34 / 139
3.お姉様と木都フェリル
33.お姉様と冒険者協会
しおりを挟む
「んー」
ちゅんちゅん、という小鳥のさえずりで俺は目を覚ました。
「お姉さま、おはよう!」
カーテンを開ける音。モアの銀髪が朝日を受けてきらきらと輝いている、
「ん、ここは」
無造作に組んだ板張りの天井の隙間から日の光が差し込む。見慣れない天井だ。ここはどこだ?
木の板でできたベッドと机、椅子の置かれた簡素な部屋。辺りを見て、思い出す。宿屋だ。そうだ、俺は冒険者なるために、そして勇者になるために旅に出たんだった。
「今日は一緒に冒険者協会に行くんだよね!」
モアがベッドの上で飛び跳ねる。よくよく見るとモアはもう着替えを済ませていて髪も綺麗に梳かしてある。
「ん? 今何時だ?」
「九時すぎだよ」
モアがニコニコと答える。俺はガバリと飛び起きた。
「えーっ、何で起こしてくれなかったんだよ!」
「だって、ぐっすり眠ってたから」
実を言うと、俺は早朝、五時過ぎに一度目を覚ましている。
二週間後、ここフェリルでは、薔薇祭りという年に一度の祭りが行われる。
この世界では電話やネットで宿を予約するということができないので、ほとんどの人は何週間も前から直接宿に行き、連泊して宿の確保をする。
そのため、宿屋に空きがほとんどなかった。
やっと空いてる部屋があったと思ったら一人用の部屋で、それでもいいからと泊まり、狭いベッドで俺とモアが二人で寝ることにした。
だが、朝、寒いと思って目を覚ますと、毛布は全部モアにかかっていて、俺は何もかけずに硬い床の上で寝ていたのである。
寝るときは二人寄り添って寝ていたのに、恐らくは寝相の悪いモアが俺のことを蹴飛ばしたのだろう。城でも何度かそういう事があった。
しかし、ここは城と違いベッドも狭いし毛布も小さい。
俺はモアを起こさないようにそっと毛布の端っこをかけると再び眠りについた。で、起きたのが今、という訳だ。
「あーっ! 混雑を避けるために早く宿を出ようと思ってたのにーっ!」
俺は急いで朝ごはんを食べると、モアと共に冒険者協会へと向かった。
冒険者協会の建物はレンガ造りで、どことなく市役所や図書館を思わせる外観をしている。中に入ると、剣や杖、弓などを持った冒険者で溢れかえっていた。
おおー、すげー! ここが冒険者協会か!
そわそわしながら「新規登録」のブースに並ぶ。
ここに来る冒険者のほとんどがクエスト受注が目的なので、案外あっさりとカウンターに通される。
「お待たせいたしました」
にこやかに対応してくれる受付のお姉さんをみて、俺は息をのむ。
白いスーツにスレンダーな体を包んだその美人受付は、昨日町の入口で出会ったあの緑の髪の美女であった。
名札を見ると「エル」と書いてある。エルさん、綺麗な名前だ!
「あら、あなたたちは」
「また会ったな!」
「その節は、ありがとうございました」
嬉しそうにするエルさん。
俺はエルさんの手を煩わせないように、なるべく速やかに、必要書類に必要事項を記入していった。
「そう、てっきり強いから冒険者かと思っていたんだけど、これから登録するのね」
にっこりと笑うエルさん。
「はい」
「あなたたちならきっとすぐ上に上がれるわよ」
「ありがとうございます」
俺がデレデレしていると、モアが不審そうな目で俺を見てくる。慌てて表情を引き締めた。
ちゅんちゅん、という小鳥のさえずりで俺は目を覚ました。
「お姉さま、おはよう!」
カーテンを開ける音。モアの銀髪が朝日を受けてきらきらと輝いている、
「ん、ここは」
無造作に組んだ板張りの天井の隙間から日の光が差し込む。見慣れない天井だ。ここはどこだ?
木の板でできたベッドと机、椅子の置かれた簡素な部屋。辺りを見て、思い出す。宿屋だ。そうだ、俺は冒険者なるために、そして勇者になるために旅に出たんだった。
「今日は一緒に冒険者協会に行くんだよね!」
モアがベッドの上で飛び跳ねる。よくよく見るとモアはもう着替えを済ませていて髪も綺麗に梳かしてある。
「ん? 今何時だ?」
「九時すぎだよ」
モアがニコニコと答える。俺はガバリと飛び起きた。
「えーっ、何で起こしてくれなかったんだよ!」
「だって、ぐっすり眠ってたから」
実を言うと、俺は早朝、五時過ぎに一度目を覚ましている。
二週間後、ここフェリルでは、薔薇祭りという年に一度の祭りが行われる。
この世界では電話やネットで宿を予約するということができないので、ほとんどの人は何週間も前から直接宿に行き、連泊して宿の確保をする。
そのため、宿屋に空きがほとんどなかった。
やっと空いてる部屋があったと思ったら一人用の部屋で、それでもいいからと泊まり、狭いベッドで俺とモアが二人で寝ることにした。
だが、朝、寒いと思って目を覚ますと、毛布は全部モアにかかっていて、俺は何もかけずに硬い床の上で寝ていたのである。
寝るときは二人寄り添って寝ていたのに、恐らくは寝相の悪いモアが俺のことを蹴飛ばしたのだろう。城でも何度かそういう事があった。
しかし、ここは城と違いベッドも狭いし毛布も小さい。
俺はモアを起こさないようにそっと毛布の端っこをかけると再び眠りについた。で、起きたのが今、という訳だ。
「あーっ! 混雑を避けるために早く宿を出ようと思ってたのにーっ!」
俺は急いで朝ごはんを食べると、モアと共に冒険者協会へと向かった。
冒険者協会の建物はレンガ造りで、どことなく市役所や図書館を思わせる外観をしている。中に入ると、剣や杖、弓などを持った冒険者で溢れかえっていた。
おおー、すげー! ここが冒険者協会か!
そわそわしながら「新規登録」のブースに並ぶ。
ここに来る冒険者のほとんどがクエスト受注が目的なので、案外あっさりとカウンターに通される。
「お待たせいたしました」
にこやかに対応してくれる受付のお姉さんをみて、俺は息をのむ。
白いスーツにスレンダーな体を包んだその美人受付は、昨日町の入口で出会ったあの緑の髪の美女であった。
名札を見ると「エル」と書いてある。エルさん、綺麗な名前だ!
「あら、あなたたちは」
「また会ったな!」
「その節は、ありがとうございました」
嬉しそうにするエルさん。
俺はエルさんの手を煩わせないように、なるべく速やかに、必要書類に必要事項を記入していった。
「そう、てっきり強いから冒険者かと思っていたんだけど、これから登録するのね」
にっこりと笑うエルさん。
「はい」
「あなたたちならきっとすぐ上に上がれるわよ」
「ありがとうございます」
俺がデレデレしていると、モアが不審そうな目で俺を見てくる。慌てて表情を引き締めた。
0
お気に入りに追加
379
あなたにおすすめの小説
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし〜
水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑
★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位!
★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント)
「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」
『醜い豚』
『最低のゴミクズ』
『無能の恥晒し』
18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。
優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。
魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。
ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。
プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。
そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。
ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。
「主人公は俺なのに……」
「うん。キミが主人公だ」
「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」
「理不尽すぎません?」
原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。
※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第二章シャーカ王国編
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる