃなかったのか!?
「ちょ、お前の妹、どんな魔法使ってんだよ!」
詰め寄るゼット。
「え? 確かファイアー、ウォーター、セイントしか覚えてないはずだけど」
「馬鹿言え、そんな初級の魔法でこんな威力が出るわけないだろ!?」
「そ、そうなのか?」
すると、隣に座っていたチョビ髭でタキシードのおじさんが頷く。
「その通り。いいか、ファイアーっていうのはこういうやつだ」
チョビ髭おじさんが呪文を唱えると、小さな火の玉が現れる。小型の虫モンスターくらいなら倒せるかなっていうささやかな炎。
「お分かりかね?」
ウインクするチョビ髭おじさん。
「じゃあ、モアが唱えたのは一体」
「分からん。今のを見た限りだと地獄の業火位の威力はありそうだが」
腕組みをして眉間をトントンと叩くおじさん。ゼットは目を見開く。
「ええっ? そんな魔力の食いそうな呪文ばかり唱えてたら、すぐ魔力切れになるんじゃ」
「まあ敵の数によってはチマチマ倒してるよりも一気に焼き尽くした方が、案外魔力の効率が良いかもしれないし、それはどちらとも言えなんがな」
「そっか」
でも、もしもモアが魔力切れでダンジョンの中で行き倒れてたら……段々不安になってきた俺の肩を、ゼットはポンポンと叩いた。
「大丈夫だよ、試験用のダンジョンなんざ、そんなに難易度高いわけないだろ」
「ありがとう。何だ、お前案外いい奴だな!」
俺が言うと、ゼットは顔を赤くしてプイッと横を向いた。
「ふんっ! そんな事言って懐柔しようったってそうはいかないんだからな!」
全く。残念だなあ。もしマロン絡みのあれこれがなければ、俺たち、いい友達になれたかもしれないのに。
よく考えたら、長いこと王宮で姫生活で送ってきた俺には男友達があまり居ない。
男相手の方がなんとなく話しすいから、もっと男友達がほしいんだけどな。
「次! ゼットさん!」
「は、はい!」
名前を呼ばれたゼットが緊張した面持ちでダンジョンに入っていく。
ゼットの試験中はこれといった物音や悲鳴は聞こえず、ただ静かに時が過ぎていった。
それにしても何かモアの時に比べて長くないか? 何だか俺まで緊張してきたんだけど。
先程までさほど緊張していなかったのだが、モアとゼットの二人がいなくなり、段々胃が痛くなってきた。結局、ゼットの試験中に4回もトイレに立ってしまった。
「次、ミカエラさん」
「は、はい!」
いよいよ俺の実技試験だ!
薄暗いダンジョン内に足を踏み入れる。
唯一渡されたアイテムの松明を手に、二人横に並んで丁度いい幅の狭い一本道を、ゆっくりと歩いていく。
「なんだ、全然モンスター出ないじゃないか」
言いながらも慎重に辺りを見回す。
ゴツゴツした岩壁はモアの炎魔法のせいなのか、丸焦げになり黒いすすで覆われている。
「モア、大丈夫だったかな」
っと、いかんいかん、自分の試験に集中しなくては。
モアなら大丈夫、そう言い聞かせて心を落ち着かせ、次の角を曲がった。
すると俺に向かって何かが飛んできた。
「うわっ!」
なんだ!?
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