38 / 139
3.お姉様と木都フェリル
37.お姉様と初めてのクエスト
しおりを挟む
「ふっふっふ、一週間の試験日が楽しみだな! その時には俺がお前に、立ち直れないほどの実力差を付けて合格してやるからな。ハーッハッハッハ!」
勝手に俺をライバル扱いしたゼットは、高笑いをして去っていく。
「なんだか愉快な人だね」
「愉快というか何というか」
俺は去っていくゼットの背中を見ながらため息をついた。あんな奴に好かれて、マロンも大変だな。
「まあとにかく、一週間後に試験を受けることになったからそれまでの間は何か適当なクエストをこなして過ごすか」
「さんせーい!」
俺たちはクエスト受注のブースに移動する。
少なくともここに一週間はいなくちゃいけなくなったし、その間にも宿代も食料費もどんどんかさんでいく。宿代も払えなくなって野宿になったら困るからな!。
こうして俺たちは、とあるクエストをこなすことにした。具体的には薬草取りである。
二種免許でできるクエストというと基本的には薬草や食料、装飾品に使える素材のなどの、採取・伐採クエストがほとんどだ。
その中でも薬草取りは最も難易度が低く、それなりの報酬も入るので人気クエストとなっている。
早速クエスト受注の申し込みをすませた俺たちは、あくる日、意気揚々と薬草の群生地である迷いの森の入り口へとやってきた。
『この先 迷いの森 モンスター注意!』
草に覆われた、ペンキの剥げかけたボロい看板が風にゆれている。
うっそうと茂る木々の奥には、けもの道のような細い通路が続く。
――迷いの森。
フェリルの南東に位置するそこは、生い茂る草木と花、ツル、ツタでできた迷路のような森である。森の奥には古代文明の物と思しき遺跡があり、出てくる敵は植物系や虫系が多い。
人間をおびき寄せるように森や遺跡のあちこちに、宝箱が配置されており、冒険者たちはそれを目当てにこぞって森に繰り出すようになった。そのためこの森はいつしか別名「木のダンジョン」とも呼ばれるようになったという。
森の手前は難易度が低く人気探索スポットであるが、奥に行くほど難易度が上がり、今まで最深部までたどり着いたのはオルドローザ以外はいないのだという。
「さ、行きましょお姉様!」
モアが遠足にでも行くかのように元気よく声をかける。
「この森は、昔、草や木の生えていないただの土でできたダンジョンだったそうなんだけど月日が経つうちに、周りの森に浸食されて樹海のような感じになったらしいよ!」
モアが、何かの紙を見ながらそう話す。
「それは何だ?」
「『迷いの森ガイド』だよ。看板の下にあったの」
モアが見せてくれた三つ折りのその紙には、簡単な地図と、迷いの森の成り立ちや歴史が書かれていた。まるで観光地のパンフレットみたいだ。何だか思ってたダンジョンと違う。
そんなことを思っていると目の前に、怪しげな影が立ちはだかった。
モンスターだ!
そこにいたのは、ぷるぷると揺れる、1体の青いスライムだった。
「でやっ!」
俺はこぶしをふるう。だが、スライムはぴょんと跳ね、俺の攻撃をかわした。
「お、お姉さま、モアが魔法を――」
言いながらもモアはポケットから何か紙を取り出した。
「なんだそれ」
「魔法の呪文《スペル》だよ。昨日本屋で立ち読みして書き写してきたんだー」
立ち読みって……そんな事しなくても買えばいいのに。モアはモアなりに財政に気を使ってるのかな。
「ええと、偉大なる炎の神よ……ええと、なんちゃらかんちゃらファイアー!」
紙を読みながら呪文を唱えるモア。
すると、モアの指先から激しい炎が吹き出し……いきなり爆発した。
「ふぎゃっ!」
モアの髪に火がつく。俺は慌ててモアの頭を叩き火を消そうとする。うぎゃー、なんてこった! 可愛いモアがパンチパーマになっちまう!
「火が消えない! そ、そうだモア、何か水魔法を!」
「わわわ分かった! 水魔法は得意だから大丈夫!」
モアは懐からもう一枚メモ用紙を取り出すと、口の中で何か呪文を唱え始める。
「……うんたらかんたら、ウォーター!!」
モアの小さな手から水があふれ出す。成功だ! ......かと思ったが、まるで大海原にでも来たかのような大きな波が森を襲う。
「水、強すぎ――!」
モアは魔法なんか使えないと言っていたが、それは俺に気を使ったからじゃなかった。モアは本当に魔法を使えなかったのだ。
いや正しくは、使えるけれども全く制御出来ない。
そうして俺とモアは木をなぎ倒しながらあらぬ方向へ流された。
しばらく流された後、木のない柔らかい草の生えた一帯に俺たちはたどり着いた。
「いてててて」
立ち上がろうとした俺たちが見たのは、辺り一面に映えるヨモギのような薬草だった。
「おお! モア、これ全部薬草じゃねーか!」
こうして俺たちは、幸運にも大量の薬草を手に入れたのだった。
勝手に俺をライバル扱いしたゼットは、高笑いをして去っていく。
「なんだか愉快な人だね」
「愉快というか何というか」
俺は去っていくゼットの背中を見ながらため息をついた。あんな奴に好かれて、マロンも大変だな。
「まあとにかく、一週間後に試験を受けることになったからそれまでの間は何か適当なクエストをこなして過ごすか」
「さんせーい!」
俺たちはクエスト受注のブースに移動する。
少なくともここに一週間はいなくちゃいけなくなったし、その間にも宿代も食料費もどんどんかさんでいく。宿代も払えなくなって野宿になったら困るからな!。
こうして俺たちは、とあるクエストをこなすことにした。具体的には薬草取りである。
二種免許でできるクエストというと基本的には薬草や食料、装飾品に使える素材のなどの、採取・伐採クエストがほとんどだ。
その中でも薬草取りは最も難易度が低く、それなりの報酬も入るので人気クエストとなっている。
早速クエスト受注の申し込みをすませた俺たちは、あくる日、意気揚々と薬草の群生地である迷いの森の入り口へとやってきた。
『この先 迷いの森 モンスター注意!』
草に覆われた、ペンキの剥げかけたボロい看板が風にゆれている。
うっそうと茂る木々の奥には、けもの道のような細い通路が続く。
――迷いの森。
フェリルの南東に位置するそこは、生い茂る草木と花、ツル、ツタでできた迷路のような森である。森の奥には古代文明の物と思しき遺跡があり、出てくる敵は植物系や虫系が多い。
人間をおびき寄せるように森や遺跡のあちこちに、宝箱が配置されており、冒険者たちはそれを目当てにこぞって森に繰り出すようになった。そのためこの森はいつしか別名「木のダンジョン」とも呼ばれるようになったという。
森の手前は難易度が低く人気探索スポットであるが、奥に行くほど難易度が上がり、今まで最深部までたどり着いたのはオルドローザ以外はいないのだという。
「さ、行きましょお姉様!」
モアが遠足にでも行くかのように元気よく声をかける。
「この森は、昔、草や木の生えていないただの土でできたダンジョンだったそうなんだけど月日が経つうちに、周りの森に浸食されて樹海のような感じになったらしいよ!」
モアが、何かの紙を見ながらそう話す。
「それは何だ?」
「『迷いの森ガイド』だよ。看板の下にあったの」
モアが見せてくれた三つ折りのその紙には、簡単な地図と、迷いの森の成り立ちや歴史が書かれていた。まるで観光地のパンフレットみたいだ。何だか思ってたダンジョンと違う。
そんなことを思っていると目の前に、怪しげな影が立ちはだかった。
モンスターだ!
そこにいたのは、ぷるぷると揺れる、1体の青いスライムだった。
「でやっ!」
俺はこぶしをふるう。だが、スライムはぴょんと跳ね、俺の攻撃をかわした。
「お、お姉さま、モアが魔法を――」
言いながらもモアはポケットから何か紙を取り出した。
「なんだそれ」
「魔法の呪文《スペル》だよ。昨日本屋で立ち読みして書き写してきたんだー」
立ち読みって……そんな事しなくても買えばいいのに。モアはモアなりに財政に気を使ってるのかな。
「ええと、偉大なる炎の神よ……ええと、なんちゃらかんちゃらファイアー!」
紙を読みながら呪文を唱えるモア。
すると、モアの指先から激しい炎が吹き出し……いきなり爆発した。
「ふぎゃっ!」
モアの髪に火がつく。俺は慌ててモアの頭を叩き火を消そうとする。うぎゃー、なんてこった! 可愛いモアがパンチパーマになっちまう!
「火が消えない! そ、そうだモア、何か水魔法を!」
「わわわ分かった! 水魔法は得意だから大丈夫!」
モアは懐からもう一枚メモ用紙を取り出すと、口の中で何か呪文を唱え始める。
「……うんたらかんたら、ウォーター!!」
モアの小さな手から水があふれ出す。成功だ! ......かと思ったが、まるで大海原にでも来たかのような大きな波が森を襲う。
「水、強すぎ――!」
モアは魔法なんか使えないと言っていたが、それは俺に気を使ったからじゃなかった。モアは本当に魔法を使えなかったのだ。
いや正しくは、使えるけれども全く制御出来ない。
そうして俺とモアは木をなぎ倒しながらあらぬ方向へ流された。
しばらく流された後、木のない柔らかい草の生えた一帯に俺たちはたどり着いた。
「いてててて」
立ち上がろうとした俺たちが見たのは、辺り一面に映えるヨモギのような薬草だった。
「おお! モア、これ全部薬草じゃねーか!」
こうして俺たちは、幸運にも大量の薬草を手に入れたのだった。
0
お気に入りに追加
379
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
嫌われ者の悪役令息に転生したのに、なぜか周りが放っておいてくれない
AteRa
ファンタジー
エロゲの太ったかませ役に転生した。
かませ役――クラウスには処刑される未来が待っている。
俺は死にたくないので、痩せて死亡フラグを回避する。
*書籍化に際してタイトルを変更いたしました!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【R18】異世界魔剣士のハーレム冒険譚~病弱青年は転生し、極上の冒険と性活を目指す~
泰雅
ファンタジー
病弱ひ弱な青年「青峰レオ」は、その悲惨な人生を女神に同情され、異世界に転生することに。
女神曰く、異世界で人生をしっかり楽しめということらしいが、何か裏がある予感も。
そんなことはお構いなしに才覚溢れる冒険者となり、女の子とお近づきになりまくる状況に。
冒険もエロも楽しみたい人向け、大人の異世界転生冒険活劇始まります。
・【♡(お相手の名前)】はとりあえずエロイことしています。悪しからず。
・【☆】は挿絵があります。AI生成なので細部などの再現は甘いですが、キャラクターのイメージをお楽しみください。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・思想・名称などとは一切関係ありません。
※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません
※この物語のえちちなシーンがある登場人物は全員18歳以上の設定です。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる